あ行の品種


青柳 (あおやなぎ)


本種は天保14年の岩檜葉名寄に、既に名前が見られる古典品種ですが、
長い胞子嚢穂を着ける特徴があり、胞子嚢穂を下垂させた葉姿から、
この名が付いたのではないかと思われます。


暁 (あかつき)


葉組み粗めの大型葉で、画像の様な斑を乗せる事から、古くは萌黄葉類に類別された
事もある品種です。万延元年の岩檜葉名寄に、「夕日影」として掲載され、明治34年の
銘鑑には「夕日影改 寶蓑」と掲載があり、その後の銘鑑には「寶蓑」名が見られ、
昭和22年の日本巻柏連合会の第一号銘鑑には「暁 夕日影改」と掲載されており、
品種名の変遷が銘鑑で確認できる、唯一の品種です。


茜錦 (あかねにしき)


昭和53年度登録品種です、夏から葉元に焦げ茶色を乗せていますが、
秋にはその色を鮮やかにしながら、葉先を残してほぼ全葉を茜色に染めます。
本種は、葉単体の寿命が短く、3〜4年で落葉してしまう為に、葉重ねが少なく、
葉元の新根が乾燥しやすい為か、根幹が太り難く、大株には成り難いようです。


曙錦 (あけぼのにしき)


画像の品は10年以上前に、ある方から「曙錦」 として頂た品ですが、品種的には疑問を
感じています。  文献で調べてみると、「曙錦」は天保14年の岩檜葉名寄に掲載された、
八重曙の改名種の記述が見られ、日本巻柏連合会銘鑑には、第1号より第9号迄9回の
記載が有りますが、それ以降の記載は有りません。

巻柏お熱が最高潮だった頃に、特徴などが知りたくて書籍を調べましたが、本種の特徴の
記述には巡り合えず、ある時、先輩宅に伺った折に、「曙錦」のラベルの付いた株を見つけ、
良く見ると「暁」に良く似た葉姿でしたが、株分けした品が有るとの事で頂いてきたのですが、
その後の観察結果は、ご覧の様にやはり「暁」と寸分違わぬ特徴なのです。

「暁」と「曙錦」は異名同種だったのか、はたまた別の特徴を有する「曙錦」があるのだろうか、
今も納得できない私の中での「曙錦」は、今となっては永遠の謎のままで終る品種なのです。
 

朝日滝 (あさひのたき)


万延元年から現在迄の、全ての銘鑑にその名が見られる、古典品種の名品の一つです。
作柄によっては、御所錦や金銀獅子と見紛う事もありますが、基本的には前述の2種より
葉は短めで、白味の強い斑を深く乗せます。


旭龍 (あさひりゅう)


昭和44年度登録品種です。
枝の少ない葉形で、葉肉が厚めの立性の葉に、黄色の曙斑を現します。


天乙女 (あまおとめ)


万延元年から伝わる、古典品種の萌黄葉ですが、日本巻柏連合会銘鑑では、
第1号から第34号(昭和61年)まで連続掲載されていますが、
それ以降の銘鑑に本種名は見られなくなっています。


有明 (ありあけ)


万延元年の岩檜葉名寄以降の各銘鑑に、漏れなく掲載され続ける、古典品種の曙斑類の
名品の一つですが、本種は直射日光には耐えられぬためか、大株の存在は極少ないようで、
私は手持ちのこの株以外の大株を、未だ見た事が有りません。

前述の通り直射日光には耐えられぬようですが、中日管理でも曙斑を結構深く乗せます。
近年では葉形色彩の良く似た、丈夫な個体が出現し、同名で普及し始めているようです。


泉獅子  (いずみじし)


平成9年度登録品種です、「暁」の変種である「暁獅子」から、更に変化した個体であると、
作出されたご本人から伺いました、分岐の極粗い葉で、青葉物でありながら直射日光には
耐えられぬようで、強日管理では傷みが生じますが、傷んでも翌年には新葉が伸びて、
傷みをカバーする強健な性質も有します、安全を期す意味から中日管理がお勧めです。
 

和泉錦  (いずみにしき)


昭和59年度登録品種です、やや粗めの檜葉形に、砂子を強く感じる独特の曙斑を現します。
「西ノ有明」ほどでは有りませんが、葉に強く触れると葉先を飛散させる特徴もあり、
株下の地表に折れ落ちた葉が発芽して、自然に若苗が出来ている事を良く見かけます。

 
泉之華 (いずみのはな)


昭和63年度登録品種です、本種が登録される以前に、「都錦」と言う登録外品種を
所持し愛培していましたが、その特徴が全く同じでした。
従って本種は「都錦」の改名登録種ではないかと、個人的には思っています。


一天四海  (いってんしかい)


万延元年より伝わる古典品種です、隙間のない整った葉は、一枚が菱形に感じる程の
葉形で、若株では黄色葉や黄色の刷毛込斑を持つ葉が目立ちますが、株が大きくなる
に連れて、黄色の刷毛込斑は少なくなり、大株では殆ど目に付かなくなってしまいます。
しかし古株も作柄によっては、砂を撒いた様な小さな黄斑を、葉全体に乗せる事もあります。 


宇陽ノ誉 (うようのほまれ)  


昭和35年度登録品種です、やや粗めの葉組みで立ち性の葉に、砂子斑を表します。
各種全般に斑乗りの悪い我が家では、本種もその例に漏れず斑乗りが今一ですが、
良作では葉全体に砂子斑を乗せ、見事な色彩を見せてくれます。
 

雲上錦 (うんじょうにしき) 
 
昭和30年度登録品種です。

唐花系の細葉種で、先祖返りの特性を
持つ準固定種で、挿し芽発芽苗の多く
は生育中に唐花に戻ります。

本種に葉姿が類似する品に花車の
細葉変種が有り、花車系は斑乗りが
良い事から、近年は花車の細葉が
雲上錦として普及しているようです。

しかし登録された「雲上錦」は、この
唐花系の品であると、先輩諸兄から
伺っています。



雲仙 (うんぜん) 
 
昭和47年度登録品種です。春から他の品種に先駆けて曙斑を現し、夏以降には緑を戻す、
いわゆる後眩みの斑の、春の曙類の品種です、画像は6月に撮影したものです。 


榮晃錦 (えいこうにしき)  

平成13年度登録品種です。 鱗のやや粗めの萌黄葉で檜葉形の大葉すが、
下葉の葉先のほうが、鱗も葉組みも若葉より粗くなり、麒麟獅子あるいは
浜孔雀を思わせるような、縮れを感じる葉先になります。
 

猿候  (えんこう) 


天保14年の岩檜葉名寄せ以降、ほぼ全ての銘鑑にその名が見られる、古典品種です。
緑の常葉の大葉物ですが、少量の一本葉を交えます。 


猿候獅子 (えんこうじし) 
 
昭和22年度の第一号銘鑑からの品種です。葉を抱える独特の細やかな常葉に、
葉肉が厚く丸みを感じる細身の龍葉を交える、立ち葉性の品種です。
どこと無く「錦昇龍」に、似通う葉姿ですが、より立ち葉で鱗も粗めで葉を抱えます。 


猿候ノ斑 (えんこうのふ)  


淡緑の地色の大葉で、黄白色の曙斑を現します。
日本巻柏連合会銘鑑には、第22号(昭和49年度)から掲載され始めますが、
新登録扱いではありません。 昭和48年発刊の書籍、日本巻柏連合会監修の
「原色イワヒバ銘鑑」の本種の解説では、万延元年からの品種と成っております。

古い銘鑑を遡ると、昭和48年以前の銘鑑には「猿候ノ斑」の名は見られませんが、
万延元年の岩檜葉名寄には「猿候斑入」の名が見られます。つまり昭和48年当時の
日本巻柏連合会は、万延元年の「猿候斑入」が、本種との見解だったのでしょう。
 

遠州牡丹 (えんしゅうぼたん) 


平成18年度に登録された、まだ新しい
品種です。

右の画像は5月下旬の撮影です。

培養経験が浅く、他の個体をあまり見て
いないので、詳細は解りませんが、
斑は春の曙斑の様で春から夏にかけて
乳白色の曙斑を現しますが、
夏以降には緑を戻すようです。




燕尾 (えんび)


天保14年からの古典品種です、はじめ一本で伸びる葉は、葉先が数本に分岐します、
その葉形を、ツバメの尾に見立てての命名なのでしょう。


黄金鶴 (おうごんづる) 
 
万延元年からの古典品種です。 他の萌黄葉種に比べると、やや細身(葉幅狭い)で、
葉先が細やかな感じの檜葉形で、やや立性(中立)です。 


黄金錦 (おうごんにしき)  


古い銘鑑に「黄金錦」の名が最初に見られるのは、昭和 6年の東京巻柏会銘鑑からですが、
天保14年の岩檜葉名寄に掲載のある、「黄金」が本種の始めであると言われています。
葉幅がやや広めで整った檜葉形の萌黄葉です。
 

黄金ノ華 (おうごんのはな) 
 

平成16年度登録の品種です、葉姿は「黄金錦」に似ていますが、葉先の突端が低めで
葉先が丸みを感じ、葉重ねも良く、萌黄の地色も澄んだ色合いで、秋には赤味の強い
色合いの紅葉を見せます。 


大花菱 (おおはなびし) 
 

天保14年からの古典品種です、整った檜葉形でやや大葉で、初夏から曙斑を現しますが、
斑はあまり深くは乗せません、紅葉期も色彩にあまり変化が見られません。

平性の大葉の割には珍しく、隣同士の芽の葉と葉が入り組む事が少なく、
各芽の芯が良く見えるのも、特徴の一つでしょう。
 

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