2013年11月18日
抗がん剤だけはやめなさい (文春文庫) [文庫]
近藤 誠 (著)
ご存知、近藤先生の本です。
「患者よ、癌と闘うな」をはじめとして「成人病の真実」、
菊池寛賞を受賞した「医者に殺されない47の心得」など
多数の本を書かれています。
しかし、医者でも嫌う人は多いです。
おそらく、自分の診療、ひいては自分の存在を否定されると感じるからだと思います。
「大人な」人ならこのような書評も書かないことでしょう。
私の興味はただ1点、科学的な根拠に説得力があるかだけです。
内科研修医の頃、「患者よ、癌と闘うな」
「それでもがん検診うけますか 」(癌もどき理論)を読みました。
結果的に病気の診断や抗がん剤の有効性に疑いのない血液分野にすすみました。
それはそれで、大変な分野でした。
全員が治癒するわけもなく、手をかえ品をかえ(抗がん剤や移植療法など)癌とたたかい続けなければなりません。
近藤先生の主張
1.カプランマイヤー曲線の見方(いんちきの見破り方について)
@なおらない癌の生存曲線は「きれいな」指数関数曲線になる。いびつな曲線は、すなわち人為的操作が入ったと考えられる。
多いのは下に凸になるべきなのに、上に凸になっている新薬の生存曲線
Aきれいな指数関数曲線でも、きっちり経過報告をせず、いい成績をだすこともできる。
一見するとタキソールが良く見える。にもかかわらず、なぜか最終的に生存率が交わる。
きっちりと経過をみると下図のようになるはず。
(メバロチンのメガスタディも、おかしな曲線と極端な症例数の減少があります。生存曲線ではありませんが)
2.大腸がん等の新規薬剤が有効とされているが、「リードタイムバイアス」によると考えられる。 すなわち、画像検査の進歩により転移が早期に見つかるようになっているため。
3.胃癌の発見数がふえているが死亡数はへっていない。がんもどき理論の正しさが説明できる。
医学統計の書籍 ドキドキワクワク論文☆吟味。医学統計ライブスタイル [単行本]
とともに、
臨床医必読本ではないでしょうか。
ノバルティス事件のように製薬会社と学会に欺かれないために。