重力ピエロ

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伊坂幸太郎    新潮社  2003

誠実な主人公たちを軽妙なタッチで描いた作品の多い伊坂幸太郎。『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞しています。東北大学法学部の 出身で、たいていの作品は舞台が仙台です。
伊坂幸太郎のミステリーは巧みに伏線をからめているのに驚かされ、楽しませてくれながらよくよく読むと、しこまれたテーマに気づかされることが少なくあり ません。その 中でもこの『重力ピエロ』は、とても大好きな一冊です。
泉水と春は、仲のよい兄弟。ただ、春は母がレイプされて生まれた子どもという重たい過去をこの家族は抱えています。春をわが子として大切にする父。とても 美しい絆の家族の物語です。連続放火事件の謎解きをしていく親子。その過程で交わされる言葉には、とても素敵なものがたくさんあります。
「本 当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ。重いものを背負いながらタップを踏むように。ピエロが空中ブランコを飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているん だ」と話す春。消えない重たさは、忘れてしまえばよい。危うさを乗り越えていく家族の物語です。
2006年に文庫も出ています。

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