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呉服問屋は 
ひらがな名がいい
子雷
病院の待合室

名がない
雪解けです
大きなテーブルが欲しい
ゆきどけ
飲み屋の不確かさ

砂の鏡
泡をつかみたかった
まだまだ庭は狭く
話し相手

明かりに漂う
裏道

帽子のボンボリ
空き家は入り口?
凹凸ガラス窓
春の難儀
目線 視線

呉服問屋は ひらがな名がいい


まだあの呉服問屋は カタカナの店名です

いつになったら ひらがな名にするんでしょうか

向こうのお寺の塀が とっても長そうにみえるのは

小道のつき当たりの化かしなのか

とけた水が雪の下を流れるものだから端っこを 潰さないように歩いては

見逃す日もある看板に

このおもいが 

もうなん年めの春なんだろう

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子雷


ピカッと光っては

雷だ〜

でも音が 追いついてこない

向こうの その向こうのお山に どれほどの 楽しそうなことがあるのか

音は向こうにいってしまった

まだまだ夏の本番には間に合うからとはいっても

しっかりして欲しいものである

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病院の待合室


熱のある人と熱のない人が 同じ待合室で待ってると

仲のいい子どもがからかいにくるんだけれど

熱を移しちゃいけないと大人達は気をつかい

熱のない人が言い聞かせる

病院の待合室の 今

なにが一番気をつけてあげなきゃいけないことか 手を上げたくなるけれど

子どものうしろからは動物や昆虫やらも くるので 待合室は大にぎわい

僕らだって具合が悪い時は 何とかして欲しいもんなんだよ

自分の名前を呼ばれ 自分が予約された患者なんだと知った子は

両手に抱えられるだけの動物と 少しでも多くの昆虫をポケットに入れて

楽しそうに診察室に向かうけれど

まだ呼ばれないモノたちの ゆずるものは重たい

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名がない


朝日に名がない

夕日に名がない

名をつければ 

その時の言葉に力が宿るのかもしれない


目に入る景色それぞれに
たずねてゆく気さくな人が
名をしれば 

迎えてくれる人へのみやげ話は

もっともっと 
切り出しやすくなるのかもしれない


辛いことばかりではない

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雪解けです


雪解けが、まだらで

道行く人を見送るのも
一苦労です

笑ってはいけないんですよ

アスファルトの上を歩く人や
日陰で凍ってるところを歩く人

足元をみなくっても分かる歩き方が楽しい

けんかをしてる仲も春なので
雪解け

雪解け時期にたつ旅人は
よほどの急ぎの人なんだろし

もう少し 暖かい日には
山間の雪解けを聞きにいくのも

おつなモノなのに

北へ行くのか 南へ行くのか

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大きなテーブルが欲しい


大きく 小惑星イトカワを
平面にしたような形の白いテーブルに

お菓子やら雑誌やらがいつもところせましと
置かれてて 

猫までいて部屋の主争いをテーブルときそってる

起きてはテーブルにその日の気をもらいにいくと
やはりしっかり用意されてて

ただ そばにゴミ箱が見つからないのです
ストレスの処理が出来ない

それさえあればな

人目に触れることのないテーブルで
終わるんだと思うと

実に 惜しい〜


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ゆきどけ


手稲の雪山のみごとさには悪いけれど

町の雪がとけてゆく〜

これでやっと
とまってた時がうごく

雪深い景色というものは 流れることを知らないようで

積もっては隠し 積もっては隠し

これできっと

すっきりするよ〜

春だね〜 って ねっ

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飲み屋のあやうさ


どなたの値札が落ちたのか
床に張りついてる

この値札が裂け無残にはがれた時 
その方は年老いてゆく

その頃には理由が
それだとも忘れられてて


造花は枯れても リンゴの実をつける

おいしそうには見えないし
もぎ取ろうとするものがいないだけでも

造花にも 
枯れる意味はあるんだと思う


そんな店内にはエレキだまりが満ち
飛びまわってるのに

そんな事がおこってるとは誰もわからず
楽しそうに飲んでる

突然じぶんが 宇宙の闇に放失されるかもしれないのに
星の輝きが優しそうに思えるからなのか


グラスをもつ以外は みんな手ぶらで

身がるすぎるような気がする

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砂の鏡


砂の鏡がなにを写すのか分からず

なにかみえても足をとめるものはいなく

みんなまたいで通り過ぎてゆく

人の心を写すはずだった
一粒一粒用意された砂

これでも足りないのかもしれないほど画素数は鮮明さを求められ

やがて物語ばかりが珍重され現実は物語を生んだ母として砂の底に葬られる

たまに物語から本当のような涙が染みては母の胸に届くものだから

砂の底で邪険に動けない

またいだ その先へ手を伸ばすことをやめる改心ほど
軽いものはないなどと

砂の鏡は今日も不確かなことばかりを映すので

さすがに この世も少しばかり苦笑する

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泡をつかみたかった


泡をつかみたくって
水槽を買った

水藻を沈めれば泡がわくはずと
水槽の世界をどんどんにぎやかにしては

水槽を両手で抱えて踊りたくなる

いやいや あぶない あぶない

それよりも 中ですいすいと泳ぐ
きれいな小魚になって

さわってみたいし 
入ってみたいし
乗ってみたいし

増やしてみたい

そう思う瞬間があるはず
のがさないで

自分で用意した
水槽の世界観とか
外との共通言語とかが

泡となって 

ゆらゆらと

溶けてゆくから

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まだまだ庭は狭く


葉から落ちて雪は
自分が葉ではなかったんだと知る

バイオリンが増えてゆく
一台一台の個性を知っては手放せない

こんな方の庭でさえ
雪どけがすすまないので

おとずれる長い黒髪の女性は
気ままな方であってほしい

まだまだ庭は狭く

想いを広げることができそうにない

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話し相手


市電 久しぶりなのに
温かくむかえてくれて

いつも通る景色を 

見る景色に変えてくれる

向かいに座る人との目線が

こんなにも揺れる市電では
気にならず頭を揺れにまかせる

吊り輪がこの乗り物の体幹で
僕らは筋肉

市電で一目置かれたかったら
アインシュタインの相対性理論を
知ってるような顔をしてごらん

市電の長さが高さが
ありえない大きさに変わるから

って ふと話し相手がほしくなる

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明かりに漂う


僕の思い違いなのか
明かりをつるす木によって幸せが違うような気がする

そんな思わせぶりな勘違い?

こんな時に馬に乗れたら
優しくできるのか

蛍の森に ずけずけと
馬で乗りつける人でいるのか

どんな明かりにさえ
その周りで やさしい生き物でいたい

宇宙に漂う星の明かりにさえ

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裏道


世づれした表通りより

裏道は 世間をこわがるぐらいが
丁度よさそうな私が歩く

たまに思い切って

表通りの途切れるくらいの
はるか向こうを
縦に横断しては やはりもどる

いつもの自分には戻れないような気がして

今まで どこかへの抜け道なんだと
信じてた裏道なんだし

それが僕の
生き方かもしれないし

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帽子のボンボリ


帽子の上のボンボリがかわいい

だんだんと育ち 大きくなって帽子を包むほどになる

そしてやがて上に子を宿す 

そう名づけてやはり ボンボリ

「お母さん みんなと遊びたいわ」

もうすこし待ちなさい やがて古着屋さんのワゴンの中いきだから
その時みんなとたっぷり遊べるわよ

「え〜待てないよ〜 遊びたいよ」

しょうがないわね 中から紐を緩ませるから
どう これで だいぶユラユラ出来るようになったでしょう

「本当だ ありがとうお母さん
でもあたし達の会話をこの主さんに聞かれてないかしら」

大丈夫 すっぽりと耳まで暖めてあげてるから聞こえないわよ〜

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空き家は入り口?


ぬかるむ雪道も下り坂では勢いがつき

晴れた暖かい冬道も 風が吹けば雪舞吹雪く

そんな通りの空き家から手招き

周りの自然に溶け込もうと
向こうの景色が透けて見えるのに

これからはどこかへの入り口の
役目が残ってるのか

とっても失礼のないような
洗礼された手招きをする人影なので

引きこまれそうなんです

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凹凸ガラス窓


窓ガラスが凹凸なら

この中に手紙を入れれば一仕事終わり
そんな郵便受けのような安心を

うらやましがらずにすむそうです

こんな窓では落書きもできないので

龍の昇る様はそんなにも直ぐに
消えるものなのか

と寂しがることもなくなるそうです

たまに爪をたててみる

やはり

飽きては指肌でなぞってみても

ふかふかのタオルを
踏みつける
優しさは

見当たりません

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春の難儀


生まれたばかりの春が
冬のまねをしてみた雪降らしが
水っぽすぎて 

水たまりになってしまう
看板娘のいるタバコ屋の前

この町内の春待つ難儀

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目線 視線


遊び仲間たちと
庭に勢い良く駆け抜けると

すぐ目の前に果物畑があり

おまけにその出口が少し
下り坂になってる

果物を踏みつけないようにと
下り坂では静かに歩き

あの少年だったはずの
周りをみわたす目線と

今の僕の目線がつながらない

あの瞬間
自分を見せることを

おぼえたようなのに

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