2014年9月20日山本舜悟先生講演会 広島市民病院にて
ドクター山本舜悟のブログ・・・・・「今にもおちてきそうな空の下で」
2002年京都大学卒
症例1.5ヶ月続く全身倦怠感
2ヶ月で体重2kg減少
38℃が2週間 抗菌薬で発熱はなくなる。その後少ししてまた発熱。抗生剤でまた改善。
結局約1ヶ月で熱は出なくなった。
しかし、全身倦怠感が続くため、悪性疾患を疑われ、CT,大腸検査、胃検査などを行われた。
経過中に血液培養を行われたが、陰性であった。
既往歴 子宮筋腫
約5ヶ月してc-ANCA陽性となり、腎臓内科へ入院。血管炎の臨床所見がなかったため、山本先生(感染症科)へコンサルトされた。
主訴 全身倦怠感 腰痛
身体所見 脈92 血圧120 体温36.5度 下肢圧痕性浮腫 胸部レントゲン 両側胸水。
血液データ WBC11000 血小板8.6万 総タンパク6.1 アルブミン2.6 抗核抗体 40 homogenous c-ANCA?15.7 陽性 p-ANCA 陰性 s-IL2R 1800 軽度上昇 LDH正常 低ナトリウム血症 血沈21
山本先生はすぐ感染性心内膜炎を考えて、結膜をチェック。結膜出血があり、診断。
収縮期雑音あり。
なぜすぐにぴんときたのか?
@5ヶ月生きて入れる感染症は結核かIE(感染性心内膜炎)だろう
A抗菌薬に反応がみられた。やはり感染症だろう。(結核でもクラビットは効くが)
B心不全の診断
CANCAが血管炎以外で上昇する場合を知っていた。 TBの40%? IE18%
その後の経過
すぐに心不全となりICUへ入室。弁の破壊による心不全の増悪のため。
転院。その後、緊急手術。脳梗塞の所見があったため、待機的に行いたかったが、間に合いそうにないため手術。術後脳出血で意識戻らす。
まとめと検討 ANCAイコール血管炎ではない。症状が一致するかよく考えること。
感染性心内膜炎の手術適応
@内科的にコントロールできない
A抗菌薬でコントロールできない(真菌感染など)
B塞栓症の予防
脳梗塞後の2週間は待ちたい。
反省点 せめて一ヶ月早く見つかっていれば。
血液培養陰性にひっぱられたドクターが多かった。
よくわからない発熱は、抗菌薬前に血液培養を。抗菌薬の後では、特に緑色連鎖球菌など培養されにくい。
その他
感染症科医は感染性心内膜炎だけは見逃すまいと思っている。
感染性心内膜炎の身体所見(結膜、手のひら、眼底、爪、心音:収縮期、拡張期)
腰痛のアセスメント IEと感染性脊椎炎は合併が多い。
黄色ブドウ球菌、溶連菌進行が早い。Subacute?は緑色連鎖球菌が疑わしい。(biridance streptococcus)
血培なしでスティル病の診断・・ステロイド7ヶ月内服・・・誤診で裁判に
子供の不明熱・・・不全型川崎病の診断 免疫グロブリン、免疫抑制剤が投与されるところが・・・・・最初にとった血培養でYersinia pseudotuberculosis・・危なかった。真菌は特殊な培養をオーダーすること。
市民病院症例 脳梗塞で発症したIE・・・一週間で手術
ドクター桶作(尾道) 10年目ドクター
着た。見た。勝った。 カエサル
症例2 86歳 男性
既往 高血圧、狭心症、慢性心不全、認知症。 たばこなし。結核の既往なし。
2014年2月喘鳴。右胸痛。
2月6日肺炎の診断で、ジェニナックを処方された。
2月14日レボフロへ変更。
16日下痢。
21日 トミロン処方。咳と痰は段々改善。
26日 初診。発熱と下痢が続く。W11900 CRP11.9 BP106/57 PR65 RR16 sPO2 95% alb2.6 BNP 313 CD毒素陰性 CD抗原陽性
CTでは肺炎像あり。 抗生剤の中止。(臨床所見が改善しているので)
メトロニダゾール(フラジール)を処方。
その後発熱と下痢は改善した。
外来受診時、むくみ
4月1日 心筋梗塞で死去。
考察 レントゲンは改善していないが、臨床症状が改善していので、肺炎は改善しているものと判断した。 下痢と発熱は偽膜性腸炎のためであった。
ディスカッション
受診時アルブミン2.6で予後不良と考えて入院させても・・・。
キノロンは結核に効果があるので、結核も鑑別には入る。
BronchioloalveolarCell Carcinoma・・・肺炎のようなCT像になる。
Clostridium difficile腸炎イコール 偽膜性腸炎ではない。
BMJ Googling for diagnosis as a diagnostic aid:グーグルによる診断は将来医師を上回るのでは。将棋もチェスもオセロもすでに人間はかなわない。
風邪の見方
風邪の頻度・・・60歳以上は年に一回。高齢者は風邪をひきにくい。
若い人 30代くらい 3回 40代くらいから2回 若者、20代はもう少し多い。
熱だけの人 プラスαを探すこと。 たとえば、歯が痛い・・・歯肉膿瘍
風邪の中に紛れ込んだ重症患者・・・PSL7.5gを飲んでいたが。
診察室へ入ってもらうとすごくしんどそう。血圧74 ・・・風邪と思ったら副腎不全。
風邪と思ったらシリーズ
肺炎
B肝
HIV
喉頭蓋炎
髄膜炎
肝膿瘍
感染性心内膜炎
熱帯熱マラリア
狂犬病
自然によくなってはじめてかぜと診断できる。
除外診断的なアプローチが必要。
ファーストステップ
気道症状が目立つ
気道症状が目立たない
気道症状がない・・・・これが要注意
自然経過・・・ライノなど 咳がだらだら続く 2週間以上
普通は のど・・・鼻・・・咳と出てくる。(2-3日中に)
7-10日くらいが普通の経過。 そこから悪化してきたらdouble sickning を疑う
アジスロマイシンは心血管死のリスクを上昇させるとの報告がある。
例 30代妊娠女性 アジスロマイシンの内服で死亡 ・・・QT延長症候群がもともとあった。
副鼻腔炎について
内科と耳鼻科では話がかみ合わない。 耳鼻科はより重症を診ているケースが多い。三角の図
0.2-2%・・・副鼻腔炎の中の細菌性の場合
ウイルス性でも黄色い鼻水はでる。
ご自身の経験。上顎洞を抑えたときの痛み・・・グラム染色でグラム陽性菌。しっかり鼻をかんでいたら翌日には治った。細菌性でもよくドレナージできていれば良くなる。
副鼻腔炎の画像検査はほとんど必要ない。
キーワードはdouble sickning
痛みが7日以上続く。
治療 ステロイドの点鼻・・・・粘膜の腫れをとる。
抗生剤は、7日以上続くほほの痛み、あるいは痛みがとても強いとき。
ファーストチョイスはアモキサシン、アンピシリン。オーグメンチンでなくて良いのでは。
のど型 細菌性は10% 成人のGASは5-10%くらい
子供の場合は細菌性が15-30%
いずれにせよ、細菌性はGASのみをチェックする。
GASの治療目的は
@合併症の予防
@リウマチ熱・・・NNT3000−4000と高い
Aへんとう周囲膿瘍・・・NNT20−30
B糸球体腎炎の予防はできない
A症状の緩和・・・1-2日早くなる
B拡大を防ぐ・・・子供がいるときなど
治療 IMでなければ、アモキサシリン500x3でもよい。(IMでは胸鎖乳突筋の後方が腫れる)
ヨーロッパの国は7日間治療のところもあり。
Drセンター ・・・別の菌もいるのでは?スコアが3点なら抗生剤治療を。 Ex. Fusobacterium 迅速検査陰性の時
いずれにせよ、Center scor 4点以上は必ず治療する。
のど型のRed Flag sign・・・・口が開かない、ひどく痛む(人生最悪)、tripod position
口蓋垂の変位(図あり)・・・drainage を要す
急性喉頭蓋炎・・・喉頭蓋がパンパンにはれる(図あり)
成人は咽頭痛
子供は呼吸困難が多い。
気管支炎型:咳型
Q 気管支炎に抗生剤は必要か?
いつものかぜと同じですか?
抗生剤は免罪符にならない。
胸部レントゲンは側面も。
その他
恐怖と孤独が人間を成長させてくれる。 井村洋
平位ドクター 酸素飽和度の意義は? とても大切。だが、呼吸数と酸素飽和度がよくても肺炎のことはある。
レントゲンの読み。 見落としポイントを重点に。心陰影とのシルエット。2弓とのシルエット。横隔膜の下。
Dr中西。 咳の患者に1-2週間で吸入ステロイドを使う医者が多い。
タイムコースと咳喘息の問診が大事。
私は咳だからすぐにクラリスを出したりはしない。
急性の咳はポララミンが効く。
開業医が抗生剤を出すのは・・・2回目にきてくれなくなりそうだから。
喘息なら、夜でるだろう。
マイコや百日咳なら一日中。ただ、ほとんどない。
九州のドクター 高齢者の発熱は脱水の影響も考える。アルブミン2.6なら予後不良。
