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11ページ top 10ページ 9ページ 8ページ 7ページ 6ページ 5ページ 4ページ 3ページ 2ページ 1ページ 朝露 目標 可哀想な自転車 そんなストーリーでも 薔薇の妖力 ブリ大根 不思議な地図 右手袋 朝露 雪虫 親鳥の教え 休憩所 子犬 祭りの後 逃げる 親父の時計 |
朝露 大きな朝露が光に輝いて 新種のテントウムシみたいだ 近づき過ぎないように 光の向きに逆らわないように この一粒の単位は絵心のため 花についた朝露にも絵心が 優しくいいあてる言葉をさがす人たちを 一粒の朝露の中に写せるのだから ____________________ 目標 大きな木も小さい木も 今 目標とされてるらしい この森の木でどれだけの船が作れるのかとか この森の木でどれだけの焚き火が出来るのかとか そんな話じゃないんだと分かってからの森の木たちは 目標に選ぶ 太い木や細い木では 違いがあるのかを知りたがる きのうも今日も訪れる「がんばる人」へ 「どこでもイスの代わりにしていいのさ」感性を そ〜っと 差し上げたようです ____________________ 可哀想な自転車 生い茂る草達がとっても 頼りがいのある存在に見えて 受けとめて欲しかったのに 失敗しちゃってって 思いたがってる 捨てられたとは思いたくない自転車 ____________________ そんなストーリーでも こんな時期の笹の葉を品定めしてる方は いい人に違いないのに 僕が横を通り過ぎるまで気を抜けないでる でもそんな事をしても家の庭の木に花の咲かないのは変わらない 枝のいたるところにカラフルな洗濯バサミをはさんでも 花にはみえない でも そのにぎやかさに雪虫が部屋の中に迷い込む ご招待したような気持ちでいると また来てもらえるんだって そんなストーリーでもと 声を掛けようとすれば 逃げてしまいそうな人だな でも微笑んでくれそうな人のようで ____________________ 薔薇の妖力 喫茶店でくつろぐ 薔薇といってもいろいろあるんだ 匂いもいろいろなんだろうか 今度はカメラも持っていきたい 氷なんて珍しいのに氷砂糖で化かされたかな コーヒーに付く お水の中に ほのかに疑心 まだ妖しい世界から解けていない お店の女給さんも和服に白いエプロン 赤い薔薇色の足袋 いやいや まだ解けていない薔薇の妖力 薔薇園から近い喫茶店では よくある時空のゆがみなのかもしれない ____________________ ブリ大根 妻の作るブリ大根 煮魚は苦手でもブリ大根の名前は気に入ってて ブリ大根に虹がでる そんな素敵な詩をみつけたことがある 妻にいうと きっと一軒家で窓があって 光の差し込む台所なのね ブリって光り物だし うぉ〜 一気に来た 大きなブリ一切れと大根が 今日は3切れ入ってる ____________________ 不思議な地図 僕はとっても小さく それでも目の前の岩を登りたい 頂上から目の前に広がる景色と 地図を見くらべては 今登ったこの岩は実は 小石なのかもしれないって 思わせられる とっても不思議な地図 ビルの合間に地図に書かれた池や川が見える この地図と僕は今ひとつの時代を共有していて 内緒だけれど この地図は氷河期以前の文明の記録なんだとおもう こんなにも保存状態の素敵な景色に この辺では氷河も優しく流れたのかもしれないねと 地図上の池や川を指でなぞってみては もとは 地図はそのためにあったもののような気もする ____________________ 右手袋 左の手袋は見つかるのに いつも右だけなくなるんです 今日はどうにでも右の手袋をした僕を待ちます あ〜 思いだす 前に何度も見てはざんげの気持ちになったところ 左手にだけ手袋をした僕だけが1人 その景色の中にいるのだけれど寂しい 叫ぶと空から僕が複写されて落ちてくる 何枚も何枚も 左手に手袋をした僕だけが落ちてくる いつまで待てばいいのか 両手に手袋がそろわないと 今日だって この素敵な景色を形作るパズルの一箇所にだけでも 訪ねて行こうにも行けそうにない ____________________ 朝露 朝 水滴をまとう虫や草花 感覚が鈍く 思考も鈍く 朝露と雨の違いに 惑わされたりもするだろうに 今は ただ ねんごろり ____________________ 雪虫 雪虫は白く 降るのではなく漂う そっとかざした手のひらにも舞い落ちるけれど 何かに触れると潰れ死んでしまう もっと大きければ虫かごに入れて 鍛えてあげるのにと 男の子達がそのもろさにはがゆそう 白い 雪のよう 雪に舞い降りる夢をみながらも 雪に出会う前の 初雪の便り ____________________ 親鳥の教え 鳥が とまり木を探してるけれど あたりは木の1本も生えない草原 そんな時には自分の心の中に帰りなさいと 母鳥に教わった 舞い降りたところが心の隅っこ そう 木はないながらも 心の落ち着けるところ 不確かと言う人がいるかもしれないけれど 季節など関係のない胸のうち 解けもせず 壊れもせず 受け入れて 揺すられても 気持ちよく たなびく ____________________ 休憩所 外の気温以上に着込んでは暑いので脱ぎたいけれど 道のいたるところに休憩所はなく ほてってはボタンを開け 手袋を脱いで 暑い時には顔を上向きに上げるもんなんだ せめてリュックに入れたいけれど それでは旅人に出会った時に見透かされてしまうかもしれない 旅人がこの道を選ぶなら やはり休憩所は必要で そこから家に戻る人もいれば 旅人に心変わりする通勤中の人もあり その全ては人生を知り尽くした管理人の語りの思惑通りに進む 見送る者の言葉をどれだけ知ってるかを 聞いてみたいものだけれど 今日も満足して帰ってゆく管理人は いつも大きな大きなリュックを背負って歩く ____________________ 子犬 小さい頃に丸めて捨てた新聞紙が 今ごろやっと子犬になったような小雨降る朝 横目でみると その子犬が横断歩道の脇にいる なんという種類の子犬か分からない 僕の苦手なブルドックかな 確かめようと目が合ってしまったら 連れて帰りたくなりそうなので やはりただの新聞紙が丸められて風に揺れてるだけさと 思うことにしました 朝は忙しいものらしいし ____________________ 祭りの後 ウサギ小屋は綺麗に片付けられ ここが前は何の部屋だったのか分からないほどに 綺麗にされてしまったのに 満月の夜には いまだにウサギが迷い込んでくる その部屋から匂う 毎日が祭りだったにぎやかさを 祭りだったというなら その後の静けさをも華やかにと 誰が作るのか 抜かれずに残るコスモスの造花たち ____________________ 逃げる 道端に布のオムツが落ちてる 少し向こうには当て布が落ちてて その向こうには小さい子達が遊んでるけれど 布オムツ世代ではないので彼らのではないのが分かる 足元をみると昼下がりの自分の影は 小さい子の背丈分の影 振り返ると包丁を持った男が追いかけてくる 目の前の信号が中々青に変わらないのを知ってるようだし 体育館の教壇はこんなところにないし オムツをして当たり前の僕はそんな隠れる所もまだ知らない でもいつもここで美味しそうなうどんの匂いがしては その男は優しい大人にもどってゆく そんな昔を思いださせるような落し物には 避けて通ろうにも化かす魔力がある ____________________ 親父の時計 腕時計なので静かです 親父がしてた時計です 何も語ってくれないのに 聞こえてきそうな歳になりました 夏の海には持っていけません 音が聞こえないのでは 時計をしてるのかさえ 分からないほどにまぶしく 身近なことまでが かき消されてしまいそう せめて 手首に伝われ ____________________ 11ページ top 10ページ 9ページ 8ページ 7ページ 6ページ 5ページ 4ページ 3ページ 2ページ 1ページ |
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