Šárka
シャールカ
作曲 第1稿 ヴォーカル・スコア 1887年
第2稿 改訂 1888年
第3稿 弟子のフルブナと共に改訂 1918-19年
最終稿 本人による修正 1924-25年
初演 1925.11.11 ブルノ 指揮 フランチシェク・ノイマン
演奏時間 序曲4分 第1幕22分 第2幕20分 第3幕16分
台本 ユリウス・ゼイエル
時と場所 チェコの伝説における女傑たちの戦争の時代 ボヘミア
登場人物
シャールカ(S)
ツチラド(T)
プシェミスル(B)
ルミール(T)
女性戦士達(合唱)
男性戦士達(合唱)
あらすじ
第1幕
リビツェの城
プシェミスル王が臣下の男性戦士達に囲まれている。彼は,妻リブシェの死を嘆き,その統治の黄金時代とヴラスタ率いる女戦士達との闘いの様子を回想する。馬の近づく音が聞こえ,若い男が白い馬に乗って現れる。ツチラドの登場である。彼は流麗に王に挨拶し,一同に友好的に受け入れられる。彼は父親にプシェミスルを助けるように言われて来たという。そして,ここでソロ「私はツチラド」を歌い,自分の情況を説明する。自分は,男性軍の勝利のために,リィビツェのリブシェの墓に隠されているという,魔法の剣と盾を手に入れるために来たのだと。プシェミスルはそれを知って大いに喜び,彼を抱擁する。そして臣下達にに彼の居城であるヴィシェフラットに帰るように言う。短い合唱の後,戦士達は歌いながら舞台を去っていく。
ツチラドはひとり夜の静けさの中に取り残される。そしてリブシェの墓のところで自分の使命にとりかかろうとするが,その際,昔父に聞かされた,女性との間に生まれる愛と勇気について思いひたる。彼の夢想は,突然女性戦士達の接近する歌声によって破られる。ツチラドは勇敢にリブシェの墓に近づき,入り口を塞いでいた大きな岩をどけて納骨所に入る。黄金の祭壇にベールで覆われたリブシェの遺体が安置され,彼女は頭に金の王冠を被っている。剣と盾とを手にしたツチラドの姿が黄金の玉座に現れる。ツチラドはリブシェの私的な場所に侵入したことに対し,許しを乞うアリアを歌う。
シャールカ率いる女性軍が登場する。彼らはシャールカになぜ自分たちをここへ導いたのかを問う。シャールカは一同に墓の中についてくるように言う。まだ目の前の厳めしさに夢見心地のツチラドは,女達が来たことに気づき,リブシェの王座の後ろに身を隠す。シャールカと女達は地下納骨所に入ってくる。彼らはリブシェを見て,シャールカにもう側には近づかないよう警告する,美しいコーラスを歌う。シャールカはそれを聞かず,リブシェの王座に寄り,王冠を取ろうとする。彼女がリブシェの過去の栄光を思うとき,オペラはクライマックスに達する。その時,ツチラドが剣を振りかざしながら王座の後ろから姿を現す。シャールカは自分の武器を持って闘うが,もはや王冠を手にすることはできない。この時,死んだ筈のリブシェが起きあがり,姿を消してゆく。女性戦士達も,うろたえながら退却する。一人残されたツチラドは歌劇「イェヌーファ」のラスト・シーンに現れるテーマを題材にした美しい後奏に身を包まれながら,シャールカの美しいまなざしの虜になった自分を告白する。
第2幕
月夜の人気のない谷間。
シャールカは深く考え込んでいる。部下の女性戦士達は合唱し,彼女を元気づけるが彼女はその歌声と共に自分の不安を歌う。そして月に助けを求めるとオーケストラの響きと共に,彼女に勇気が戻ってくる。シャールカは女達に自分を樫の木に縛り付け,それぞれ近くに隠れているように頼む。歌いながら彼らは隠れ去る。たった一人になったシャールカは森のざわめき,死を予言する不吉なカラスの鳴き声,馬が近づいてくる音,そしてついにはツチラドの声を聴く。彼女はツチラドを待ち伏せしていたのである。
シャールカはツチラドに助けを求める。ツチラドがシャールカに近づくと,彼女は自分を殺して欲しいと頼む。ツチラドは縄をほどいてやり,いったい誰がこんなことをしたのかを問う。シャールカは,リブシェの墓で,王冠を手に入れる使命を遂げられなかった自分にヴラスタが腹を立て,ここに置き去りにしたのだと告白する。彼女は相手の名を問う。自分の名は,ツチラドだと答え,シャールカの死を自分は望まないので,どうか立ち上がってほしいと頼む。シャールカは,捕らえられて,ツチラドの家に連れて行かれて,彼の妻に会うくらいなら,死んだ方がいいと言う。ツチラドは自分には妻はいないので,シャールカに妻になって一緒に家に戻って欲しいと告げる。静かな愛の旋律が二人を包み,シャールカはツチラドの腕に沈む。不吉な予感のするトロンボーンが鳴り響き,ツチラドはシャールカのためになら,自分は死ぬことも辞さないと告白する。シャールカはためらう。 突然,シャールカは持っていたホルンを吹き鳴らす。それは,隠れていた女戦士達を呼ぶ合図であった。彼らは喧しく陰から飛びだしてくる。何も知らないツチラドは,シャールカをかばい,彼女を傷つけないように
彼らに嘆願する。しかし,それも束の間,ツチラドは致命的な重傷を負い,その場に倒れる。最後の別れに,震えながらツチラドは,自分の若さ,父親の悲しみ,そして何よりもシャールカの裏切りを悔いる。女達はツチラドにとどめを刺す。シャールカは取り乱し,女達に立ち去るように言い,オーケストラが1幕の後奏を奏で,彼女はツチラドのなきがらにすがって悲しみにくれる。
第3幕
菩提樹の茂る,夕闇のヴィシェフラットの中庭。
再び,プシェミスル王が,臣下の男性戦士達に囲まれている。プシェミスルが命じると,吟遊詩人のルミールと,たいまつを持ちながら棺架をかついだ一行が門を通される。それは,ツチラドの葬列であった。ルミールはツチラドが闘いに倒れた情況を歌う。男性合唱が歌いながら復讐を誓う。プシェミスルは長い悲しみの歌をを歌い始め,二人の歌に合唱が重なってゆく。その時,変装したシャールカが姿を現す。彼女はツチラドの魔法の剣と盾を使い,自らの手で門をくぐり抜けて来たのである。彼女は今や嘆きながら歌う合唱の歌に加わる。城の方から女性軍達が歌いながら後に続き,ツチラドの棺に菩提樹の枝を供える。ルミールは火葬用に積んだ薪に火をつける。その時,本当の自分の姿を現したシャールカが,観衆の驚きの中,炎の中に飛び込む。ルミールは,神の加護を祈願し,炎はツチラドとシャールカの婚姻の初夜のカーテンと変わる。居合わせたもの全員による,愛の力への讃歌が歌われ,幕は閉じられる。
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