奥の細道  那須野篇(黒羽)
                                                 

    栃木県大田原市前田(旧黒羽町)

平成14年(2002) 5月22日

元禄二年(1689) 五月二十一日

黒羽の館代浄坊寺何がしの方に音信る。思ひがけぬあるじの悦び、日夜語つヾけて、其弟桃翠など云が、朝夕勤とぶらひ、自の家にも伴ひて、親属の方にもまねかれ、日をふるまゝに、ひとひ郊外に逍遙して、犬追物の跡を一見し、那須の篠原をわけて、玉藻の前の古墳をとふ。それより八幡宮に詣。与市扇の的を射し時、「別しては我国氏神正八まん」とちかひしも、此神社にて侍と聞ば、感応殊しきりに覚えらる。暮れば桃翠宅に帰る。修験光明寺と云有。そこにまねかれて行者堂を拝す。
 
 夏山に足駄を拝む首途哉



高足駄姿の役行者の尊像を拝み、健脚で知られた行者にあやかって旅の前途のつつがなきようお祈りします


雑記


那須神社から国道294号に戻り那珂川の橋を渡る。黒羽での中心「芭蕉館」は黒羽城跡の一角にある。
まず手前の大関家(那須七騎)の菩提寺である大雄寺を参拝する。薄暗い参道を登りつめた所に茅葺の山門があり、中に入れば本堂,禅堂、庫裏,鐘楼、とそれらを繋ぐ回廊まで全て茅葺なのには驚かされた。大雄寺は室町時代の様式を残す禅寺である。
芭蕉館の前庭左端には、馬に乗った芭蕉と歩く曾良の像があり、傍らの蹲周りにはシャガの花がいっぱい咲いていました。館は新しく綺麗に飾られており、蕪村画を軸とした芭蕉コーナーが最初にあり奥に進むと黒羽藩大関家の甲冑や刀剣の展示、青山文庫も同居していました。