星々の舟

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■村山由佳    文春文庫  2006      (初版:文藝春秋  2003)   

2003年の直木賞受賞作品。村山由佳は『翼 cry for the moon』『野生の風』『すべての雲は銀の…』と好きな作品の多い作家の一人です。いずれの作品も傷つきながらも、傷つけられたと受け身に生きるのではな く、自由に生きようとする強さをみせる主人公たちが魅力的なものばかりです。
さて、『星々の舟』は、まずは、そのストーリー構成がとても見事です。水島家の6人、次男、次女、長女、長男、長男の娘、父と、各章によって主人公が異 なっています。「別々に瞬きながらも見えない線で繋がる星座のように、家族は、『家』という舟に乗って無限の海を渡っていく」というのが、ハードカバーの 帯、文庫版の表四に書かれている言葉です。この言葉のとおり、それぞれの章の中で、それぞれの主人公がそれぞれの想いをもちながら生きていながら、それを 全体を通してみると、瞬く星と星が星座のようにつながっているという、家族の本質が見事に描かれています。
つながっている家族である一方で、時として孤独。他の章できょうだいたちの目から描かれている次女の姿はしょうがない末っ子ですが、次女の章では、「手の かかる末っ子」を演じきることで、ばらばらになりそうな家族をつなぎとめようと本気で信じていたという次女の姿がでてきます。そして、その次女の言葉に は、「誰と分かち合うこともできない、消せない痛み。それさえも、確かに自分だけのものなら・・・・愛してやろうじゃないか」と、瞬く星のように輝く強さ があります。家族一人ひとりの瞬きをとても丁寧に描いている作品です。

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