大誘拐

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■天藤 真    創元推理文庫 2000      (初版:カイガイ出版 1978)   

さて、東京大学出身の文豪といえば、ノーベル文学賞を受賞した川端康成と大江健三郎。でも、ミステリー部門になる と、や はり東は北村薫や恩田陸などの早稲田大学、西は法月輪太郎や綾辻行人などの京都大学が多くの巨匠を輩出しています。しかしながら、東京大学からも江戸川乱 歩賞作家 の藤 原伊織、最年少で江戸川乱歩賞最終候補に挙がった小森健太朗がミステリー作家としています。そして、彼らの先輩格にあたるのが、この天藤真。1979年に 『大 誘拐』で日本 推理協会賞を受賞しています。ちなみに、「週刊文春」の「20世紀傑作ミステリーベスト10」で堂々の第一位に輝いた作品です。
『大誘拐』の誘拐は、なかなかに奇想天外で愉快です。大阪刑務所で知り合った3人が営利目的に誘拐を計画します。狙ったのは紀州随一の大富豪、柳川家の当 主・とし子刀自。そして、首尾よく?、とし子刀自の誘拐に成功します。はてさて、5千万円の身代金を要求しようとしたところ、なんと、とし子刀自は、「あ んた、この私を何やと思うてはる。見損のうてもうたら困るがな。私はそない安うはないわ。きりよく100億や。ビタ一文負からんで」。茫然とする犯人た ち。ここから先の展開はまさに痛快です。82歳になるとし子刀自の想いは何か?100億円はいったい、どのように奪うのか?とし子刀自の人柄も 素敵で、とても読み応えのある作品です。

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