【状況説明】2012年3月31日の韓国政府による入国拒否に関して

2012年4月4日
八木隆次


 皆さん、こんんちは。八木隆次です。
 私は3月31日、朝9時45分成田発〜12時20分済州島着の大韓航空機で、韓国に入国しようとしました。しかし済州島の出入国管理局によって入国を拒否され、同日午後6時10分済州島発の便で強制退去させられました。
 この間、私が韓国に入国できるように、各所に連絡を取り、また行動を起こしてくださった、韓国・沖縄・日本の友人の皆さんに感謝します。 また現時点で分かった事項を報告いたします。なお情勢に鑑み、関係者の実名は控えさせていただきます。

 韓国済州島では、3月31日に「第10次全国市民行動・平和文化祭」が、4月1日に「民主労総の集中訪問」が、4月3日には「4・3事件の追悼集会」や、「キリスト教団体の集中訪問」などが予定されていました。私はこれらの行事に参加し、またその情報をインターネットなどで公開することを目的として、3月31日に出国し、4月4日に帰国する予定でした。
 成田を出発した大韓航空機は、12時15分に済州空港に到着しました。出入国管理局の窓口でパスポートを提示し、指紋と顔写真の認証を行ったところ、窓口担当者の女性職員が別の男性職員を呼び、その男性職員に促されて別室へ入りました。その部屋で再度パスポートを確認し、指紋と顔写真の認証を行った上で、「あなたは規制者リストに掲載されている。入国することはできない。午後便で帰国するように」と告げられました。理由を尋ねましたが「ここでは分からない。帰国後に駐日韓国領事館に問い合わせて欲しい」とのことでした。
 別の男性が現れて(後でわかりましたが、この男性は大韓航空の職員だったようです)、さらに別室へ案内されました。しかしその部屋は、ガラス張りではあるものの、外からカギがかけられる部屋であったために入室を拒否し、空港到着階ロビーにある喫煙室に入り座り込みました。
 この時点で、日本・沖縄・済州島在住者などの知人に、入国を拒否されたことを伝えるとともに、どのように対処したらよいのかの助言を求めました。こうした連絡によって、3人の方が、済州空港に駆けつけてくれることになりました。
 数分後に、喫煙室に入管職員と大韓航空の職員で日本語の話せる女性がやってきました。女性の通訳を通して入管職員から、私の職業を聞かれたので、「平和フォーラム」の職員であることを伝えました。また入国拒否理由を明らかにすること、入国を許可すること、入国できない場合は、帰国予定日である4月4日まで空港にいる意思であることを告げました。
 大韓航空の判断か入管の判断かはわかりませんが、鍵のかかる部屋に入れるのではなく、出国ロビーに行くようにとの指示があり、出国ロビーに移動しました。幸いそこには、フリーのPCが数台あったので、その中の1台のブロードバンド回線を自分のノートPCに接続し、済州島支援のフェイスブックなどに、状況を投稿しました。
 なお大韓航空の女性職員は、私の身柄を心配し、いろいろと助けてくれました。彼女にも大変感謝をしています。
 この間、私の横には、大韓航空または済州島空港の所属と思われる警備員の男性が1人付きましたが、行動を制限されることはありませんでした。空港に駆けつけてくれた方々と電話で連絡を取り合い、その人たちが入管と交渉してくれていること、駐韓日本領事館に連絡してくれていることを知りました。また入国拒否に対する「異議申請を行っては?」という助言をいただき、その旨を入管側に伝えましたが、入国拒否は異議申請の対象にはならないとの回答でした。

 こうして比較的自由な時間が過ぎて行きましたが、5時30分頃、入管の男性職員5〜6名がやってきて、「あなたが飛行機に乗らないというのなら、私たちが強制的に乗せる」と宣告しました。
 私は再度、入国拒否の理由を尋ねましたが、入管に対して私のリストを送ってきたのは他の部局であり、分からないとのことでした。またこれは韓国の主権の問題であり、韓国には入国拒否の権利があると言いました。私の入国を拒否した他の部署はどこかと尋ねましたが、話すことはできないとの回答でした。
 入管担当者の日本語では、今一つ不明な所があるために、日本語の通訳をしてもらおうと、空港に来ている済州島の知人に電話をかけ、入管担当者と話してもらおうとしました。しかし入管担当者はそれを拒否しました。また名前を尋ねても答えませんでした。
 このまま空港のロビーで暴力沙汰になるのは得策ではなく、また強制的に機内に運ばれた場合には、カメラやPCなどの携行品がどうなるかの心配もあり、やむなく荷物をまとめて帰国便に登場しました。
 私が空港ロビーにいる間、韓国人の友人は、空港内でプラカードを掲げて抗議行動を行ってくれたようです。そのことは帰国後、韓国のニュースサイトで知りました。

 翌日の日曜日には、支援してくれた方々にお礼のメールや電話をするとともに、今後についての相談をしました。そして4月2日の月曜日、韓国領事館に対して、入国拒否の理由を尋ねる電話を入れました。電話に出てくれた女性の職員さんは、大変丁寧に対応してくれました。その方にも非常に感謝しています。
 まず私から、入国拒否にあったこと、済州空港の入管職員は「理由は領事館に聞くように」と言ったことを告げました。
 それに対して女性職員は、「通常は空港で入管職員が直接、本人に理由を伝えることになっている。そうした相談が領事館に来るのは稀である」と言いました。また領事館は対外通商部の部局であり、出入国管理局は法務部の部局であるために、入国拒否の理由などは分からないとのことでした。しかしその女性職員は、調べられるだけ調べますとのことで、折り返し電話くださる約束をしてくれました。
 しばらくした後に、領事館から電話がありました。話をまとめると、以下の通りです。
 「八木さんの入国拒否理由は、『韓国の利益・公安を害する行為を行う恐れがある』ということです。入国拒否者のリスト作成は法務大臣に権限があり、過去に犯罪歴や不法就労歴がある場合以外でも、リストに載せることは可能です。いつリストから外されるかは、韓国に行って入国審査を受けてみないと分かりません。また事前にビザ申請を行ってビザを得たとしても、入管で拒否される場合があります。韓国内には『外国人総合案内センター』があり、韓国の友人から、そこに相談してもらってはどうでしょうか」ということでした。

 カンジョン村からの情報を伝えるブログなどによれば、昨年も済州空港から入国しようとした日本人が入国拒否にあっています。3月に入ってからは、アメリカの反戦帰還兵の会の関係者が入国拒否を受け、またカンジョン村に住んで村民の運動を国際的に発信してきた外国人の活動家も、国外退去処分を受けています。韓国政府の海外の活動家に対する入国拒否者リストが拡大しているものと思われます。私は、こうしたリストが今後も拡大されることを懸念します。また海外からの目が届かなくなった時に、海軍基地建設の強行が行われることを憂慮します。
 韓国海軍は、基地建設のためにクロンビ岩の爆破を開始しました。これを阻止するために連日、村民・支援の活動家・労働組合・宗教団体などの人々が爆破現場への進入を試み、警察に阻止され、暴行を受け、逮捕されています。
 カンジョンの闘いを支援し、韓国政府に対する抗議を強める、国際的な連携が必要です。しばらく済州島を訪れることはできませんが、情報発信は続けます。みなさんもぜひ、カンジョン村への支援に協力してください。

●私の入国拒否と、韓国の友人による抗議活動を報じたニュース
韓国語のサイトですが、Yahooの翻訳サイトなどで、読むことができます。
http://www.jejudomin.co.kr/news/articleView.html?idxno=30147
http://www.jejusori.net/news/articleView.html?idxno=113391






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