阪急電車

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■有川 浩    幻冬舎  2008      

阪急電車といえば、jun-cooが生まれ育った高槻を京都と梅田に結んでいる路線です。あの濃いあずき色の車 体、その車体とコントラストを成す車内の明るい木目調の壁に緑の座席・・・。記憶ではそんな色調の電車です。そして、阪急電車特有の匂いが記憶に残ってい ます。そんな こんなで、「おっ!」と、タイトルに惹かれて買った本ですが、もちろん作者の有川浩もとても好きな作家の一人です。ちなみに、名前の文字からは男性作家と 誤認してしまいますが、女性 作家です。「ありかわひろ」と読みます。
有川浩は、『図書館戦争』シリーズ(全4巻)は割りと好きな作品です。そもそも、この人の作品に出てくる登場人物たちには、「若さ」を感じます。ここ でいう「若さ」とは、年齢的な意味ではなく、また、未熟さという意味でもなく、なんというか、「こだわりをもつ」「正しさや誠実さを貫こうとする」という ものです。もろ さを自覚した強さ、そして、どこか優しさを兼ね備えている、そんな人物を描くのがとても巧い作家です。
さて、『阪急電車』は、阪急電鉄今津線の宝塚駅から西宮北口駅の往復を舞台にしています。そこで、一駅の間に起こる乗り合わせた人たちの物語が章ごとに主 人公を変えながら展開していく連作です。各章の始まりは、前の章での出来事を違う乗客の視点で書かれており、一つひとつの物語の広がりとその後を楽しむこ とができます。もちろん、登場する人物たちはなかなかに素敵です。


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