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夜の海
美しい切花いつまでも
故郷
氷霧

横顔

役場のにおいと戦うおばあさん
見てくれがいい
硬い庭の土では
弘前のお盆の夜
僕の中の穴
市電通り
ほおずきの匂い
夕方
留守番の気持ち
やさしく降りる歌

下敷きにした遊び
柱時計

川べりの花

みどりの木の影

夜の海


今 夜の海は素敵だというものは

開け放たれた窓から

満月の光の龍の沖から岸へと

舞い降りた一筋を

みたんだと思う

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いつまでも美しい切花


切花が美しい

と ここを動きたくないので

そう言いわけをする

やがて枯れても
素敵だと心底つぶやく

花を長くもたせる職人には
きらわれたようなので

僕のとっておきの
日記のページを見せてあげる

小学校の時に描いた
チューリップの絵

職人のめざすものも
そこにあるのかもしれない

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故郷


区画された街中のどこかを
内側からチョッと引っ張る

できたくぼみを楽しむのか人が集まりだし

道行く人たちに声をかける

そちらにむかっても
あなたの故郷には

たどり着けませんよ

どうです?

みんなで 後戻りしませんか

いつかは行けるでしょうし

____________________

氷霧


少なくなったかき氷

カップのすみにできてた氷霧は

水を入れるまえの水筒の中へ

林間学校の朝の長袖シャツにもしみる

落としたりしないものなのに

下ばかりみてると

頭をもたげた時の

ふしだらな叫び声とともに

見失いそう

____________________




草刈をされても残る

踏みしめられた溝の
突き当たりは

盆踊り

途中の小さな橋のたもとにラムネ売りの
大きな桶があっても

そばの小川の涼んだ音も手伝って

今日も売り切れ

氷を入れて冷やす冷蔵庫は
今でもどこかで

夏を 

むかえてるんだろうか

____________________

横顔


下駄に履き替えると

キューリは塩や味噌をつけて食べるんだよ

というおばあちゃんの横顔が思い浮かぶ

リンゴに包丁で細かくきざみ目を入れて
歯の弱いおばあちゃんにあげる

そんな時の僕にも横顔が

おばあちゃん 出来たよ食べて

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役場のにおいと戦うおばあさん


このへんを通るといつも
役場の窓口のにおいがする

どうもなじめない

市の植木スペースなのに
自分のもののように大切にいろいろ
世話を焼くおばあさんが

あたしがいなくなったら
この花たちはどうなるんだろうね

爛漫と咲く花たちの横には

刈り取られた茎が 
これ以上ないほどに きつく縛られて 

横にいつまでも今日も 
きっとあさっても

どんどん積み上げられ

役場のにおいに

追いつく日までなのか

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見てくれがいい


うらが広い空き地のところの
店舗は そば屋がいい

景色も味もさっぱりしてそうで

いいやね

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硬い庭の土


柵を作らなかったばっかりに
庭の土がどんどん硬くなってく

真っ白なドレスだけでいいと思ってたから

いろいろな色や柄のものを
まとうつもりなどなかった

実をつける花は
咲かせたかったけど

そういっては

アスファルトにしか立てない
今日の僕を
ふり向かせるのに

柵のない庭では

植木鉢だけが そっと

おしゃれ

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弘前のお盆の夜


きげんの良い犬は

中々家に入りたくない

硬いものとか とがった物とか
やっかいな物もいろいろある外が

全然気にならない

でも 

今日は玄関先での
お盆の迎え火

弘前の夏の夜

裏庭の番をしなければいけない

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僕の中の穴


あこがれる 

僕の中の穴

あこがれたことを
いぶかしげながらも

今日も保つ無風の穴

今日こそのぞいてみようか

朝日の乱反射に
隠くれてしまうまでに

ちがうものを取ろうとしてた
この手でも

ぬくもりがあるから

間にあうはず

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市電通り


市電通りを渡るには

あくびをしながらがちょうどいい

右にも左にも電車がみえるけど

だいじょうぶなんだと思う

駅にさえ
立ってみたくなる時間が

流れる

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ほおずきの匂い


この時期 いろいろな樹からほうずきが咲く

ドライフラワーにする人もいるのだから

そんな里もいいのかもしれない

こんなにも咲くものだから

匂いの逃げ場は土の中

閉じ切れずにいる
小さな穴には

ご近所のお嬢ちゃんが 

折り紙を切って作った真っ赤なもみじの花を
ちりばめてくれる

いやまだ あぶないからと今夏も 

背丈のよい街燈探しに

骨董品屋まわりの
おじいちゃんも

あらわれる

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夕方


風にゆれるていどの
傘の付いた裸電球

そんな電信柱のスイッチを入れる

びっくりした〜

こうもりか

空を飛ぶ

夕暮れのこの時間

こうもりからみた景色が
分かるような気がして

すご〜い

と 子どもたちが

ジャンプをするよ

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留守番の気持ち


海に遊びにいく前に
忘れ物を取りに家に入ると

もう外に出る前の
さっきまでの家の中とは

ちがって見える

下が色の濃い赤 まん中は限りなく白
限りなく薄青 上は黒に混ざるような黄色

へやが外出をしようとする時は
こんな服をえらぶのは知ってたけど

そして床から下は宙に浮いてしっぽが垂れてる

いつも手入れをしてる
鉢植えの土のごつごつとした

手触りまでが 
心苦しい

濾し網でさらさらな
海岸の砂のようにしてあげると

だいぶ機嫌がなおったようなので

さ〜 留守番

たのんだよ〜

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やさしく降りる歌


マイナーな曲を歌うと

雨も西日も軟着陸

時空まで

君ひとりぐらいなら
連れてきてくれそうなほど

やさしく ゆらぐ

ゆっくり この横まで

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下敷きにした遊び


凍った砂漠を下敷にした遊びを

流行らせたのは 

詩人で

その詩人たちの書きそんじた紙を

下敷にした ことば遊びはもう

遊びとはいえないほどに
まとわり着いてきては

帰ろうとしません

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柱時計


こわれた柱時計の匂う部屋で

時計が動きさえすれば

この匂いは消えるんだろうかと

むかしを思いだしてみる

どこからだろう

なつかしい想いがしては

時計をさらに

包みこんでしまう

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川べりの花


今 川べりでは

おなじところに咲くのが
似合わない花たちが

白・黄色・赤

そんなに似合わない?

それらが摘み取られては
おり重なり寄り添い

橋のたもと

アスファルトに残る
少しのしずくだけに

見送られる

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みどりの木の影


みどりの木の影は みどり色

葉を蓄えて大きく育つ木そのものへ

壁伝い草の造形

影にそって伸びる伝い草の想いは

朽ちようとするものから身を守る

秘めたる魔力


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