Jenůfa

イェヌーファ

作曲     1894-1903年
初演     1904.1.21. ナ・ヴェヴェジー劇場
       (日本初演: 1976.12.1 東京 長門美保歌劇団公演 若杉弘指揮)
演奏時間  第1幕40分,第2幕47分,第3幕32分
台本     プライソヴァーの戯曲「彼女の継娘」による作曲者自身の台本(チェコ語)
時と場所   19世紀,モラヴィアの寒村
登場人物    

 コステルニチカ,「教会のおばさん」(Ms):
  イェヌーファの継母。ブリヤ家次男(シュテヴァの父の弟)の未亡人。その厳格な性格から村の礼拝堂の管理を任されている。
 イェヌーファ(S):コステルニチカの継娘。シュテヴァ,ラツァとは従兄妹関係。
 シュテヴァ・ブリア(T):ブリヤ家の若き当主。美男のプレーボーイでイェヌーファを妊娠させてしまう。
 ラツァ・クレメニュ(T):シュテヴァの異父兄,すなわちシュテヴァの母の連れ子にあたる。イェヌーファに恋している。
 ブリヤ家の祖母(A):ブリヤ家の祖母。目が不自由だが水車小屋の家事を司っている。  
 水車小屋の親方(Br):ラツァの親方。
 村長(B)
 村長の妻(Ms)
 カロルカ(S):村長の娘,シュテヴァの婚約者
 牧童ヤノ(S)     他

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あらすじ

第1幕

水車小屋の前。午後も遅い時間。 
 
ブリア家のおばあさんとその姪イェヌーファが,水車小屋の前で種芋をきざむ作業をしている。しかし,イェヌーファは恋人である従兄シュテヴァの徴兵審査の結果が心配で仕事が手につかない。イェヌーファは密かにシュテヴァの子を宿しているため,彼が徴兵されて未婚の母となるのを恐れているのである。ラツァはそんな彼女の様子を不満そうに眺めながら鞭を削っている。村で水車小屋(製粉所)を経営しているブリア家は裕福であるにもかかわらず,ラツァは連れ子であるため異父弟シュテヴァに比べ冷遇されており,おまけに幼馴染のイェヌーファまでシュテヴァに奪われてしまったので不満に思っている。
 
そこに牧童のヤノが駆け込んできて,イェヌーファに教わったおかげで字が読めるようになったことを喜ぶ。ラツァは町から帰ってきた水車小屋の親方にイェヌーファへの気持ちを打ち明ける。親方はシュテヴァが兵役免除になったとラツァに告げ,それを聞いたラツァは憤慨する。一方,二人の会話を小耳に挟んだイェヌーファは狂喜する。

やがて,大勢の村の若者達と共に酔ったシュテヴァが登場する。若者達が賑やかに民謡を歌い踊り,場が最高潮に達したところで,突然,村の教会の堂守を務める「教会のおばさん」,コステルニチカが登場して騒ぎを止めさせる。イェヌーファの継母であるコステルニチカはシュテヴァとよく似た性格のブリヤ家次男と結婚して自分がいかに苦労したかを語り,シュテヴァが一年間しらふでいられない限り結婚は許さないと宣告して立ち去る。

一同が退場した後,シュテヴァと二人きりになったイェヌーファは彼に不安を訴え,結婚を迫るが,シュテヴァは口先で彼女を慰め甘い言葉をささやくだけである。シュテヴァが去った後,一部始終を見ていたラツァがイェヌーファに向かってシュテヴァを揶揄するので二人は口論となる。逆上したラツァは持っていたナイフで彼女の頬を切りつけ,騒然としたなか幕となる。
 

第2幕

六ヶ月後。コステルニチカの家の一室。

イェヌーファの妊娠を知ったコステルニチカは,スキャンダルを避けるため,イェヌーファをウィーンへ奉公に出したことにして家にかくまっている。イェヌーファが男児を出産して既に8日目,彼女はその子を父親と同じくシュテヴァと名付け可愛がるが,コステルニチカは継娘の名誉のため赤ん坊の死を願っている。

コステルニチカがイェヌーファを薬で寝かせつけた後,彼女に呼びつけられたシュテヴァがやってくる。コステルニチカはシュテヴァに責任をとってイェヌーファと結婚するよう懇願するが,彼は金銭での解決を申し出た上で,頬に傷のあるイェヌーファへの恋は醒めたので村長の娘カロルカと婚約したと告げ,赤ん坊の顔さえ見ずに逃げるように立ち去る。

そこにイェヌーファとの結婚を望むラツァがやってくる。コステルニチカはラツァに全てを話し,母子ともに引き取って貰おうと考えるが,ラツァがイェヌーファの出産を聞き動揺するのを見て,赤ん坊は既に死んだと嘘をついてしまう。ラツァを返した後,コステルニチカは悩んだ末に赤ん坊を殺す決心をし,赤子を抱きかかえて凍った川へと向かう。

コステルニチカが家を出ていった後,イェヌーファが目を覚ます。彼女は赤ん坊がいないことに気付き動揺するが,姿が見えない母が子供を父親に会わせるため連れ出したと考えて気を静め,我が子を思って聖母マリアに祈りを捧げる。

家に戻ったコステルニチカは,赤ん坊の行方を尋ねるイェヌーファに彼女が熱を出し昏睡している間に死んでしまったと告げる。悲しむイェヌーファにコステルニチカはシュテヴァの不実とラツァの誠実を説く。そこにラツァが戻って来て傷心のイェヌーファを慰めるので,彼女は母の勧めに従い彼と結婚することにする。コステルニチカは二人を祝福するが,嵐のため窓が開くと良心の呵責から「死神が部屋に入ってきた」と激しく怯える。


第3幕

三ヶ月後。イェヌーファとラツァの結婚式の日の朝。コステルニチカの家の一室。

イェヌーファとラツァの婚礼の準備が行われている。コステルニチカは娘の結婚を喜びながらも物に怯え苦む不安定な様子で,祝福に訪れた村長夫妻を戸惑わせる。

ラツァはイェヌーファに愛を誓うとともに,過去を水に流すためシュテヴァを式に招待したと告げる。やがてシュテヴァとカロルカが登場し,イェヌーファは二人を暖かく迎える。村娘たちが民謡調の祝婚歌を歌い,教会に行く前にブリア家のおばあさんが二人に祝福を与える。

ついでコステルニチカが祝福しようとした時,牧童のヤノが駆け込んできて,凍りついた川の中から赤ん坊の死体が発見されたことを報告する。走り出たイェヌーファは,それが自分の子であることを確認し,父親がシュテヴァであることを皆の前で告白してしまう。村人達は怒りに駆られて彼女を乱暴に責め立てるが,ラツァが必死に護る。その時,コステルニチカが皆の前で自分の罪を告白する。イェヌーファは慄き,ラツァは罪の意識に引き裂かれ,シュテヴァは恥じ入る。ショックを受けたカロルカが母に連れ去られると,イェヌーファはひざまずいている継母をやさしく助け起こし,罪を許し悔い改めの道を与えようとする。

コステルニチカは村長に連行され,村人達も立ち去って二人だけが残される。二人は,困難な将来を思いながらもお互いの愛を再度確認し合う。
モラヴィア婚礼風景(by Zdenek Thoma)
モラヴィアの婚礼衣裳



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