四度目の氷河期

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荻原 浩    新潮社  2006

荻原作品の中でもかなり大好きな一冊です。図書館で借りて読んですっかり気に入ってしまい、BOOK OFFで見つけて嬉々として手に入れました。
この物語は主人公ワタルの17年と11ヶ月にわたる成長の物語です。母子家庭に産まれた彼は、皆と違う自分と向き合うべく、自分が知らない父親の秘密をあ る日、 思いつきます。シベリアに留学していた遺伝子の研究者の母が氷河の中から見つかったクロマニヨン人のアイスマンの遺伝子をもとに作ったのがぼくに違いな い。「ぼくは何者か」という疑問にワタルは「クロマニヨン人の息子」という答えを見つけ出し、クロマニヨン人として自らを高めていくことを心に秘めて自分 を磨い ていきます。
幼いワタルには自分が守りたいものの守り方がわからず、不器用に挫折を繰り返していきます。でも、彼の心の支えはクロマニヨン人として誇り高く生きようと すること。そんな変わった彼のよき 理解者は幼馴染のサチ。ワタルとサチがお互いに三文字の言葉だけで会話するシーンも、とてもほほえましく感じられます。
そして、彼の大切な母は「真実って、空の雲みたいなもの。近づこうとしても、なかなか近づけない。しかもどんどん流れていっちゃうし、カタチも変わってい く。最後にはこう思っちゃう。考えてもしかたないって」と彼に教えます。母との別れを経験し、父・アイスマンを求めてシベリアに旅立った彼は、最後の最後 に、彼にとって大切なものを見つけます。彼は、彼を悩ませてきた真実よりも、ずっとずっと大切なものを見つけていきます。求め続けた真実は、遠い過去では なく、未来にありました。

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