寺沢秀一先生講演

田坂メモリアルレクチャー          2014年2月8日

講師 寺沢秀一 金曜日の午後4時半に来院した患者さん。どうする?

1.三叉神経第一枝の帯状疱疹

 (1)中枢神経へ浸潤するリスクがかなりある・・・三叉神経から脳へいく枝がある
 (2)かなりの確率で角膜炎をおこす・・・眼科へ紹介しておく必要性あり(トラブル予防のため 治療は抗ウイルス薬)
 (3)鼻へきていたら、目にも来ているものと考えること(ハッチンソンサイン)
 (4)ラムゼイハント症候群もかなり脳へ浸潤する。
 (5)外耳道炎のなかにラムゼイハントが混じっている。抗ヘルペス薬の適応よく考える。
 (6)頭皮の中の帯状疱疹を見落とさないよう
 (7)胸部の帯状疱疹・・ちゃんと後ろまで見ること
 (8)帯状疱疹は運動神経にくることもある。表面の痛みだけとは限らない。
 (9)肋骨骨折、難治性疼痛の病名でディユロテップパッチ使える
 (10)帯状疱疹で尿閉になることがある
 (11)寺沢先生はよく患者に電話をして、経過を確認する(患者と家族は喜ばれる)
 (12)臨床は患者を守る知恵がいる
 (13)高齢者の帯状疱疹は悪性腫瘍を、若年者はHIVを疑うこと・・・がん検診、HIVチェックを
 (14)体育会系の研修医は技術習得が早い。だが天狗になって患者に優しくなくなりやすい。
     草食系の研修医はのびるのが遅いが、あとからのびる。医者に向かないとか考える必要はない。

  2.急性喉頭蓋炎について

 (1)血ばいを2セットとって、ロセフィンをいれてすぐに送る
 (2)一見風邪引き様だが、嚥下痛がひどく、声が変わる。口の中に唾液がたまっている。
 (3)日本の小児に急性喉蓋炎が少ないのは、積極的に抗生剤が使用されてきたからか?
   (私見ではあるが)
 (4)輪状甲状軟骨切開を・・・2人以上の気道確保のプロがいる病院でする。
   酸素を猿轡状態にしながらする。入らなかったらすぐに気切できる状況で。

3.16歳男性 縦隔気腫

 (1)外傷性でなければ、痛み止めで様子を見てよい疾患である。いきむことは避ける
 (2)Hammans crunch プチプチ音が呼吸と心音に影響を受けながら存在する。
 (3)頚部側面のレントゲンで食道の上にエアーが見える。 ふだんから頚椎のレントゲンで、正常の喉頭蓋と食道のところを見慣れておくこと
 (4)あまり急がないでよい病気。
 (5)食道破裂は酒飲みのおじさんがなる病気。すごく痛がる。 気胸+縦隔気腫+胸水で疑う
 (6)心筋炎はとても怖い病気である。見つけるのは難しい。(痛みや労作時の呼吸困難感があれば、当然疑いやすいのではあるが)
   第六感。 わりと嘔吐があったり、肝腫大があったりして急性胃炎ぽい。
   なんとなくの重症感。 フリクションリブ(T音とU音の間に)
 心拍数が37度くらいなのに110あったりするとあやしい。
 いずれにしろ、なんとなく疑ったら、心電図、CPKなどとること。

4.左下腹部痛の30歳女性

 (1)妊娠反応は勝手に出してよい。かのティアニーも病歴無視で出すようにパールにしている。
 (2)裏技 ・・・妊娠検査薬 は血液でも反応がでる。
 (3)生理間隔、出血パターン、痛みのパターンを細かく確認する。
 (4)生理間隔・・・この2-3ヶ月の正確な間隔
 (5)出血パターン・・・一日目 少し 2日目どーっとでる  3日目4日目スーッと引く
 (6)痛みのパターン・・・一日目はそこまで痛くない
 (7)容姿や思い込みでなく検査を
 (8)妊娠で微熱気味に
 (9)検査の必要性はいくらでも説明できる(レントゲン被爆の低減が必要である。胎児に危険性のある薬物を使わずにすむ。特別な検査でなくルーチン検査であること。それでもクレームがついたら、ポケットマネーで出す。)

5.フィッツフューカーティスについて
 (1)PID顔貌・・・シャネルのバック、厚化粧
 (2)生理が長いという訴えが多い。・・・生理中から生理後5日内が多い。 腹痛、発熱
 (3)生理中の性交でなりやすい・・・防御機構が破綻している時期なので
 (4)膿尿があることがある。しかし、だまされてはいけない。生理中なのであることである。
 (5)息を吸うと右上腹部が痛むとあやしい。胆のう炎の痛みと異なる
 (6)右上腹部からはじまって、24時間したら、両側の下腹部へと移動していく
 (7)虫垂炎は心か部から始まって、右下腹部へ移動・・食欲があるかどうかが大事なポイント。
  PIDの人は食べれる。 PIDは筋性防御が弱い
 (8)一回治療して婦人科へ送ってよいのでは。遅くなると、不妊症の原因に??
 (9)ロセフィン1g+マクロライド
 (10)腹腔鏡でみていると、一定の割合で肝周囲炎は存在する。
    脾臓周囲炎もあり、やはり、呼吸で痛い。
 (11)月経中に起こる発熱・・・タンポンによるトキシックショックシンドローム(toxic shock syndrom)
 (12)卵胞出血はだいたい自然に止血する。
 (13) 片側の激痛、無熱、妊娠反応陰性・・・卵巣茎捻転
 (14) 無石性胆のう炎・・・虚血によりおこる。年寄りの病気
 (15) 生理周期でおこる病気を知ること

6.7歳いんのう水腫
 (1)圧痛がはっきりしないときは、範囲を広げて考えること(上か、下か)
 (2)圧痛がはっきりあるときは、その奥に病変がある。
 (3)精巣捻転は下腹部痛だけのひといる。・・必ず睾丸をさわるように  40歳以下は
 (4)すこしでも睾丸痛があれば、泌尿器科へ送る。6時間以内
 (5)泌尿器科は精巣捻転
   胸部外科は胸部大動脈破裂
   脳外科はくも膜下は裂   
     どんなときでも、疑いだけでおくってよい。
   そういう人達なのである。
 (6)腹部の触診・・・5段階にわける
    @圧痛なし、自発痛のみ・・・虫垂炎の初期。心筋梗塞の心か部痛
    A圧痛のみ・・・・胃潰瘍
    B圧痛 + リバウンド・・・PID,卵巣出血、婦人科の病気
    C圧痛 + リバンド + 筋性防御・・・・・虫垂炎
    D板状硬・・・・潰瘍穿孔

 (7)リバウンドはとんとんたたくだけで十分  ハリソン

     

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