Výlety páně Broučkovy

ブロウチェク氏の旅 全2部

作曲 1908-17年
初演 1920.4.23プラハ国民劇場 (指揮 オタカール・ストルチル)
演奏時間 第1部 ブロウチェク氏の月への旅  第1幕32分,第2幕32分     
      第2部 ブロウチェク氏の15世紀への旅   第1幕21分,第2幕32分
台本  スヴァトプルク・チェフの小説に基づき,9人の台本作家が協力するが,主にヴィクトル・ディク,フランチシェク・セラフィン・プロハースカ,
    及びヤナーチェク本人によるもの。(チェコ語)

時と場所  
 第1部  1888年のプラハと月の世界   
       第1幕  満月の夜,プラハのフラッチャニー城内にある居酒屋ヴィカールカと聖ヴィート大聖堂の前 --古い城の階段--月の世界の風景
 
       第2幕  月の世界の芸術の殿堂---月の世界の旅行---再び地上の居酒屋ヴィカールカの前

 第2部  15世紀(1420年)のプラハ
       第1幕  王,ヴァーツラフ4世の宝庫---旧市街広場
       第2幕  ドムシークの家---旧市街広場---居酒屋ヴィカールカの前

登場人物    

第1部(第1幕) 第1部(第2幕)  第2部
ブロウチェク氏,家主
T
マーリンカ
エーテル姫 クンカ S
マザル,画家
青空の君 ペトゥシーク T
聖ヴィートの堂守,マーリンカの父
月森の君 鐘つきのドムシーク Br
ヴュルフル,居酒屋ヴィカールカの主人
魔光大王 役人 B
少年給仕
神童 生徒 S
ファンチ ( ※会話中のみ登場)) 
ケドルタ,ドムシークの家政婦 A

曇天の君 ひげのヴァツェク Br

麗虹の君 孔雀のヴォイタ T

竪琴弾き 金細工師のミロスラフ T


スヴァトプルク・チェフ(作家)の亡霊 T
ヴィカールカの常連の芸術家達 月の世界の芸術家達 武装した民衆 合唱

あらすじ

第1部 ブロウチェク氏の月への旅

第1幕

第1場  1888年。満月の夜,プラハのフラッチャニー城内にある居酒屋ヴィカールカの前,聖ヴィート大聖堂と堂守の家がみえる。 

 マーリンカが,居酒屋ヴィカールカから飛び出してくると,マザルもそれを追って,出てくる。マーリンカはマザルが他の女(ファンチ =ブロウチェク家の家政婦)とダンスを踊ったと言って怒っている。彼女はやけになって,自分はブロウチェク氏と結婚すると叫ぶ。マザルはマーリンカをからかって,キスをする。そこへ,ちょうど家から出てきたマーリンカの父親である聖ヴィート大聖堂の堂守が,自分の娘が売れない画家のマザルと一緒にいるのを見つけ,驚いて二人を引き離そうとする。
 ヴィカールカの中から,芸術家たちが,ビールの歌を楽しそうに歌っている。そこへ,家主ブロウチェク氏が登場する。ブロウチェク氏はひどく酔っぱらっているので,側にある街頭がぐらぐらしているので,誰か直せ,と文句を言っている。彼は,そんな様子でも,マザルを見ると,彼が家賃を払わないことに腹を立て,外に放り出すぞ,と脅かし,マーリンカの前で,彼とファンチの仲について吹聴する。マザルは丁寧にブロウチェク氏におじぎして,あなたは月から落ちてきたのか,およそ苦労する人間らしさをあざ笑っているように見える,と皮肉ってヴィカールカに入っていく。ヴィカールカの主人もマザルに合わせて,二人の争いは月まで続く,と冗談混じりに言う。悲しみにくれたマーリンカは自分をもらってくれる人は誰もいないと言って,ブロウチェクに自分と結婚してくれ,と迫り,それを耳にした父親の堂守も,ブロウチェク氏に,そのつもりはあるのかと問いただすと,ブロウチェク氏は酔っぱらって,鼻の下をのばしながら,「月の上なら」と応える。ブロウチェク氏は,ふらふらと古い城の階段の方へ歩いていく。マーリンカと堂守がそれに続く。ヴィカールカの中で芸術家達が 陽気にビールと恋の歌を歌っている。
 給仕見習いの少年がブロウチェク氏の名を呼びながらヴィカールカから出てくる。彼はブロウチェク氏が食べ忘れたソーセージをつかんでいて,ブロウチェク氏を追って闇に消える。マーリンカと堂守があきらめて家に戻ってくる。そこへマザルがやってきて,マーリンカを外へ呼び出す。二人は静かにお互いの愛を歌い上げ,闇に消える。ブロウチェク氏がよろめきながら壁に沿って出てくる。壁によじのぼり,月に向かって,語りかける。少年給仕がブロウチェクを見つけて,からかいながらソーセージを渡して走り去る。月の世界には人生の苦難も,心配事もない。税金も,新聞も,盗人も,破産も・・・・・帝国議会も!ブロウチェク氏の体は,月の方へ,上へ,上へと上ってゆく・・・・

第2場 月世界の風景。後方に鶏の足の上に建つ城。

 この世界に出てくる登場人物は皆,地上での人々にうりふたつである。ブロウチェク氏は,気を失って倒れている。そこへ,詩人の青空の君(マザルにそっくり)が,ペガサスに乗って飛んでくる。二人は顔を見合わせてお互いに驚く。それぞれ自分のことを語るが,話がかみあわない。やがて青空の君は15年間も思いを寄せているエーテル姫(マーリンカにそっくり)への思いを恍惚と歌い,愛のすばらしさを歌うが,ブロウチェク氏は月の世界では子どもはどこからやってくるのか,と問う。青空の君はすっかり怒ってしまう。そこに月森の君(堂守にそっくり)が,娘のエーテル姫をつかまえるための,長い棒のついた緑色の網を持って,城の方へやってくる。エーテル姫も仲間の踊り子達と城の方から登場し,しゃれた陽気なワルツにのって,歌と踊りを披露する。青空の君はブロウチェク氏に,エーテル姫に対してひざまづくように命ずるが,ブロウチェク氏はそんなことには従わずに,エーテル姫になれなれしく話しかける。逆にその大胆さがエーテル姫の心をとらえてしまう。エーテル姫はブロウチェク氏への愛を歌いだし,月森の君と青空の君は,慌てふためくが,エーテル姫はブロウチェ ク氏をペガサスの後ろにのせ,芸術の殿堂へと飛び去っていく。

第2幕 

第1場 月世界の芸術の殿堂。光り輝く星の形をしている。前方に入り口の階段がある。

 中央の王座に魔光大王(ヴィカールカの店主,ヴュルフルにそっくり)が座っており,その周りで,それぞれの分野の芸術家達(ヴィカールカに通う芸術家達にそっくり)が仕事をしている。魔光大王と芸術家達が,芸術を讃えて歌う。そこへ,エーテル姫とヴロウチェク氏がペガサスに乗ってやってくる。魔光大王率いる一同は,見慣れぬブロウチェク氏を見て初めは恐がって隠れてしまうが,やがて出てきて彼を歓迎する。芸術家達は音楽部門の竪琴弾き達の歌と演奏や踊り,詩の部門の曇天の君らの朗読などを披露して,ブロウチェク氏を暖かく歓迎する。けれども,よくわからない芸術を次々に披露されたり,神童(ヴィカールカの少年給仕そっくり)が用意した宴会の食事が,花のにおいを嗅ぐだけのものだったり,エーテル姫のキスが蜘蛛の巣の用にふわふわして味気なかったりしているうちに,だんだん,月世界がいやになってくる。神童が花の食事を何度もブロウチェク氏にすすめると,彼はうっかり「私の鼻はもういっぱい」と応えてしまう。月世界では体のことを口に出すのは御法度なので,さあ大変,みんなおこりだして,いなくなってしまう。そこに美術部門の麗虹の君が現れ,自分 の書いた絵を,ブロウチェク氏にしつこく見せようとする。ブロウチェク氏は,ほとほといやになって,持っていたソーセージを隠しながら一人でかじり出す。麗虹の君がブロウチェク氏が泣きだしたと勘違いして他の芸術家たちを呼び出すと,皆また戻ってくるが,今度はブロウチェク氏が何かを食べているとわかると,大騒ぎになり,それが豚を殺して作ったソーセージだとわかると,今度は皆,気絶してしまう。それでもあきらめずにブロウチェクにまとわりつくエーテル姫を,彼は思いきり息で吹き飛ばし,宴会のテーブルの上のものを投げ散らかすと,ペガサスに乗って飛び去ってしまう。そこにエーテル姫を追って,再び青空の君と月森の君が現れる。やがて竪琴弾きと音楽家達も魔光大王を祝福しに登場し,王座のまわりを歌いながら行進し始める。その中,だんだん倒れていた芸術家たちは,我に返り起きあがっていき,行列に加わる。魔光大王も気が付いてあわてて王座に座る。芸術家たちの芸術を讃える合唱が続く中,舞台はやがて霧に包まれてゆく。夜が明けると,そこは再び地上の居酒屋ヴィカールカの前。ヴィカールカから常連の芸術家たちが,ブロウチェク氏の棺を運んでゆく。マザ ルとマーリンカが舞台に残り,二人だけの愛の歌を歌い,静かに幕を閉じる。


第2部 ブロウチェク氏の15世紀への旅


第1幕

王,ヴァーツラフ4世の宝庫。

 今宵も酒屋ヴィカールカで酔っぱらったブロウチェク氏は夢をみて,プラハ城からヴルタヴァ川まで地下道でつながっているという,古い地下の宝物庫へ落ちる。ブロウチェク氏はあたふたと助けを求め,出口を探して走り回るが,旧市街広場が見えるドアの所に行き着くと,このオペラの原作者の,詩人スヴァトプルク・チェフが亡霊になって現れ,愛国の詩を吟じ,消えてゆく。場面は変わり,時は1420年,フス教徒時代である。ブロウチェク氏が早朝の旧市街広場の街角に立っている。折しもプラハは神聖ローマ帝国の王,ジクムントが統治しており,彼らは十字軍を導入してプラハを包囲し,フス教徒を撲滅させるために,決戦を交えようとしている。その町の緊迫した空気の中,ブロウチェク氏は,通りかかった役人(ヴュルフルそっくり)の尋問にあうが,彼の服装や,しゃべり方が変だったので,役人と,まわりの武装した民衆達に,ジクムント側のスパイだと勘違いされてしまう。役人は彼を市長のところへ連れていこうとするが,ブロウチェク氏は恐ろしさのあまり,気絶する。そこに,鐘つきのドムシーク(堂守にそっくり)が現れて,気を取り戻したブロウチェク氏は,ドムシークに咄 嗟に自分はトルコから来たので言葉と服装がおかしいのだと説明する。それで,役人達と和解し,ブロウチェク氏はドムシークの家に連れて行かれる。その側を武装したフス派の民衆が,声高らかに宗教的な軍歌「主の日が始まる」を歌いながらティーン教会へと行進していく。

第2幕

1420年7月14日の朝。ドムシーク家の一室。一方の窓から支庁市庁舎と旧市街広場,もう一方の窓からティーン教会が見える。

 目覚めたたばかりのブロウチェク氏がベッドの端に腰掛けている。ブロウチェク氏は,自分が1420年の時代に来てしまったことを,思い悩んで,戦争にかり出される事を心配している。フス派の軍隊なんかにかり出されたくない,とひとりで騒いでいると,家政婦のケドルタが急にドアを開ける。彼女は顔を出すと,十字を切って,またぴしゃりとドアを閉める。するとドムシークがやってきて,ブロウチェク氏に自分たちの仲間に加わるように服を着せようとする。仕方なくブロウチェク氏はそれを着る。外で民衆が出発前の神への祈りを捧げている。そこにドムシークの仲間達が次々に部屋に入ってくる。髭のヴァツェク,金細工師のミロスラフ,くじゃくのヴォイタ,そして,ドムシークの娘クンカ(マーリンカにそっくり)である。ドムシークは一同にブロウチェク氏を紹介する。一同は乾杯して,政治論議になる。そこに学生が現れ,一同の志気を煽る。ブロウチェク氏は,飲みっぷりの良さを誉められたりもするが,政治についての意見を問われると,酔っぱらって,「自分はジークムントだろうが,ジークムントでなかろうが,どうでもいいし,戦争にも行かない」と答えて皆をひどく怒らせる 。そこに,ペトゥシーク(クンカの恋人,マザルにそっくり)が現れ,敵はヴルタヴァ川を渡ってきたと伝え,ブロウチェク氏はあわや助かる。一同は,各々が一人の人間として立ち上がれ,と叫び,ドムシークはブロウチェクに武器を取るように命じ,ドムシークを筆頭に,一同は次々に武器を手にして,戦場へ飛び出していく。後にはクンカとケドルタとブロウチェク氏だけが残る。「ターボル万歳,フス万歳!」遠くで武装した民衆の叫び声が響く。やがて,この戦乱のフス派の指導者,ヤン・ジシュカの率いる解放部隊の一戦士によって,実際にこの時期に作られたという,有名な歌「汝ら神の戦士達よ」が合唱される。クンカは居ても立ってもいられなくなり,自分も武器を取って飛び出していく。ケドルタは神に無事を祈り歌う。ブロウチェク氏は,その間に衣装を脱いで,もと着ていた自分の服に着替えて部屋から出ていってしまう。その行為と対照的に,民衆の歌は壮大な盛り上がりを見せ,チェコの国の人々よ,勇敢に立ち上がれ,と闘志を煽りながら歌い続ける。

 場面は変わり,同日の旧市街広場の夕暮れ。勝利をおさめたジシュカ将軍と戦士達の凱旋に,民衆が大歓声を送る。部隊はフス派教徒の司祭に勝利の祝福を受けるために,ティーン教会に入る。すると,ブロウチェク氏が,ドムシークの家から急いで出て来て,家のアーケードの下に隠れる。けれども,すぐに勝利した二人のターボル派(フス派の仲間)の兵隊に見つかってしまい,武器はどこに持っているのかを問いただされる。ブロウチェク氏は,その場の思いつきで,自分は戦闘に参加して,敵の馬の脇腹に剣を刺したとか,戦闘でジシュカ本人に会ったとか,でまかせを言う。けれども,それをペトゥシークが聞きつけ,ブロウチェク氏の嘘に腹を立て,嘘つきの臆病者と非難し,役人とともに裁判にかけようとする。そこにクンカが現れる。ペトゥシークはクンカに父親のドムシークが戦死したことを伝えるとクンカは悲しみにくれながらも父を悼む美しいアリアを歌う。ペトゥシークは,ブロウチェク氏が,敵の兵士に膝まづいてドイツ語で,「自分は身方だ,プラハの住人でもないし,フス派でもない」と言って慈悲を乞うているのを見たと証言する。臆病者のブロウチェク氏は,裏切りが暴露 され,民衆に咎められ,裁判にかけられ,死刑の判決を受ける。ケドルタがブロウチェク氏を戒める,激しいアリアを歌うと,民衆は樽の中へブロウチェクしを押し込めて,火をつける。燃え上がった火がだんだん小さくなり,火を残して,場面は居酒屋のヴィカールカに戻る。火は店主ヴュルフルの持っているろうそくになっている。ブロウチェク氏は,居酒屋ヴィカールカに置いてある樽の中で酔っぱらって寝てしまい,夢を見ていたのである。


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