組曲 作品3
関根 日出男(チェコ文化研究家)
1891年7月7日のオペラ『物語のはじまり』以降に完成され、じかに教えを受けたことはないが、師と仰ぎ親交のあったドヴォジャーク的色彩の濃い作品
で、当初は「セレナーデ」と呼ばれていた。「組曲」の呼称を得たのは1924年になってからで、初演も作曲者の死の43日後の1828年9月23日、現代
文化博覧会の折、バカラ指揮するプラハとブルノの両放送交響楽団の合同演奏で行われた。
第1部:コン・モート、3部形式。木管群2分音符の下降音型(譜
例1A)と、16分音符弦のせわしない対比ではじまり、クラリネット・ソロの副主題(譜例1B)は、クラリネット・ソロで提示される。冒頭の主題はオペラ
『物語の始まり』第2景で、貴族のアドルフが村娘ポルシカに「君には好きな男がいるの?」と尋ねたあとの民族舞曲についで、背景に現れる音型の引用であ
る。
第2部:アダージオ、ハ短調。オーボエとホルンのカノンではじま
る。全体はA群(譜例2A-1、2A-2、2A-3)の、3つの主題と、B主題(譜例2B)から成り、小休止をはさみA1, A2 ~ A3, A2
~ B ~ A2, A1 の順で演奏される。
なおA1主題はポリシカの歌う第14番の引用で、この主題はのちのピアノ曲集「霧の中で」、カンタータ「ソラーニュ山上のチャルターク亭」や「シンフォニ
エッタ」などで生かされている。C主題はドヴォジャークのスラヴ舞曲を連想させる。
第3部:アレグレット。これは1890年に作曲され、1891年
1月7日ブルノで初演された『ラシュスコ舞曲』(譜例3)の「祝福の踊り」の引用である。
第4部:コン・モート。主題(譜例4A)と、スラヴ舞曲風の副主
題〔譜例4B〕からなる。