済州島レポート 第3回 
●2011年10月29日
 10月29日(土)に韓国の済州島で、海軍海軍基地建設の白紙撤回を求める第5回目の全国市民行動が行われました。この行動に参加するために、私は10月27日から31日までの5日間、済州島を訪れました。済州島訪問と市民集会への参加は、9月2日から5日、9月30日から10月4日に続いて3度目です。
 前回の訪問からの1か月の間に、海軍基地の建設予定地である江汀(カンジョン)村では、様々なことが起こりました。基地の建設予定地は、陸上に面した全ての境界線にフェンスが構築されていますが、支援の学生団体やカトリック教の司祭団が、たびたびフェンスを超えて建設予定地に進入して抗議行動を行い、警察に逮捕されています。宗教家のソン・カンホさんは、祈祷のために、泳いでクロムビ岩(溶岩でできた1枚岩)に渡っていましたが、海軍海難救助隊(SSU)から暴行を受けました。
 10月6日には海軍が、クロムビを破壊するための試験発破を行いました。その際に、ゴムボートを出して監視行動を行っていた人々が警察に捕まり、連行されています。
 また工事現場の正面入り口では、工事車両の進入を止めようとする人々と、警察・海軍との間での衝突が、頻繁に起きています。
 今回の全国市民行動は、こうした状況の中で開かれました。以下に集会当日の様子を、写真レポートで掲載します。

●工事現場の正面入口です。生コン車両やユンボなどの工事車両が、頻繁に出入りしています。


●工事業者が、フェンスの上部に有刺鉄線を張っていました。反対派の進入を防止するためでしょうか。


●海側から見た基地建設予定地です。重機による整地作業が進んでいるようです。手前の灰色の部分がが、1枚の溶岩石でできたクロムビです。クロムビは韓国でも、済州島だけに見られる独特なものです。この場所のクロムビは、幅が800メートル以上ある島最大のもので、自然の遺産としても大きな価値があります。このクロムビを守ることが、基地反対派住民たちの共通の思いになっています。向こう側に見えるドームは、ワールドカップ・サッカースタジアムです。


●赤い旗が立っているところが整地作業の為の発破(爆破)予定地です。海軍と業者は試験発破を実施しましたが、本格的な発破は未だです。建設現場での発破の許認可は警察が持っているそうで、海軍・業者側からの発破申請を過去2回は不許可にしたそうです。しかし、3回目は許可すると見られています。発破を阻止することが、反対運動の大きなポイントになっているようです。




●毎朝11時から、工事現場の正門前で、カトリックの司祭と信者によるミサが開かれています。


●カトリックの司祭たちは、正門前でピケットを張り、あるいは車両によじ登って、工事車両の出入りに抗議してきました。そのため司祭たちと警察との間で、「ミサ中は車両を出入りさせない」という合意が成立したようです。しかしこの日は、ミサが始まっても工事車両の出入りが続きました。そこでムン神父は、車両の前に立ちはだかって抗議を始めました。数分後、警察は神父の抗議を聞き入れ、工事業者に命じて車両を止め、正門を閉じさせました。


●ミサの後に、百拝(ベクペ)が始まりました。ミサだけでは40分くらいで終わってしまいますが、その後にお祈りをすることで、少しでも長く車両を止めておこうとしています。
 百拝は韓国の伝統的なお祈りの方法で、カトリックの習慣ではないそうです。しかし宗教を超えて、皆でできるお祈りとして、活動家などにも受け入れられているようです(もとが仏教の儀式なのか儒教の儀式なのか、あるいは他の儀式なのかは、誰も知りませんでした)。
 ただしこの場所での百拝は、100回ではなく、キリスト教で奇跡を示す数字の153回行われていました。


●フェンスの前に立つムン神父。




●3時からは、済州(チェジュ)市役所前で、集会が開催されました。ここは市役所前のバス停留所なのですが、カンジョン村の状況を解説する大きなポスターがたくさん貼り出されました。


●路上にも、様々な宣伝ブースが出ています。


●フェイス・ペイントをしてもらう女の子。


●こちらの男の子は、お面に絵を書いています。


●こちらでは、メッセージボードに、お絵かきです。


●横断幕にメッセージを描いている彼女は、高校生のようでした。小さな子どもや中高校生、道行く買い物客などが、足を止めてブースをのぞき込み、また集会場での音楽や踊りを見ていました。


●道路の反対側で、警備に当たる警察官。彼らはソウルなどからきています。


●チェジュ島で、これだけ警察が揃うことはあまりないのか、市民も当惑ぎみです。


●警察に抗議する、ムン神父。





●「二ムのための行進曲」の合唱で集会が始まりました。


●音楽、メッセージ紹介、アピールなどが続きます。


●カンジョン村のおばさんたちです。貸切バスで、みんな一緒にやってきました。





●あいにくと雨が降り始めました。しかし集会は続行します。こちらは、民主労働党・進歩新党・民主党などの代表者たちです。


●雨の中、チェジュ市の繁華街を一周するデモ行進に出発しました。参加者は1000人くらいです。


●カンジョン村の女性たち。





デモ行進のスローガンは「海軍基地 決死反対」「クロムビ あいしてる」です。



●チェジュ市での集会とデモを終えてカンジョンに戻ってくると、ちょうど「平和巡礼」の3人が帰ってきたところでした。3人は10月19日にカンジョン村を出発、10日間かけてチェジュ島内を一周しながら、基地建設撤回を訴えてきました。


●8時からは基地建設現場のとなりで、キャンドル集会を行いました。最初に登場したのは、クロムビ舞踊団です。


●ミュージシャンの演奏や踊りが続きます。


●参加者は、村の人たちや、全国からの支援者など、300人くらいでした。


●女の子2人と男の子1人、そろいの制服を着ていました。高校生くらいでしょうか。熱心に話を聞いていました。


●同じ日、カンジョン村に隣接するホテルでは、日本と韓国の市民運動団体が歴史教科書問題についてのシンポジウムを開催しており、平和フォーラムからも事務局長の藤本泰成さんが参加しました。
 夜の集会には、シンポジウムの参加者も合流。藤本さんは「韓国と日本の市民の力で基地を無くして東アジアの平和を作ろう」と訴えました。
 
 その2に続く・・・かな?

 文・写真ともに八木隆次

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