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33 top 流せない 鈴 ゆらゆら ゆらゆら 紙風船 化かす橋 満杯 目撃者 満月の夜の足元 舞い降りるモノを見た 我が家の奥深さ つよい花 山 通り 迷ったら 今日は天国も天気 磯の町 やさしいキコリの仕事あと 今日の札幌 小石 バラバラ |
流せない 小石じゃないのに ポケットに入れられた二枚貝 今開いたりしないでよ 海まで連れてってあげるから 川に流れない 忘れたいことは そうしてあげるのが いいんだと思うんだ ____________________ 鈴 お気に入りの鈴なのか 街中の散歩にもつけて歩く あちらでも鈴をつけて歩く人が どちらも袖の長いシャツ 真夏の熱い日ですよ そんなにも 鈴の音は 体に痛い? 指先だけは日にさらされ 学校帰りの小葉柵に 手をかざし歩いた頃の感触を 忘れてないよ 散歩道 ____________________ ゆらゆら ゆらゆら 今日だって 水分たっぷりの枝が 切り落とされる 水分が空になって初めて 自分が切られたことの乾きに気づく それ以外の不便といえば 風にゆれてゆらゆら あれは中々気持ちがよかったな もう もどれないのだろうか と言ってる枝の僕を 残る大木の僕が見送る これぐらいなら とりあえずは さほどの悲しさはない ゆらゆら ゆらゆら ____________________ 紙風船 紙風船が 棚から 落ちてる 空気はばっちりなのに なつかしさが 引きとめるのか 空には飛んでいけない ____________________ 化かす橋 冬にすてきだったあの橋は いまごろどうなってるだろう 雪もとけ 手すりは赤く 帰り道の人を 化かす 足元は濃いみどり 橋から池をみると 僕が写らない 冬には氷のしわざで 夏には水草の仕業なのに あと何回この真っ赤な色を 塗り替えると 帰してもらえるの あ〜やはり すでに化かされてる人がいる ____________________ 満杯 飛行機雲が あそこからあっちまで 雨上がりには虹が もしもし 知ってた? 満杯って 僕の知らないところから 見たことのないところまでも 入るんだよ たまに 誰かにお願い事を してみようよ なにかが広がるかもね ____________________ 目撃者 向こうへゆく人たちと こちらへ来る人たちの 入り混じり すれ違う様は 難解なモノが 解ける時のショーのようで 見事なもの 僕はいつも 目撃者 ____________________ 満月の夜の足元 雑草を束ねて お札をぶら下げる 束ねたといっても雑草はもろく お札も 垂れ下がる雑草から 外れそうになる それじゃ まるでいけないことのようだから もっとシャキッとしててください 束ねられた雑草さん 今日は満月なんですよ ____________________ 舞い降りるモノを見た 空から 木の葉でもなく 花びらでもなく 雲でもない でもとても軽く 落ちることに いくらかの恐怖など 知りもしないようなモノが ひらひら舞い降りる 指をさそうとすると その気を知っては たそがれて旅立たれそうで そ〜っと 両手を広げて おいで おいでよ〜 きみにも色があるんだね その事でだけでも そして十分な刺激さえくれる ____________________ 我が家の奥深さ トイレの正面の壁に片手を着きながらと思えど 意外な奥ぶかさに 不覚 ____________________ つよい花 だれに見られることもないので 造花になり いつでもと持久戦 そんな花は もどるところもいらない つよい花 ____________________ 母 僕に見える山は 中腹までが山肌が削り取られ 荒々しい でもそこまで行くと 夢の中 削り取られた跡は 何本にも伸びた母の優しい手 抱かれる そう思えて下山する 頂上には行かない いらないのか 知らなくっていいのか どんな方のか そこまでたどり着いた事はない そのやさしさをと裏山にまわり 背中にも思う ____________________ 通り 鳥から抜け落ちた羽は 人の通りに落ちれば 二度と舞い上がれない わずかな風に揺れて ゆらゆらするだけ 小さい子の 小さなリュックにでさえ つまずけば 転びそうになる そんなことにも ご用心 ____________________ 迷ったら 僕のからだが迷ってる テロップの訳と 吹き替えの意味が合わない どちらが僕にとって 気持ちがいいんだろう やり直しが効かない わけじゃないのに アルバムを見直して ヒントを得たい 写りのいい写真は 良い薬になります ____________________ 今日は天国も天気 運河沿いでバッチ売をしてた友 いつからかいなくなり 似たような人ばかり 一番彼に似た人はどなた その人からなにか買ってあげたい こんな天気な日は天国も バッチリ稼げて? 札幌に帰る道すがら ____________________ 磯の町 磯の香りの小さな町を通る時は すれ違う人には挨拶をしようと思います 素敵なお嬢さんには 笑顔で 海の中でもないだろうに いつでも磯の香りがする 開いてしまい 生きるすべを知った貝どうし この町では いつも 髪は半乾きで 時は 温かな正午 ____________________ やさしいキコリの仕事あと 木の切り株も 森の景色 背もたれが欲しいよ 膝を抱えてごらん ほーら いらないでしょう やさしいキコリが切った後なんだね おばあちゃんも座れてる ____________________ 今日の札幌 もしかしてあなたは骨だけですか 上着を摘んでリュックの周りをまわるのは フワッと見せるためなのでしょうか 今日のような暑い日でも 長袖 長ズボン 帽子 マスク手袋 僕もあなたも魔法使いではないので なにもしてあげられず 今日もすれ違うだけ ____________________ 小石 小石が着飾る 落ち葉の切れっ端がたどり着くから 右左バラバラな着飾り たまに右左同じようになることがあるけれど それは眼差しにしか見えないので 風よ吹け〜 ____________________ バラバラ あと何百年後 アリは踏まれると 真っ赤な血を大量に 流すようになる なので居たたまれず アリ専用に道を 作ることになる それならばと 落ち葉たちは 勝手にゴミ箱のあたりまで 吹きだまれるようになる それなのにその頃人間たちは 宙を舞う もうここにはこないだろう みんなバラバラ どちらが良かったんだろうか ____________________ |
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