桜さがし

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■柴田よしき    集英社文庫  2003    (初版:2000 集英社)     

横溝正史賞を受賞した『RIKO-女神の永遠』にはじまる『聖母の深き淵』『月神の浅き夢』『聖なる黒夜』と続 く、新宿署捜査一課の村上緑子(りこ)刑事のRIKOシリーズも、ハードボイルドなタッチのミステリーでとても大好きですが、この『桜さがし』はまた少し 違った趣きのある作品。京都を舞台とした連作短編ミステリーで、かつ切ない青春小説です。
物語は、中学時代からの同級生、歌義、陽介、綾、まり恵の4人が、恩師で推理作家の浅間寺竜之介のもとをともに訪ねるところから始まります。8つのミステ リーから構成され、京都の風物詩がとても丁寧に取り上げられているとともに、4人の若者の人生の分岐点を描いていきます。
「おまえの人生は誰にも決められはせんで。何を言われても、決められるのはおまえや。後になって誰それのせいでこんなになった、てぼやくのは筋が違う」。 あたりまえの言葉ですが、人生の分岐点には深く心にしみる言葉です。傷つくことを覚悟に夢を追い、元いた「ここ」を思い出すことで涙を流し、それで初 めて新しい世界を知るとともに、そして、もっともっと「ここ」が好きになる・・・。そんな人生の分岐点を謳いあげた作品だと思います。もちろん、ミ ステリーも面白いですよ。


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