海軍基地に共感してきた済州道知事が、何故、背を向けたか?

【済州CBS イ・イン記者】
済州海軍基地は国策事業だからと、その必要性を認めてきたウ・グンミン済州道知事が、今は、工事停止命令を予告し、政府と対立の角を立てて政府の無視と「約束変更」が、知事をまったく別の道に追いやったとする分析がある。     

ウ・グンミン知事は、2010年7月に就任してから機会があるたびに、政府と道民に、「Win Winkの方向」で、基地問題の解決をはかる方針を明らかにしてきた。

国策事業である海軍基地建設を受け入れるかわりに、基地予定地の西帰浦市カンジョン村などの地域発展も極大化しなければならないというのが、Win Win解決法の主な内容だ。

民軍複合型観光美港、すなわち、李明博大統領の選挙公約でもある「15万トン級クルーズ船の自由な出入港が保障される港の建設」にしがみつくようにしてきたのだ。

けれども政府は、ウ知事の切迫感は異なり、建設済州海軍基地建設だけに「オール・イン(すべてを賭ける)」してきたように見える 。

李明博大統領が2月、就任4周年の記者会見で、「民軍複合港」に触れることなく、「済州海軍基地」建設の必要性だけを強調し、加えて、キム・ファンシク国務総理が「来ることもないクルーズ船のことだけで、不必要な論難ばかりしている」式の発言に合わせて「予算の乱費だと批判する声もある」とまで言った。

挙句の果てに、キム・ミンソ国防部代弁人が8日、或るラジオ放送に出演して、「済州道の基地は、明らかに海軍基地だ。国防部が9,700億ウォンの予算を投入してつくる海軍基地だ」と主張した後、「ただ、海軍基地建設にあわせて、クルーズ船も繋留できるようにするだけだ」と主張した。

ここまで来ると、「李明博政府になってから、民軍複合型観光美港は消えてしまって、海軍基地だけが推進されている」とする反対活動家たちの主張が説得力を持つと言える。

大統領と国務総理の立場に対しても沈黙してきた済州道は、国防部の代弁人の発言があると9日、異例的な反駁材料を取り出して、項目ごとに批判した。

済州道はまず、「2008年9月11日に、政府は、国務総理が主催した国家政策調整会議を通して、世界的な民軍複合型観光美港として建設することに決定した」を浮上させた。

続けて、「2009年4月27日、国防部長官と国土海洋部長官、済州道知事などが締結した基本契約書でも、民軍複合型観光美港を明確にしている。15万トン規模のクルーズ船が出入港できる民軍複合型観光美港建設を政府が直接、国民に発表し、道民に約束した事業だ」と強調した。

済州道は特に、「国防部が、民軍複合型観光美港という国家政策と食い違う発表をしたのだから、代弁人の発言が間違っていたとしたら、それに対して、国防部がきちんとした立場を明らかにすべきだ」と主張した。

ウ知事が政府に背を向けた決定的な理由も、まさに、15万トン級クルーズ船の出入港の問題だ。

済州道は、港湾旋回場の直径と港路安全性の問題を粘り強く指摘してきた。

結局、国会の予算決算特別委員会の勧告に従って、1月26日、国務総理室の技術検証委員会が構成され、20日余後の2月14日に活動結果報告書が採択された。

核心は、「風速と横風圧面積などの基準を正しく適用して、シミュレーションをもう一度しなさい」ということだ。

政府は、2月29日、国家政策調整会議を通して、「国防部が、去年の12月から今年の2月まで、シミュレーションをした結果、クルーズ船の出入港に問題がないという結論が出た」として、海軍基地建設を強行することを公式に発表した。

けれども、シミュレーションの過程で、済州道が推薦した専門家が排除されたので、済州道は「時期からみて、国務総理室の技術検証委員会の意見が反映されたかどうか疑問だ」と反発している。

工事強行発表の一日前にも、政府に公文を提出してこのような趣旨を伝えていた済州道は、5日、ウ・グンミン知事とオ・チュンジン道議会議長、セヌリ党と統合党の済州道支部委員長の4人の共同記者会見を開いて、「済州道と海軍がいっしょに参加するシミュレーションをもう一度実施しよう」と主張した。

また、「追加シミュレーションの結果、何らの問題がないという結論が出たら、カンジョン村を説得して、民軍複合型観光美港建設についての住民総会を開くようにしよう」と提案した。

けれども政府は、「一言の下に」拒絶して、7日には、クロンビ岩の爆破を始めるなど、済州道の要求を一顧だにせず、本格的な工事に突入した。

済州道と道議会、地域政治圏の意見を完全に黙殺することで、地方自治団体長のウ・グンミン知事は、小さくない傷を負った。

結局、済州道は、クロンビの岩の爆破が始まった7日、公有水面埋め立て工事停止命令を海軍に予告し、来たる20日、聴聞の手続きに応ずるように要求した。

「政府が最近、海軍基地の港内の西側の突出型埠頭を、固定式から可変式に変更したこと」を明らかにしたことを聞いて、「公有水面埋め立て工事を、当初の計画と異なる方式で進めることになるので、工事を停止することが不可避だ」というのが、済州道の判断だ。

済州道は、海軍が聴聞に応じなかったり、弁明が不足だった場合は、即時、工事停止命令を出す計画だ。

「国策事業である海軍基地に反対しない」としてきたウ・グンミン知事が、今は、政府と明らかに対立する角を立てている。

彼を全く違う道に追いやった政府の一方的な行動が、葛藤を大きくしているのだ.

翻訳 板倉弘実


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