古都

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■川端康成    新潮文庫  1968(初版:1962)   
      

ノー ベル文学賞作家・川端康成は、jun-cooの生まれ故郷・高槻市の隣の茨木市にある大阪府立茨木高校の出身です。伊豆や雪国のイメージが強くあります が、川端作品には京都がよく舞台となっています。その一つである、この『古都』は、その章立てが「春の花」に始まり、「冬の花」で終わり、京都の年中行事 と植物たちがあますことなく盛り込まれて、古都の風物を豊かに感じることのできる作品です。
京の問屋の一人娘として愛され育った千重子は、実は捨て子。千重子は祇園祭の夜に自分と瓜二つの娘・苗子と出会います。神護寺のさらに奥深くにある北山杉 の村で貧しく暮らす苗子と千重子は生き別れた双子の姉妹。二人の運命は、冒頭に出てくる千重子の家の庭のもみじの古木の幹の二つの窪みにそれぞれ咲く二株 のすみれの花に似ています。
互いを知らず、孤独に咲く二株のすみれ。千重子と苗子はお互いに惹かれあいますが、長い年月を離れた環境で生きてきたため、苗子は千重子の幸せに妨げとな ることを怖れます。お互いの存在を感じ、お互いに心を温め合いながら、それぞれに生きていく二人の可憐な娘の物語を、変わることのない伝統ある京の風物詩 が見守ります。



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