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■J.D.サリンジャー 野崎孝訳 白水Uブックス
学生時代に初めて読んで以来、何度も読んだ本。そして、今でも大好きな一冊です。有名な邦題となっている『ライ麦畑でつかまえて』は、原題の“The
catcher in the
rye”をその内容にも忠実に訳すならば、『ライ麦畑のつかまえ役』なのかもしれません。実際に『ライ麦畑の捕手』としている訳書もありますし、村上春樹
訳のものは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』として出されています。
さて、この物語は、3つ目の学校を成績不振により退学することとなった主人公ホールディングが自分が見聞きしたことを語るという物語ですが、この本の好き
なところは、終盤に妹フィービーに彼が夢を語るくだりです。
「とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑なんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしているとこが見えるんだよ。何千っていう
子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない ―誰もって大人はだよ― 僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立っているんだ。僕のやる仕事は
ね、誰でも崖から落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ・・・・・・・一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そう
いったものに僕はなりたいんだよ・・・・・」。
ホールディングが憧れたのは、子どもたちを監督するとか、子どもたちに危険を教えるとか、そういう役割ではなく、子どもたちは自由気ままに遊び、そして、
その子どもたちが守られていることに気がつかないほど、さりげなく崖のふちでつかまえてあげる役割です。かつ、それだけやっていたいと彼はいいます。
こうい
うつかまえ役になれたらいいな・・・と、今でも時々読み返す一節です。
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