2012年2月18日 板倉弘実
済州島、友好・連帯のつどいニュース NO・35
韓国にも「三寒四温」という言葉がありますが、今年は「温の日」がないようです。

3年前。私が、初めて済州、カンジョン村を訪れた時。
「騙し打的用地収用」も済んでいて、基地敷地の海岸にも、村の集会所にも人影がなくて、家々の屋根に「海軍基地必死反対!」の旗が翻っては他いました。
その後、2回、30人ほどの海岸線での反対集会に参加して、連帯のあいさつをしましたが、村人のたたかいが、強大な権力に勝つ可能性を信じることはできませんでした。
昨年10月初め。2回目の「遊ぼう!遊ぼう! カンジョン文化祭」に参加して、雰囲気が一変していることを感じました。
弾圧を避けて、政治色を消した文化祭。
活動経験のない村の大人と子ども、平和・人権・環境・宗教団体などの活動家、道議会議員、国会議員など、2,000名が夜を徹して歌い、踊り、奏で、朗読し、演技し…
済州海軍基地建設反対の感情を結集する!

野党5党による対策委員会がつくられ、動き出して。
「政治圏」が、「基地建設再検討」を求めました。
この段階でも、私には、政治圏の主流が「時に、軍艦が寄港することがある《観光美港》」の線で、たたかいを収めようとしているように見えて、クロンビの海がコンクリ−トで固められてしまう。「美しい海を子孫に残したいカンジョン村民の願いは?」などと、悲観的な気もちに陥り、対策委員の人たちに、「たとえ基地がつくられてしまっても、平和の村づくりを」などと、話したりしていました。
交互に入獄していて、いっしょには会えなかった、姜東均村会長、高権一対策委員長、高由貴済州海軍基地阻止と平和の島を実現する汎道民委員会共同執行委員長との三人と会食する機会があって、私は、自分の「敗北主義」に気づきました。
 活動経験のない姜東均会長と高対策委員長を支え導く、若い常任活動家任の高由貴委員長の三人の絶妙なチーム・ワ−クと、勝利への展望を持つ楽天性に私は魅せられました。
獄中、「尊敬されなくてもよい。早く、ミカン畑の手入れをしたい」と語った姜東均さん。
母親の世話をするために村に戻った高権一さん。
「平和の論理ではない。カンジョン村人の苦痛への共感、ある種の憐憫の情が私の活動力の源」と語る高由貴さん。
「三人の男」の人間性にも、強く魅かれます。
16日。最大野党の民主統合党の選挙公約に、カンジョン村民の願いが反映されるようになりました。
村民の頑強なたたかいが、「政治家の思惑」を変化させます。
当初、私は、「孤立した」カンジョン村民のたたかいを支援、激励したいすと思っていました。
今は、独裁政権打倒以後20年に満たない韓国・済州島の平和のたたかいの質の高さの原因を学びたいと思っています。

先年。米国産牛肉輸入反対100万人蝋燭集会で窮地に追いこまれた李明博政権が、この闘争のきっかけとなる報道をしたMBC TVの社長を交代させるなどの報復をしました。
1月30日。MBC労組が、「社長の退陣」「政府寄りの報道改善」を要求して、全面ストライキに突入し、今日で20日になります。
昨年末。低米価に抗議する農民が、ソウル市内の路上に米を撒きました。
一部の韓国人が、ニュ−・ファシストと呼ぶ李明博政権が終って、平和、統一、民主のたたかいが奔流となりそうな気配を感じています。
ニュヨ−ク・タイムズが、特派員を派遣してカンジョンの農民を紹介したりしています。
日本では済州海軍基地問を知って、関心を持ち続けている人は、数百人?
済州海軍基地の話を聞いてくださる機会をつくっていただきたいと思います。
よろしく、お願いします。
2/18 板倉弘実


済州海軍基地、総選挙(4/11)を主要舞台に
「全面白紙化」=統合進歩党、「全面再検討」=民主統合党
「使い残し予算」で工事継続強行―海軍、異常な行動

 国会が、海軍が要求した海軍基地関連予算の94%を削減(工事費は全額削除。陸上設計費と補償費だけを承認)し、国務総理室内につくられた「民軍複合型観光美港技術検証委員会」が、設計図では、国防部が宣伝してきた大型クル−ズ船の入出港が不可能であることを認めた。
 国会の予算大幅削減、政府の設計図誤謬承認は、「政治圏」が、工事一時中断、計画の再検討に入ったことを意味する。
 昨年末。統合進歩党が、「済州海軍基地の全面白紙化」を公約し、民主党に総選挙での「共同行動」を呼びかけた。
 2月16日。民主統合党が記者会見を開いて、「済州海軍基地の全面再検討、工事中断」を総選挙の公約にすることを明らかにした。
 同日。ハンギョレ新聞が、両党を含む進歩派野党の「共同」「候補野単一化」を求める社説を発表した。

 このような状況下で、海軍が「工事妨害で使い残した予算」を使って工事を継続し、抗議する市民を逮捕しつづけている。現在までの逮捕者197名(カンジョン村の人口、1,900名)の多くは、「覆面をした事業体の人夫人が捕らえ、検察に引き渡したものだ」と言う。
 海軍軍人による市民暴行も繰り返されている。
 ―陸軍士官学校出の、シン・クボム前道知事が「海軍基地建設は、安保を口実にして、軍内部での自分たちの勢力の拡張と利益を得ようとする海軍の、身体を肥らせようとすする事業に過ぎない」と叱咤しています。(『カンジョン村民が、国民の皆様に心から訴えます』)

《漢拏日報、2011/2/14》
引き続く済州海軍基地不法逮捕に数億ウォンの賠償、責任を問う
カンジョン村会、警察などを相手に民事訴訟を辞さず

(抄訳)
 13日。カンジョン村会が記者会見を開いて、不法逮捕をした警察と工事関係者及びそれを指示した関係者を相手にして、不法行為に対する損害賠償請求訴訟を起こすことを明らかにした。カンジョン村会によれば、昨年から今日までに、村民と活動家、197名が逮捕、連行された。
 特に、警察が現行犯逮捕し、連行した者の大部分は、工事場の人夫が逮捕して警察に引き渡したものだと主張した。さらに、不法逮捕に関係した者たちの氏名、住所などを公開することを要求し、これが拒否された場合には、西帰浦警察署長と基地事業団長を告訴する計画だ。
 カンジョン村会は、警察が今のように公権力を乱用し、恣意的な逮捕を継続し、クロンビの岩の爆破を許可するなど、海軍の立場だけに立って法を執行したら、刑事告発と検察抗告、行政申請など、法的に可能なあらゆる手段を動員して、必ず、不法逮捕をした警察官が刑事処罰を受けるようにすると主張した。これと同時に、カンジョン村会は、西帰浦警察署長が、公有の水面であるクロンビの岩への出入りを軽犯罪処分し、連行したことに対して公開質疑書を提出し、答弁を要求した。
 カンジョン村会は、「クロンビの岩は、公有の水面だから、法的に済州道知事に管理権がある。
道知事が、法的な根拠と適法な手続きによって出入禁止の処置をとっていないのだから、この地域を出入り禁止区域と見ることはできない」と語った。

憲法記念日(5/3)前後、済州島訪問へ
飯田市の講演会の後、「済州島平和旅」への希望が寄せられてすます。 


「憲法9条の精神で、韓米安保条約を考える」済州海軍基地…
43名が参加、「平和のための信州・戦争展飯伊講演会」
講演・「松代そして済州島のこと」−日本・韓国の基地問題ヲ考える
講師 板倉弘実氏(元長野高教組書記長・長野市川中島在住)
日時=2012年2月11日 場所=飯田市松尾公民館2F講座室 

講演要旨。
 独裁政権下の韓国では、平和を口にすることも、日本の民衆と交流すること許されなかった。
 1987年。六月抗争で軍事政権が倒され、1993年、最初の文民政権が樹立された。
 1998年。金大中政権は、平和、民主、統一、日韓両国の民衆の交流をすすめた。
 血を流す闘争で独裁政権を打倒し、自信と誇りを取り戻した民衆が、積極的に過去史を学び始め、済州島に残された日本軍遺跡、米占領軍の南北分断政権に反対したてたたかった済州4・3事件の真相を明らかにする取り組みを始めた。
 1998年。フィリピンの米軍基基地が撤去された頃、韓国国防省内に、「北主敵論による沿岸海軍」から、「対中国の大洋海軍」に転換しようとする方向が表れ、2002年、「本土よりは中国の放送電波がよく入る和順村を海軍基地建設候補地にしたが、住民野反対で挫折した。
 2007年。海軍が不法、不適切な手続きで、カンジョン村を済州海軍基地建設地に決めた。
 「美しい海を子孫に残したい」カンジョン村民が、済州海軍基地反対対策委員会をつくって、「ハワイ、グワム、沖縄と連帯してたたかおう」と呼びかけている。これは基地の苦痛を他に転嫁しようとするのではなくて、西太平洋に展開する米軍戦略と対峙するものになっている。
 延坪島砲撃事件後、国防部・政権の「北憎悪」「軍備増強」「力による安保論」が強調される中で、カンジョン対策委員会が、「対話による安保論(日本国憲法の平和の理念に通ずる)」を主張し、韓米安保条約を公然と批判している。カンジョンのたたかいは、「日本国憲法9条の精神で、韓米安保条約を考える」ものになりつつある。
 独裁政権打倒後、20年。日韓両国の平和を求める市民の連帯・共同が奔流となりつつある。

 【寄せられた感想文】
・報道されていない韓国の基地問題を知ることができて、大変よかった。もっと、時間が欲しかった。(女、70代)
・隣の国のことなのに、何も知らない。小さな視野で見ていたら、目の前のことさえ分からなく  なるところでした。こういう学習会をもっとしないといけないと思いました。(女、50代) 
・お隣りの国の事をいかに知らないかをつきつけられながら、お話しを聞いていました。振り返ってみれば、自分の国の歴史も知らないということです。知ろうとしない、知りたくな い自分がいるのです。(?)
・朝鮮戦争と同時に進行した済州4・3事件のことがよくわかりました。(女、40代)
・「歴史と取り組みを学ぶ」ことから「歴史と取り組みから学ぶ」という掘り下げた関心をもっと持たなければいけないと感じました。(男、40代)
・「活動家でない中心人物の論理」は学ぶべきものだ。観光地というイメ−ジしかない済州島の近、現代史は、心を高ぶらせてくれました。(男、60代)
・私の知識ではついていけないことがありましたが、海軍基地のことになってから、びっくりすることの連続で、胸をつかまれる思いでした。「ハワイ、グワム、沖縄と連帯してたたかおう!」は、なんとすごい視点でしょうか。涙が出てたまりません。(女、60代)
・板倉さんの言葉は、熱意に満ちており、心の底に深く沁み入りました。隣国で起きていることは日本にも大きな影響を及ぼします。済州島へはまだ行ったことがないが、ぜひ、一度訪れ実情を知りたい。1年に、1〜2回、講演会、映画会を開いて学習しなければならない。(男、70代)
・沖縄問題、基地問題が前にすすまないのは、日米安保約が消えてしまっているため。みんなで学習して、安保反対の旗を揚げるべきだと思います。(男、60代)
・現在、まさに平和を築くためにたたかって人たちのことを知り、応援し、連帯していきたいと思いました。(女、50代)


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