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■野中 柊 角川文庫 2007
(初版:幻冬舎 1995)
癒しをテーマにした作品です。昔、幻冬舎の版を図書館で借りて読んだことがあるのですが、角川文庫で読み直しまし
た。
林間学校で隣の県に出かけていたなつきは、突然の訃報を受けてとんぼ返りします。母親が弟を道連れに無理心中。少女の心に痛ましく残る記憶は、なぜ、自分
は連れて行ってもらえなかったのか・・・。
成長したなつきは、傷つけられることを恐れながらでしか他人と接することができなくなっていきます。そんななつきですが、なつきのすべてを受け入れる夫・
優との出会い、そして、なぜかなつきのもとを毎日、訪ねてくる情緒不安定な少女・佳奈子との日々によって、ゆっくりと再生していきます。悲しみを感じる自
分をごまかすことなく、悲しみを悲しみと受け止めることを自分に許していく、そして、それで初めて他者の痛みをも理解していける、それが、この作品で描か
れている癒しです。
野中柊は、立教大学卒業後、渡米し、渡米中に『ヨモギ・アイス』で海燕新人文学賞を受賞。双子の姉妹を描いた『小春日和』もなかなかよい作品です。
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