西の魔女が死んだ

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■梨木香歩    新潮文庫  2001   (初版:楡出版 1994)

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える 必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、誰がシロクマを責めますか」。西の魔女こと、主人 公まいのおばあちゃんの言葉です。シロクマは好き好んで北極で暮らしている、そう語る魔女がまいに与えた修行は、なんでも自分で決めることでした。魂の伸 びゆく力に任せ、自分らしく生きることの大切 さを伝えています。
『西の魔女・・・』は梨木香歩のデビュー作です。英国に留学し、児童文学者ベティ・モーガン・ボーエンに学んだ梨木さん。児童文学ファンタジー大賞を受賞 した『裏庭』、四人の女性が古い祖母の家で植物と親しみながら染め織りの生活を送る『からくりからくさ』。自然との関わりと力強い生き方を書いた作 品の多い中でも、『西の魔女・・・』はその原点といえる作品だと思います。
不登校の少女まいは、ママのママ、つまり「西の魔女」ことイギリス人の祖母と日本人の祖父をもつ繊細な女の子。中学校に行けなくなったまいが 西の魔女のもとで1ヶ月あまりを過ごすお話です。成長を拒否するまいに、西の魔女は「魂は身体をもつことによってしか、物事を体験できないし、体験によっ てしか、魂は成 長できないんですよ。ですから、この世に生を受けるっていうのは魂にとっては願ってもないビッグ・チャンスなんですよ」と教えます。そして、 植物の種が太陽に向かって芽を出すように、「魂は成長したがっているのです」といいます。西の魔女は、最後に見事な方法でまいに魂の力を教えます。
文庫版には、その後のまいのお話も収められています。

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