有頂天家族

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■森見 登美彦    幻冬舎  2007    
      

京都を舞台にした狸と天狗と人間の物語です。狸の一家、下鴨ファミリーの深く結ばれた絆。尊敬すべき父、家族を愛 する母、詰めの甘い長兄、繊細な次兄、破天荒な三男、小心者の末っ子。父が息子に与えた言葉は「面白きことは良きことなり!」。4人の兄弟は、一人ひとり は足りないところがあります。でも、そのまとまりは天下一品。繰り広げられる難題を楽しくおかしく乗り越えていきます。そして、その難題に絡む狸のライバ ルファミリーの夷川ファミリーに天狗の赤玉先生、人間から天狗になった弁天、かなり濃いキャラクターが物語を盛り上げてくれます。
読み始めて、物語に入り込むまでは「なんだ!この話は?」と思ってしまいますが、奇想天外な物語に慣れてしまうと、一気に読めてしまいます。主人公の三 男・矢三郎の言葉、「とりあえずみんなが生きており、とりあえず楽しければよいだろう。我々は狸である。狸は如何に生くべきか、と問われれば、つねに私は 答える−面白く生きるほかに、何もすべきことはない」。「そうだね」と思わせてくれる展開がこの物語にはあります。でも、面白く生きる彼らに苦難がない訳 ではありません。「世に蔓延する『悩みごと』は、大きく二つに分けることができる。一つはどうでもよいこと、もう一つはどうにもならぬことである。そし て、両者は苦しむだけ損であるという点で変わりはない。努力すれば解決することであれば悩むより努力する方が得策であり、努力しても解決しないことであれ ば努力するだけ無駄なのだ」というのが出てきます。「どうにもならぬこと」を分かち合える究極的な絆が家族であることを謳いあげている一冊です。


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