ヴェネツィアは20世紀の間に70�p以上地盤が沈下しました。
地盤沈下の原因は、対岸の本土の工業用地下水のくみ上げ。

ヴェネツィアを水没から守る国際的な運動が、ユネスコの提唱で行われています。

ヴェネツィアは車の進入が禁止です。唯一の交通機関は舟。

大運河を走る水上バス（舟）で着いたサン･マルコ駅の様子。一番左の桟橋に停まっているのが、水上バスです。

写真の奥、運河の対岸に見えているのはサンタ･マリア・デッラ・サルーテ教会。円蓋に覆われたヴェネチアン・バロック建築の傑作で、17世紀にペストの終焉を感謝して聖母マリアに捧げられたのだそうです。

船着き場からサン･マルコ広場に歩いて向かう途中、運河の外れの島に築かれたサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会が目に入ってきました。

水面すれすれに浮かぶこの島は、古い修道院と16世紀に建設された教会でほぼ覆われています。

ちょうどサン･マルコ広場と海を隔てて向かい合っていて、絵やパンフレットでよく見かける景色です。

上の写真の向かい側の光景。船着き場が右手に見えます。ここにはゴンドラが停まっていて観光客を待っています。

その左側の通路にせり出している白い柱（上に載っているのは有翼のライオン像）のある所がサン・マルコ広場への入り口です。

白い柱の向こう側に見える白亜の建物（写真左から２つ目の建物）はドゥカーレ宮殿です。ヴェネツィア共和国の歴代の総督の住居。政治･司法の中枢だった建物です。

広場の入り口から見える光景。

右側の建物がドゥカーレ宮殿で、その奥、円蓋や小さな塔の見える建物がサン･マルコ寺院です。

ドゥカーレ宮殿の３階は、２人の人物画の大きなパネルで覆われていましたが、工事中のようです。

両脇に見えるのは入り口に建つ石の柱。　　

ドゥカーレ宮殿の前で広場への入り口を振り返ったところ。入り口に立つ2本の石柱が目立ちます。

左側の石柱の上の翼のある獅子像は、聖マルコ（サン・マルコ）を表すのだそうです。聖マルコはヴェネツィアの守護聖人。このライオンがヴェネツィア共和国の象徴になりました

右側の石柱の上の像は聖テオドロス。彼は９世紀以前（聖マルコの聖遺物がヴェネツィアに移される以前）の守護聖人だそうです。

サン･マルコ広場では花嫁の記念写真を撮る姿も見られました。観光客だけでない、記念スポットなのだと思います。ナポレオンが世界一美しい広場と言ったというのもうなづけます。

その背景がサン･マルコ寺院（聖マルコに捧げられた大聖堂）。聖マルコは「マルコによる福音書」を書いたとされる福音記者です。

828年、ヴェネツィア商人がアレクサンドリアにあったマルコの遺体（聖遺物とも）をヴェネツィア共和国に運び（盗みだし）、それ以来ヴェネツィアの守護聖人となったのだそうです。

その聖遺物を納めるために建てられたのがサン･マルコ寺院。

サン・マルコ広場の右手に見えるのは鐘楼。高さは98.6mもあるそうです。

この鐘楼はその後の各国の塔や高層ビルのデザインに大きな影響を与えたとのこと。

1514年に完成したのですが、火災にあったりして1902年に崩壊、現在のは1912年に再建したものだそうです。

サンマルコ寺院をアップで。
ビザンティン建築を代表する記念建築物なのだそうです。

正面中央、ファサードの有翼のライオンの彫刻のある屋根の上に立っているのは、聖マルコの彫像です。 ↓

ホテルはサン・マルコ寺院の脇、上の写真で左から４つ目の明るい煉瓦色の建物です。

左側の写真の背景に写っているのはサン･マルコ広場です。ホテルの２階ベランダでの撮影。

右側の写真は室内の様子です。瀟洒な家具にも歴史を感じました。

荷物の整理をして市内散策に出かけました。
広場をサン･マルコ寺院と反対側に突っ切って行くと、繁華街に出るのでした。

繁華街と言っても通路は狭く、派手さは全くありません。

ウィンドウをのぞいて気に入れば店の中に入って買い物をする、という感じです。

狭い通路は観光客と思われる人々の行き来が絶えませんでした。

市内のいたる所に写真のような小さな運河があります。運河の両脇は歴史的建造物で隙間なく埋め尽くされています。

小運河には小さな橋がいくつも架かっているのですが、たまたま人気の無い橋で記念に撮ったのが左側の写真です。

右側の写真は、よく見ると手前の欄干の間からゴンドラの一部が見えています。赤く見えるのが屋根です。

車がない時代、徒歩と小舟ですべての用を足した時代の環境が、そのまま今に受け継がれているのでした。

もっとも、いまではゴンドラは観光客向けなのだそうです。

ひときわ観光客で賑わっているのがリアルト橋付近です。

リアルト橋は大運河に架かる4つの橋の一つで、ヴェネツィアでは最も早くこの周りに集落ができたのだそうです。それで商業の中心地となりました。

サン・マルコ広場からは15分ほどの近さです。その橋に向かう路上や橋の上には土産物を売る商店がたくさん並んでいました。

バロック時代の衣装（？）を着てコンサートの切符を売っている人もいました。それで一緒に撮ったのが右の写真。

その橋の上から大運河を見下ろして撮った写真です。

大運河の両岸には、中世風の建物がぎっしり並んでいます。運河を通るゴンドラや水上バスも見えます。

私たちは橋を右側に下って、写真の右手にあたる運河沿いの道を行ってみました。

ほどなくゴンドラがたくさん繋がれた船着場を通りました。冬の寒さでは利用客が見込めないせいか、大半はブルーシートで包まれ、漕ぎ手と思われる人も手持ち無沙汰の様子でした。

写真の左手に一部見えている、斜めに傾いて運河を横切っている屋根付きの白い橋が、リアルト橋です。

左の写真だとリアルト橋の様子がよくわかります。

もとは木製の橋だったのが、1591年に石造になったそうです。明かりの点いたファサードの下には土産物屋が並んでいるのでした。

写真右手に緑のフードの下に白いテーブルクロスの見えているのはレストラン。ここで夕食を取りました。

大運河も行き来する水上バスやゴンドラで混み合っています。

夕食を終えて帰ろうとすると、明かりに照らされたリアルト橋だけがくっきりと暗闇に浮かび上がっているのでした。

日本の観光地や繁華街の明るい賑わいに比べると、夜の暗さが引き立ちます。
それぐらい日本は照明が明るすぎるのだと思います。

来た道を逆に歩いて行くと、昼には気づかなかったクリスマスの飾り付けが通路の上に点灯していました。

これも日本に比べればつつましいのではないでしょうか。

コンサート会場はサン･マルコ広場にあり、しかも私たちのホテルのすぐそばでした。それで行って見ることにしました。

「RONDOVENEZIANO」というコンサート会場前で、切符を買う順番待ちの時の写真です。

入り口では昼に宣伝をしていた人と同様、中世風の服装をした人が受付をしていました。

会場は満席で、バロック音楽主体の楽しい演奏会でした。

演奏者の髪型や服装もバロック風でしたが、これも観光客用のサービスなのでしょうか。

ホテルは道路を隔てたサン･マルコ寺院の隣なので、窓からはサン・マルコ寺院の左側面が間近に見えます。

左は室内から窓越しに撮ったサン・マルコ寺院。屋根の尖塔や彫像も手に取るように見ることができました。

次はサン・マルコ広場の入り口の朝の風景。

すでにご紹介済みのスポットなのですが、朝まだ早く街灯の赤味がかすかに残っています。霧にかすむシルエットは、運河の向かいにあるサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。幻想的な雰囲気が捨てがたく載せました。

既出の写真と違いもあります。それは広場の中央に並んで置かれた木の台。石畳も濡れています。

広場は海抜が最も低く、地盤沈下の影響をもろに受けて、高潮の時は30cmも浸水してしまうそうです。冬期には１〜２時間も浸水が続くのだそうですが、木の台は浸水時にその上を歩くためのものでした。

地盤沈下でベネツィアでは浸水が日常茶飯事になっていることを、目の当たりに体験しました。

次は朝のサン･マルコ寺院。ファサードの上の尖塔が、かすかな朝の光を浴びて創建当時の黄金の輝きを思い起こさせます。

正面中央入り口の上のベランダに、黒っぽい馬の彫像が４頭こちらを向いているのが分かるでしょうか。背景も黒っぽい壁なので、それに紛れて見えにくいのですが。

この４頭の馬の銅像は、1204年の第４回十字軍の時にコンスタンティノポリスから略奪してきたものだそうです。

左の写真は、上の馬の写真を撮ったベランダから見下ろした、サン･マルコ広場。

サン･マルコ寺院に対する３辺を建物が覆い、荘厳な大理石の柱廊に囲まれた広場です。完成したのは16世紀半ばとのこと。

サン・マルコ寺院の内部は、黄金の壁や天井、そして祭壇には2,000個もの宝石が埋め込まれた黄金の衝立があるのすが、それは撮れませんでした。

左は薄暗い中２階から撮った内壁の様子。黄金の雰囲気がかすかに見て取れます。
<照明に照らされた内部>↓

左は屋根の尖塔と彫像のアップです。よく見ると小さな屋根の斜辺に沿って、彫像がたくさん立っています。

それぞれにいわれがあるのだろうと思うのですが。

サン･マルコ寺院の隣がドゥカーレ宮殿です。左の写真は宮殿の中庭で、背景に見える円蓋と尖塔は隣のサン･マルコ寺院のもの。

ドゥカーレ宮殿はベネツィア共和国の総督の住居と政庁を兼ねていて、９世紀に建てられ15世紀に現在の形（既出３枚目と４枚目の写真）になりました。

室内はヴェネツィア派の画家の絵画で飾られており、「大評議室」の間にあるテイントレットの「天国」は世界最大といわれる大作です。残念ながら内部は撮影禁止でした。

また、運河を隔てた対岸には脱獄不可能という牢獄跡もあり、冒険心を誘います。
< 牢獄前でむしろ喜んで >
　　　　　　　↓

ヴェネツィアでは２月にカーニバルが２週間行われ、仮面と中世を模したコスチュームで着飾った人々がサン･マルコ広場を中心に大勢繰り出すそうです。
　　＜参考＞　　↓

その時の仮面を土産売り場で売っているのをよく見かけました。

サン･マルコ駅で水上バスに乗ると最初に目にする光景です。

左岸の教会は（既にご紹介済みですが）サンタ･マリア･デッラ・サルーテ教会。バロック様式の教会建築を代表する傑作だそうです。

大運河の右側を行くのが水上バスです。これは後景。

運河の右手をこちらに進んで来るのは水上タクシー。

今度はゴンドラがこちらに向かって進んできます。ゴンドラは手こぎです。

右手前の建物は１階・２階・３階がそれぞれ異なって様式で建てられています。こういう建物がけっこう多かったです。

これも１階から３階まで異なる様式ですが、「カ・レッツォニーコ」というバロック様式の建物だそうです。

いまは１８世紀の貴族の暮らしを展示している博物館で、石垣を積んだ一階の上にヴェネツィア風のアーチ窓を持つ２・３階が重なっています。

大運河を横切る橋が見えてきました。これがヴェネツィアのシンボル、レアルト橋です。

ここはサン･マルコ広場と並ぶ観光名所で、近くに水上バスやゴンドラの発着所があり、少し混み合っています。

大理石造りの橋と、その上の ショッピングアーケードのアップです。

店では貴金属や衣料品、皮革製品などを売っていました。

ゆったりとゴンドラが漕いで、いかにも「水の都」を感じさせる光景です。２枚続けてご紹介します。

ゴンドラといえば、「いのち短し恋せよ乙女、紅き唇 褪（あ）せぬまに」という歌を思い出します。

もとはアンデルセンの「即興詩人」に出てくる歌ですが、鴎外の訳は「朱の唇に触れよ、誰か汝の明日猶（なお）在るを知らん。恋せよ、汝の心（むね）の猶少（わか）く、汝の血の猶熱き間に」だったのを、吉井勇が「ゴンドラの唄」に作り直したのだそうです。

確かに詩情を誘う光景です。

水上バスと水上タクシーです。これなら水上バスの様子がよくわかると思います。

この白い建物は、「ヴェンドラミン・カレルジ宮殿」です。1509年に造られたルネサンス様式の建物

リヒャルト・ワーグナーが1883年にここで亡くなったのだそうです。

ヴェネツィアはヨーロッパの著名人のあこがれの地でもありました。

最後に、大運河にかかる橋の風景を２枚ご紹介します。

橋の上に連なる人々を見ていると、映画『ある皇后の運命の歳月』の対照的な場面を思い出します。

オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ１世の皇后 エリーザベトが、当時支配下にあったヴェネツィア（ナポレオンはヴェネツィアをオーストリアに引き渡したのでした）を夫と親善訪問した際、オーストリア支配に反対するヴェネツィア市民は大運河に面する建物の窓を固く閉じ、誰一人姿を見せません。ヴェネツィア市民の抵抗の意思を目の当たりにし、無人の大運河を進む船上で顔を引きつらせる皇帝と皇后エリーザベト。

ヴェネツィアの波乱に満ちた歴史を思い起こさせる場面でした。

エリーザベトは、それまで自身の結核の転地療養のため接触を禁じられていた愛する幼い娘ジゼラと、サン・マルコ広場のドゥカーレ宮殿前で劇的な対面を果たします。映画は、喜び抱き合うエリーザベト母子の感動的な情景を目にしたヴェネツィア市民が、初めてエリーザベトに心を開く場面で終わったのでしたが。