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遠浅な海の沖には椅子が欲しい
こぐと思う

妹弟

一色描き

春待つ石段
分かんない親子



名のない駅は探せない
漂う花

ぽつん
着地
キーマカレー
動かない
枯れる花の忘れ物
旅の途中
アパート

かくれんぼ

子供部屋
遠浅な海の沖には椅子が欲しい


遠浅な美しい海のその沖に

流木を杖代わりにして 布切れのような形ばかりの
涼しげな服を着た僕が立ってる

今の色のこの足元の海に入りたい

でも深さが足りないのと小さい頃の僕までがつぶやく

岸に行くには まだ日が高いけどしょうがないので帰ることにするか

というと小さい頃の僕はホッとしてるようだ

僕は全然物足りないんだけどな もうちょっとかっこつけてようかな

戻るには早すぎる誰もいない沖で

話し相手を見つけれたようだしね

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こぐと思う


自転車のタイヤに接っしながら回るライトの音が
ジージーと手にも脳にも目にも胸にもペダルにも伝わってくる

温かな夕暮れ時に更に駆り立てられる

不安感を煽られもし楽しい事がありそうと期待させる魔力をも秘める

それは錯覚でこの音を不快と思った日から開放されたい気持ちなのか

友の待つ祭りの神社へ駆けてく気持ち
もしかしたら花ちゃんたちも来てるかもとわくわくしてた気持ち

下り坂じゃなかった 上り坂だった あの日からなの?

広げたことのない思いでは僕にしか分からないはずなのに

やがて何かに導かれるような衝動の根は街の雑音にかき消されてしまう

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妹弟


妹弟が何人もいて会ったことのない人ばかりなので共通言語をもたない

突然電話をくれてはひらがなでいって欲しいのに
いつも漢字で埋め尽くされた硬い口調ばかりで
たまには柔らかくひらがなでいってよと言っても
歳が近いから無理と言われて黙るしかなくなる

この庭は素敵だ ここで1人 あの家は入ったことがあるので1人
いろいろなところで妹弟が生まれては僕を笑わせてくれる
わくわくしながらの そんな散歩は自分でおぼえた

僕の用意した小船は僕の家を知らないので連れてくる事が出来ない

もがけばもがくほど僕の手作りの船着場は不親切 

なので今までも会うことがなく これからも会うことがない

道ですれ違って何かを感じ取れたら凄いけど この人かなと思うことばかり

こんな謎々を残してった父は 自分への謎解きでもあったのにやすらかだった

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たんぽぽに夏色を探しても無理さとひまわりが言うと

それじゃ道端で砂煙でくすんだひまわりは夏色なの?

と たんぽぽは言いながらも可哀想と泣いた

ひまわりは「ありがとう」と泣きやむのを待った

周りの花たちも「仲の良い兄弟だね」って言いながら

一緒にたんぽぽの泣きやむのを待ってたんだって

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一色描き


体を丸めて誰にも見られないように小さな紙に
青色だけを使って何か書いてる

それは絵にも見えるけれども謝りの言葉にも見える

空は描かなくっても屋根の向こうは空なんだよ
と言ってしまったら描くのをやめて帰っちゃった

それはやはり空を描きたかっただけの家や山を青で描いた
謝りの言葉になってたんだと思う

草を描きたかったら虫も緑だし 虫かごも緑でいい

夕焼けを描きたかったらみんな夕焼け色でいいんだよ

と 小さい頃の自分に教えてあげたいと思う景色に出会う事がある

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春待つ石段


まだ 雪の残る石段 脇には既に野草が芽生える

「これから去る雪にさようならを お礼を言う人はどれだけいるんだろう

春の野草はきっと毎年お礼を言ってると思うよ

やがて伸びきった野草を刈る草刈職人は伸びた野草にお礼を言うんだろうか

言わないと思うよ

迷子の幼い子を探し当てたお母さんが草刈職人へお礼を言うのかもね」

まだまだ雪を避けながらで

振り返ると雪のない石段は僕の足跡

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分かんない親子


「お父さん春と冬の境目ってないの」

あるぞあるぞ
あの雪山の麓がそろそろ境目の出来る頃なんだよ
そしてその山から見る下の景色はもう春なんだよ

「難しくって分かんない
じゃ雪合戦の玉の眠るとこが減るって事かな?」

う〜ん 何でそういう事思いつくかな 分かんないな

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僕の心の中はとっても神秘で

去る時にゆれて落ちる涙 語りかけるとうなずく涙

いつも 今日もなので 涙だっと知られたくない仕草が素敵に見えて

癒されるものを抱きしめてる時の柔らかい涙も素敵

後ろを付いてくる自分が 僕だと気づかないうちに距離を保って振り返ると

もう泣いてない 僕がいつか教えたこと それも素敵で

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池に微かに映る木々も池の中に咲く木々にはかなわず

そのすべての木々もその向こうのまだ白い雪山に抱かれてる事に気づき恥ずかしそう

それでも池の生き物を見守る気持ちは満々で

その思いが水面に小さな漣を起こし 近づくものへ

気後れを起こさせ 池の中の平穏をたもつ

思いのほか深い神秘に満ちる日がある

こんな日のベンチは
低く低くヒザを抱えれる低さでいいのかもしれない

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名のない駅は探せない


列車で来たつもりはないのに

線路は消えてしまい列車だけが残る

絶対に僕らを乗せて帰るんだと駅のつもりでいるのか

でも駅名はないという

2人の名前を海岸のセメントの窪みに書いて想い出をふやす

線路が現れてようやく走りだし列車が何か語るけど聞こえない

ハッポースチロールの風に転がる音はどこにもある景色の中

レールを背に海が見えてもどこにでもある景色

だから もうここを探せない

この列車は人気で切符を買いに行ったら思いのほか混んでて

「笑顔の素敵な彼女の久しぶりの笑顔が見れました」と
駅員さんに言ったら

日記帳をくれた

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漂う花


木はない 花の美しさだけが求められるこの星では

どこに行くのか どこから来るのかも分からず

でも目の前にあれば喜ばれる美しい花たち

愛ではしても空中を流れる花に名前はつかない

木がないので住まいは水の上の住人は
水を求めてくる花へたっぷりと水を与える

それをこの星では優しさというらしい

いつかこの池ばかりの星の底が抜けたりはしないようにと
共通言語を作ろうとはするのだけれども

いつもスキャットだけですんでしまうような星なんです

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ぽつん


光の中でも更に輝く光の中に閉じ込められる事に憧れると
終点を迎える事に怖さはなく

その中でも微かなものが好きな心の持ち主が 輝かし過ぎて光の限界で砕け散りわずかに残る
光の破片を見つけては

 実はそこが好きなところなのかもしれないと押し留め

なれた仕草でぽつんとする

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着地


今日は人に会ってないので
このままでいようと家の中で外を歩く人たちを眺める

まだ誰にも鳴き声を褒められた事のないセミが
いろいろな鳴き声をしてみるけれども
初めての鳴き声を捨ててからの宿命


そ〜っとベランダにうずくまり壁伝いに人の気配を感じてると
先ほどのセミが鳴くのをやめて他の町に行く支度をしてる

まだ見ぬ人からの僕へのプレゼントかと思ったほどの鳴き声なのに
と言うと いえいえそれはさっきから聞こえる隣の住人の歌声です

昨日まで隣町にいたのでしょう
まだまだみずみずしい歌声ですね

着地してすぐは元気なもの お分かりではないのですか
あなたもここに長く居過ぎたようですね

ここに居た事を刻むかのような剥がせない日陰を壁に残し

セミだけが旅立つ

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キーマカレー


キーマカレーのカップが出た

スプーンを水切りして使おうとしたら

それはスプーンじゃなくパンだった

水を切ってくれたのに今度はスープの中に入れるんですか

じゃスプーンの方が喜ばれるじゃないですか

とパンが言うけど段々と溶けてはスパイスと見分けがつかないほどに
カップの底に沈んでしまい色までも同化する

それをすくい取るスプーンはこの部屋には存在しなくなったので

冷めるまでと窓際に置き

大昔キーマカレーを世界に広めようと旅をした商人の物語を作り始める

そしてその商人が一儲けしそびれたところで いただきま〜す

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動かない


森も あなたの髪も服も全てが揺れてれるのに
あなたは少しも揺れてない

小鳥がさえずる声に少しでも微笑むかと思ったけども

太陽があなたを照らし眩しくっても
あなたは揺れない 動かない

きっとここはあなたの居るべき所じゃないんだね
と言ってみたけど 動かない

涙を見せない泣き虫用のハンカチをなくしたからなの?
分からないけどまだ目を閉じたまま動かない

「昨日のあなたと今日のあなたはどちらが素敵なのかな」
「今日のあなたは明日のあなたに何かしてあげるのかな」
「明日のあなたは昨日の優しいあなたを思い出せるのかな」



あなたの作った2人のお気に入りの言葉を
全部言ってみたけど

やっぱり

あなたは動かない

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枯れる花の忘れ物


縁側でココアを飲んでると

頭上を飛行機が飛んでて ここで降りたいんだけどな
と搭乗者の誰かが言ってるのが聞こえてくる

飛び立った飛行場に見送る人からいただいた花束を忘れてお困りのよう

ここから戻ればまだ枯れる前の花を手に出来るし
それを逃せば枯れた花束が宅急便で家に着くのを待つしかないらしい

生きいきしてた頃の写真が添えられて
「枯れる花の忘れ物への扱いでは良い方なんですよ〜
当社だけのサービスです」ってスチュワーデスさんは自慢そう

う〜ん それでもやはり可哀想だと思い
ココアも飲み終わったし僕が取りに行ってあげようと思う

でも先ほどから縁側でうとうととしててもうチョッとで寝てしまいそうなので
その搭乗者の事をいろいろ考えて眠気を飛ばそうとしたけど どうも駄目そう〜

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旅の途中


砂漠の全ての砂が砂時計の上にあり

下にはどこまで深いのか分からないほどの沼が口をあけて待ってる

人の骨 ラクダの骨 空になった水筒 地図などが落ちずに引っかかってる

落ちてくるのは砂と 折れずに残る杖

杖など砂漠でどうするんだろう きっと何かのおまじないに使うのかもしれない

その時まさか 呪文を言い当ててしまったのか

杖は折れてはコンパスになり ラクダに乗った者が水筒を持ち地図の中で
待ち続ける事が手形にはならないと目覚めたようで 沼を目掛けて落ちてくる

沼に落ちては止む事のない砂の雨音を聞き

水面に映る雲を大地に また旅を続ける

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アパート


僕の方が数キロ軽いので3階で彼が2階って決まったんです

でも 2階の部屋は僕が前に住んでた部屋なので

いつも2階の事を考えながら住んでます

うらやましいです

もっと体重が軽くなると4階に住まわなければならないそうなんです

4階はとっても寒いし 屋上のない4階は意味ないし 嫌です

でも 春には
地下にジャズ喫茶を作って彼と友達になれたらと思ってま〜す

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かくれんぼ


彼女が遊びにくるというので 扇風機の中に隠れた

いつもの事だけど 鍵がかかってても彼女は
僕の部屋でしか出来ない才能よと
合鍵無しでドアを開けて入ってくる

僕を見つけれずに泣き出したので 僕はここだよと声を出しても
扇風機の風で僕の声が聞こえないようだ

でも昨日彼女の作ってくれたオリジナル・スパゲッティーの匂いがし始めて
泣き止んでは 僕を感じてくれてる

その後扇風機は観覧車に姿を変えて係りの人が危ないので
ドアを閉めてくださいと言うものだから

スパゲッティーの後に食べさせてあげたケーキの匂いがしなくなったと
怒って帰ってしまおうとしてるんだけど

観覧車に乗る時の僕の癖が出ちゃって

僕が観覧車の中で口ずさむと
僕らの乗る観覧車だけが止まっちゃうのを知ってる彼女は

自分も乗るって扇風機の前で楽しそうに待ってます

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軽い身支度をして 長いすに深々と座り

どこでもいいから遠くに行ってみたいと思ってると

車掌さんが窓を閉めてくださいとまわって来ました

僕は慌てて部屋の窓を閉めた

カーテンは閉めなくっていいんですかと聞いたら
今日はトンネルは通らないのでそこまではいいでしょうって

外ではお釣りを渡しそびれて
困った顔をしてる善良な弁当売りのおばあさんが6人は居て

その中の1人のおばあさんが
やっと思い出したように
制服を一枚重ね着しては運転手になり

でも
二次元的な列車には飽き飽きしてるようで

今日こそはと空を見上げては気球を待ってる

こんな時には僕んちの縁側がお役にたってるみたい

僕は運転手はこのおばあさんでと決めてるらしいし
お礼を言って一緒に待ってると

大きな気球が思い出を置いてっては

また思い出を探しに飛んでっちゃいました

どうしようか  おばあさんは今日は諦めるって

そして ハイお釣りよと僕に渡すんです
他のホームに居たおばあさんたちもお釣りを「ハイどうぞ」と
くれるもんだから 気球が置いてった思い出を一つずつ
おばあさんたちにあげたら

あらこんなにいろんなとこに行ってきたのね
良かったねと笑ってくれた

うれしい もっと もっと

深い眠りについてるので

チョッとだけど長いすがフワ〜ッと浮いたのに
気づいてないような僕なんです

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子供部屋


カーテンの留め金がいくつか折れて

だらしなく垂れてるところのあるカーテンになってしまった

もうとってもカーテンと呼ばれたくないわ

可愛い洋服ダンスが それなら私の中でハンガーに引っかかってお休みよ
お洋服に見えるかもよ

暗いところが嫌いなカーテンは 鏡さんのカバーにならなってあげてもいいんだけどな
と言ったら 鏡が 私が暗くなるのは嫌だなとふられちゃった

部屋の住人が うるさいくらいの目覚まし時計になる事がある

すっぽりとカーテンがはずれ落ちては隠してしまった

でもいつからかこの家の住人は この部屋には寄り付かなくなった

目覚まし時計になると必ず歳を聞かれるようになってからは

留め金をなおさなきゃと大人の世界へ行っちゃった

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