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■尾崎一雄 1970
(偕成社) 初版:1961
尾崎一雄氏は、早稲田高等学院の第一期生で、昭和初期の早稲田大学文学部国文科出身の作家です。この『末っ子物語』は幼少の頃、読んで印象に残っていた作
品で、最近、入手しようと探したところ絶版だと知り、古書を探すサイト(http://sgenji.jp/)で何とか見つけました。
『末っ子物語』は、みそっかすの末っ子の圭子とその家族の物語です。尾崎一雄氏が61歳のときの作品で、育った神奈川県の下曽我村を舞台としたのどかな物
語。圭子の成長を平和の家庭生活の中で書いています。大きな病気を患って以来、末っ子にはとても甘い主人公の父親、絶妙に家族の柱である母親、しっかり者
の長女とちゃっかり者の長男、その家族の中でのんびりとぼんやりと育っていく圭子を家族がハラハラと見守っていきます。圭子の成長を考える夫婦の会話、
末っ子をかわいがる兄と姉。この物語は圭子が画期的に成長していく訳でもなく、日常的に家族の団欒の中でゆっくりと圭子が育っていく物語です。愛されて育
つことの幸福を素直に描きながら、それでいて登場人物の会話の中に人生の幸福の哲学を節々にはさみこんでいるという点で、やはり優れた文藝作品だと思いま
す。
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