フォネティック・コード
欧文・和文通話表

 混信や電波状態が悪い中での交信では文字を聞き取りにくい場合があります。特に「BとD」、「IとY]、「MとN」、「TとP」など。発音が悪くても分りませんし、逆に正しい発音をされると英語圏以外の人は聞き取れません。そこで下記のような世界共通のフォネティックコード(通話表)を使用すれば正確に伝送できるのです。

 フォネティックコードの歴史は古く、軍事用、電信電話会社用、航空用などいくつかの種類がありましたが、戦後に国際電気通信連合(ITU)により現在の基本形に統一されました。それに基づいて無線局運用規則(14条別表5)で定められています。運用規則に記載されている通話表はよく吟味されており、英語圏以外の人が聞いても分るような語句となっています。しかし、実際の交信を聞いてみますと決められている語句以外のものもよく使用されています。昔の通話表の名残だったり、馴染みのある地名だったり様々です。

 運用規則に記載されている語句はIとLなど地名は少ない。これは地名はQTHと間違えるからという説と、現地語で発音すると頭文字を想像できないような発音になるという説があります。一方で運用規則外の慣用のフォネティックコードには地名が多くあります。これは馴染みのある地名の方が覚えやすい(英語圏以外の人同士)からでしょうか。

 いずれにしても先ずは運用規則通りの正式なフォネティックコードを使用すべきでしょう。そして伝わりにくい場合に限って他の慣用のものを使用してもよいでしょう。ただし相手に伝わらないと意味がありませんので、自己流のフォネティックコードは厳禁です。また、旅行業界や金融業界など各業界や会社ごとに独自のコードも使用されているようですが、それらは自己流コードであって誤認されやすい語句も多くありますので、無線通信では真似をしないようにしましょう。

 実際には、色々なフォネティックコードを混ぜて使っている人が多いのが実情です。下に慣用のコードも合わせて表記しますが、あくまでも参考とし、正式なフォネティックコードを使用するよう心がけましょう。
なお、海上移動業務又は航空移動業務・航空管制の無線電話通信においては別表5に定める通話表を使用しなければならないことが運用規則(14条3項)で定められています。それ以外の無線通信では、「なるべく前項の通話表を使用するものとする」(同14条4項)となっておりますので、船舶と航空無線以外では慣用のものを使っても違反ではなく、正規のコードの使用が望ましいということです。

 

欧文通話表
運用規則(別表5)による正式なもの その他よく聞く慣用のもの
文字 使用する語 発音 語句(カタカナ発音)
A ALFA アルファ AL FAH America (アメリカ)、 Able(エイブル)
B BRAVO ブラボー BRAH VOH Boston (ボストン)、 Baker (ベーカー)
C CHARLIE チャーリー CHAR LEE Colombia (コロンビア)、 Canada (カナダ)
D DELTA デルタ DELL TAH Denmark (デンマーク)
E ECHO エコー ECK OH Edward (エドワード)
F FOXTROT フォックストロット FOKS TROT Florida (フロリダ)、 France (フランス)
G GOLF ゴルフ GOLF Germany (ジャーマニー)
H HOTEL ホテル HOHTELL Hawaii (ハワイ)、Honolulu (ホノルル)、Henry (ヘンリー)
I INDIA インディア IN DEE AH Italy (イタリー)
J JULIETT ジュリエット JEW LEE ETT Japan (ジャパン)、Jack (ジャック)
K KILO キロ KEY LOH Kentucky(ケンタッキー)、King (キング)
L LIMA リマ LEE MAH London (ロンドン)
M MIKE マイク MIKE Mexico (メキシコ)、Mary (メリー、メアリー)
N NOVEMBER ノベンバー NOVEN BER Nancy (ナンシー)、Norway (ノルウェー)
O OSCAR オスカー OSS CAH Ocean (オーシャン)、Ontario (オンタリオ)
P PAPA パパ PAH PAH Peter (ピーター)、 Portugal (ポーチカル) ?
Q QUEBEC ケベック KEH BECK Queen (クィーン)
R ROMEO ロメオ ROW ME OH Radio (レィディオ)、 Robert (ロバート)
S SIERRA シエラ SEE AIR RAH Spain(スペイン)、Suger (シュガー)、Santiago(サンチャゴ)
T TANGO タンゴ TANG GO Tokyo (トーキョー)
U UNIFORM ユニフォーム YOU NEE FORM Uncle (アンクル)
V VICTOR ビクター VIK TAH Victory (ビクトリー)
W WHISKEY ウィスキー WISS KEY Washington (ワシントン)
X X-RAY エクスレイ ECKS RAY -
Y YANKEE ヤンキー YANG KEY Yokohama (ヨコハマ)、 Yoke (ヨーク)
Z ZULU ズール ZOO LOO Zebra (セブラ)、 Zanzibar (ザンジバル)

ラテンアルファベットによる英語式の発音の表示において、下線を付してある部分は語勢の強いことを示す。

使用方法は 例えばABC・・・と伝えたい場合、通常は alfa bravo charlie・・・といいます。
会話的に 「AはalfaのA 」 のようにいう場合は [ A for alfa ] 又は [ A as in alfa ] が一般的です。

 カタカナ表記は正確ではありませんが発音の注意点は・・・
●J をジュリエイトと発音すると 「J8」 と間違える可能性があります。
●K を「キロワット」というと 「KW」 と間違えます。
●F を「フォクス」と略すと「狐」になります。昔はFOXというフォネティクスもありましたが、「フォックストロット」は社交ダンスの名称ですので略さずに!
●P を「ポーチカル」という人がいますが意味不明です。似た発音を辞書で調べましたが、恐らくポルトガルを指すポージュガル(Portugal)でしょうか?奇妙な語句は使わないように!
●X を「クリスマス」とか「クリスタル」というと 「C」 なのか略記の 「X'」 なのか分かりませんので不適当です。
●英語が苦手な人(ローマ字読みしかできない人)に対して「C」を「カナダ」というと「K」と間違える可能性があります。同様にコロンビアをK、ジャーマニーをJ、アンクルをA、エイブルをEと捉えてしまうことも考えられます。


和文通話表
文  字
ア 朝日のア イ いろはのイ ウ 上野のウ エ 英語のエ オ 大阪のオ
カ 為替のカ キ 切手のキ ク クラブのク ケ 景色のケ コ 子供のコ
サ 桜のサ シ 新聞のシ ス すずめのス セ 世界のセ ソ そろばんのソ
タ 煙草のタ チ ちどりのチ ツ つるかめのツ テ 手紙のテ ト 東京のト
ナ 名古屋のナ ニ 日本のニ ヌ 沼津のヌ ネ ねずみのネ ノ 野原のノ
ハ はがきのハ ヒ 飛行機のヒ フ 富士山のフ ヘ 平和のヘ ホ 保険のホ
マ マッチのマ ミ 三笠のミ ム 無線のム メ 明治のメ モ もみじのモ
ヤ 大和のヤ   ユ 弓矢のユ   ヨ 吉野のヨ
ラ ラジオのラ リ りんごのリ ル るすいのル レ れんげのレ ロ ローマのロ
ワ わらびのワ ヰ ゐどのヰ   ヱ かぎのあるヱ ヲ 尾張のヲ
ン おしまいのン  ゛ 濁点  ゜ 半濁点    
数  字
一 数字のひと 二 数字のに 三 数字のさん 四 数字のよん 五 数字のご
六 数字のろく 七 数字のなな 八 数字のはち 九 数字のきゅう 〇 数字のまる
記  号
 ー 長音  、 区切点  」 段落  ( 下向括弧  ) 上向括弧
 <使用例>
●「ア」は、「朝日のア」と送る。「1」は、「数字のひと」と送る。
●「バ」又は「パ」は「はがきのハに濁点」又は「はがきにハに半濁点」と送る。
●数字を送信する場合には、誤りを生ずるおそれがないと認めるとき、通常の発音による(例 「1500」は、「せんごひゃく」とする.)か又は「数字の」の語を省略する(例 「1500」は、「ひとごまるまる」とする.)ことができる。



モールス・コード

欧文・モールス符号表
・− N −・  . 終点 ・−・−・−
−・・・ O −−−  , 小読点 −−・・−−
−・−・ P ・−−・  :重点又は除法の記号 −−−・・・
−・・ Q −−・−  ? 問符 ・・−−・・
E R ・−・  ’ 略符 ・−−−−・
F ・・−・ S ・・・  − 横線又は減算 −・・・・−
G −−・ T  ( 左括弧 −・−−・
H ・・・・ U ・・−  ) 右括弧 −・−−・−
I ・・ V ・・・−  / 斜線又は除法 −・・−・
J ・−−− W ・−−  = 二重線 −・・・−
K −・− X −・・−  + 十字符号又は加算 ・−・−・
L ・−・・ Y −・−−  “ ” 引用符 ・−・・−・
M −− Z −−・・  × 乗算の記号 −・・−
   @ 単価記号 アットマーク ・−−・−・
数字(和文も同じ) 数字の略体
・−−−− −・・・・ ・− −・・・・
・・−−− −−・・・ ・・− −・・・
・・・−− −−−・・ ・・・− −・・
・・・・− −−−−・ ・・・・− −・
・・・・・ −−−−− ・・・・・
 
和文・モールス符号表
・− −−− −−−−  濁点
・・
・−・− −−−・ −・−−−
−・・・ ・−−・ ・−・−−  半濁点
・・−−・
−・−・ −−・− −−・−−
−・・ ・−・ −・−・−  長音
・−−・−
・・・ −・−・・
・・−・・ −・・−−  区切点
・−・−・−
・・−・ ・・− −・・・−
−−・ ・−・・− ・・−・−  段落
・−・−・・
・・・・ ・・−− −−・−・
−・−−・ ・−・・・ ・−−・・  下向括弧
−・−−・−
・−−− ・・・− −−・・−
−・− ・−− −・・−・  上向括弧
・−・・−・
・−・・ −・・− ・−−−・
−− −・−− −−−・−
−・ −−・・ ・−・−・
@ −線の長さは、三点に等しい。
A 一符合を作る各線又は点の間隔は一点に等しい。
B 二符合間の間隔は、三点に等しい。
C 二語の間隔は七点に等しい。