T 記憶の作り方-3

記憶の形成

@余計な回路

ここまでは、主に記憶の再現に必要な回路のみを示しました。しかし、ニューロンには回路を伸ばす方向が設定されていないため、記憶は余計な回路を含んだ乱雑な状態になります。

そこで、「乱雑な回路」が「単純な回路」に変化する仕組みを示します。


外部の刺激による記憶の形成 : 散乱した回路の状態を、回路の密度の濃淡で示します。まず、画面に刺激を与えると、形成する回路の密度は、回路の重なり合った部分で高くなります。続いて回路の消去を行うと、回路の密度の低い部分が消去され、回路の密度の高い部分が消去しきれずに残留します。

次に、再び刺激を行うと、残留した回路に神経興奮が伝わりながら新たに回路が形成するため、余計な回路の発生は初回の刺激のときよりも少なくなります。そして、これを繰り返すことで、必要な回路が残留します。

内部の興奮による記憶の形成 : なお記憶は、外部からの刺激がなくても、ある程度の回路が残留していれば、内部からの興奮で、シンプルな構造になります。

ただし、外部の刺激内部の興奮で、伝達のしやすさの方向に違いができます。

「こんなイメージで・・・」のコーナー

「人間の回路」と「コンピューターの回路」の違い : 

人間の記憶は、次から次に組み合わされる複雑な情報が、次から次にシンプルな記憶へと収束していくシステムです。

一方、コンピューターの記憶は、もともとシンプルなものだから、一見して複雑にみえる人間の回路に近づけるため、複雑な方向へと進もうとする傾向があります。 しかし、その方向性は間違っています。回路が複雑になって、いつの間にか知能ができるという考えは、気持ちはわかりますが、偶然に頼りすぎです。そもそも、偶然コンピューター上に発生する回路は、理論的に人間でも作ることができます。意味のある回路を偶然作るなんて、めちゃくちゃな作り方だといえます。

人間の回路は、複雑なシステムではなく、複雑をシンプルへと導くシステムなのです。最低でも、これだけは理解しておかないと、いつまでたってもコンピューターは、ロボットのままです。

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