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朝露
目標

可哀想な自転車
そんなストーリーでも
薔薇の妖力
ブリ大根

不思議な地図
右手袋
朝露
雪虫
親鳥の教え

休憩所
子犬

祭りの後
逃げる
親父の時計

朝露


大きな朝露が光に輝いて
新種のテントウムシみたいだ

近づき過ぎないように

光の向きに逆らわないように

この一粒の単位は絵心のため

花についた朝露にも絵心が

優しくいいあてる言葉をさがす人たちを

一粒の朝露の中に写せるのだから

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目標


大きな木も小さい木も
今 目標とされてるらしい

この森の木でどれだけの船が作れるのかとか
この森の木でどれだけの焚き火が出来るのかとか

そんな話じゃないんだと分かってからの森の木たちは

目標に選ぶ 太い木や細い木では
違いがあるのかを知りたがる

きのうも今日も訪れる「がんばる人」へ

「どこでもイスの代わりにしていいのさ」感性を

そ〜っと 差し上げたようです

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可哀想な自転車


生い茂る草達がとっても
頼りがいのある存在に見えて

受けとめて欲しかったのに

失敗しちゃってって 思いたがってる

捨てられたとは思いたくない自転車

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そんなストーリーでも


こんな時期の笹の葉を品定めしてる方は いい人に違いないのに

僕が横を通り過ぎるまで気を抜けないでる

でもそんな事をしても家の庭の木に花の咲かないのは変わらない

枝のいたるところにカラフルな洗濯バサミをはさんでも
花にはみえない

でも そのにぎやかさに雪虫が部屋の中に迷い込む

ご招待したような気持ちでいると また来てもらえるんだって

そんなストーリーでもと 声を掛けようとすれば

逃げてしまいそうな人だな

でも微笑んでくれそうな人のようで

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薔薇の妖力


喫茶店でくつろぐ

薔薇といってもいろいろあるんだ
匂いもいろいろなんだろうか
今度はカメラも持っていきたい

氷なんて珍しいのに氷砂糖で化かされたかな
コーヒーに付く お水の中に ほのかに疑心

まだ妖しい世界から解けていない

お店の女給さんも和服に白いエプロン
赤い薔薇色の足袋

いやいや まだ解けていない薔薇の妖力

薔薇園から近い喫茶店では
よくある時空のゆがみなのかもしれない

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ブリ大根


妻の作るブリ大根

煮魚は苦手でもブリ大根の名前は気に入ってて

ブリ大根に虹がでる
そんな素敵な詩をみつけたことがある

妻にいうと 
きっと一軒家で窓があって
光の差し込む台所なのね ブリって光り物だし

うぉ〜 一気に来た

大きなブリ一切れと大根が
今日は3切れ入ってる

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不思議な地図


僕はとっても小さく
それでも目の前の岩を登りたい

頂上から目の前に広がる景色と
地図を見くらべては

今登ったこの岩は実は 小石なのかもしれないって
思わせられる とっても不思議な地図

ビルの合間に地図に書かれた池や川が見える

この地図と僕は今ひとつの時代を共有していて

内緒だけれど 
この地図は氷河期以前の文明の記録なんだとおもう

こんなにも保存状態の素敵な景色に
この辺では氷河も優しく流れたのかもしれないねと

地図上の池や川を指でなぞってみては

もとは 地図はそのためにあったもののような気もする

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右手袋


左の手袋は見つかるのに いつも右だけなくなるんです

今日はどうにでも右の手袋をした僕を待ちます

あ〜 思いだす

前に何度も見てはざんげの気持ちになったところ

左手にだけ手袋をした僕だけが1人
その景色の中にいるのだけれど寂しい

叫ぶと空から僕が複写されて落ちてくる

何枚も何枚も 左手に手袋をした僕だけが落ちてくる

いつまで待てばいいのか

両手に手袋がそろわないと 今日だって

この素敵な景色を形作るパズルの一箇所にだけでも
訪ねて行こうにも行けそうにない

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朝露


朝 水滴をまとう虫や草花

感覚が鈍く 思考も鈍く

朝露と雨の違いに
惑わされたりもするだろうに

今は ただ

ねんごろり

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雪虫


雪虫は白く 降るのではなく漂う

そっとかざした手のひらにも舞い落ちるけれど

何かに触れると潰れ死んでしまう

もっと大きければ虫かごに入れて 鍛えてあげるのにと
男の子達がそのもろさにはがゆそう

白い 雪のよう

雪に舞い降りる夢をみながらも

雪に出会う前の

初雪の便り

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親鳥の教え


鳥が とまり木を探してるけれど
あたりは木の1本も生えない草原

そんな時には自分の心の中に帰りなさいと
母鳥に教わった

舞い降りたところが心の隅っこ

そう 木はないながらも
心の落ち着けるところ

不確かと言う人がいるかもしれないけれど

季節など関係のない胸のうち

解けもせず 壊れもせず 

受け入れて 揺すられても

気持ちよく たなびく

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休憩所


外の気温以上に着込んでは暑いので脱ぎたいけれど
道のいたるところに休憩所はなく

ほてってはボタンを開け 手袋を脱いで
暑い時には顔を上向きに上げるもんなんだ

せめてリュックに入れたいけれど
それでは旅人に出会った時に見透かされてしまうかもしれない

旅人がこの道を選ぶなら やはり休憩所は必要で
そこから家に戻る人もいれば 旅人に心変わりする通勤中の人もあり

その全ては人生を知り尽くした管理人の語りの思惑通りに進む

見送る者の言葉をどれだけ知ってるかを
聞いてみたいものだけれど

今日も満足して帰ってゆく管理人は
いつも大きな大きなリュックを背負って歩く


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子犬


小さい頃に丸めて捨てた新聞紙が
今ごろやっと子犬になったような小雨降る朝

横目でみると
その子犬が横断歩道の脇にいる

なんという種類の子犬か分からない
僕の苦手なブルドックかな

確かめようと目が合ってしまったら
連れて帰りたくなりそうなので

やはりただの新聞紙が丸められて風に揺れてるだけさと
思うことにしました

朝は忙しいものらしいし

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祭りの後


ウサギ小屋は綺麗に片付けられ

ここが前は何の部屋だったのか分からないほどに
綺麗にされてしまったのに

満月の夜には
いまだにウサギが迷い込んでくる

その部屋から匂う 毎日が祭りだったにぎやかさを

祭りだったというなら その後の静けさをも華やかにと

誰が作るのか 

抜かれずに残るコスモスの造花たち

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逃げる


道端に布のオムツが落ちてる 少し向こうには当て布が落ちてて

その向こうには小さい子達が遊んでるけれど 布オムツ世代ではないので彼らのではないのが分かる

足元をみると昼下がりの自分の影は 小さい子の背丈分の影

振り返ると包丁を持った男が追いかけてくる

目の前の信号が中々青に変わらないのを知ってるようだし 体育館の教壇はこんなところにないし
オムツをして当たり前の僕はそんな隠れる所もまだ知らない

でもいつもここで美味しそうなうどんの匂いがしては その男は優しい大人にもどってゆく

そんな昔を思いださせるような落し物には 避けて通ろうにも化かす魔力がある

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親父の時計


腕時計なので静かです

親父がしてた時計です

何も語ってくれないのに
聞こえてきそうな歳になりました

夏の海には持っていけません

音が聞こえないのでは
時計をしてるのかさえ 分からないほどにまぶしく

身近なことまでが かき消されてしまいそう

せめて 手首に伝われ

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