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■ジョン・スタインベック 新潮文庫 1955(原作:1945)
学生
時代に初めて読んだ作品。ノーベル文学賞を受賞した『二十日鼠と人間』もとても大好きです。その『二十日鼠と人間』と同じ年に書かれたのがこの『赤い小
馬』で、『贈り物』『大連峰』『約束』『開拓者』の4つのつらなる短編から構成され、表題の赤い小馬は、1つ目の『贈り物』で少年ジョーディに父から贈ら
れた馬であり、物語の重要な鍵となっています。
物語は、カリフォルニアのサリーナスの谷の牧場が舞台です。ある日、少年ジョーディは父が買って来た赤い小馬を「こいつをよく手入れしてやるんだ」ともら
います。「これ、ぼくの?」と、初めて任せられた小馬ギャビランを心をこめて世話していきます。スタインベック自身は、この作品を子どもが成長していく過
程で何
かを失い、そしてそれを受け止めていく過程を描こうとしたと語っています。節々に描かれる「生」へのジョーディの関心は、彼の成長を表しています。
同時に、この作品の連作では、もう一つのテーマとして、父と子との関係が丁寧に著されています。絶対的な存在として威厳のある牧場主の父の姿がまずはじめ
にあ
りそして、徐々に、人としての弱さを含めた人間らしさが表現されていきます。父という存在を子どもがどのように見つめて理解していくか、弱い強いという尺
度では
なく深みのある理解をしていく子どもの成長過程を
描いている作品なのかもしれないと思います。
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