林寛之先生講義
第七回田坂メモリアルレクチャー(平成19年2月逝去) 2014年2月9日
講師 林寛之先生
1.いろいろな話
(1)unsuspected killer
(2)医療訴訟の話・・・受け入れ拒否が問題になっている
(3)とりあえずみないとはじまらない(小児1%が重症。成人10%が重症)
(4)医者が失敗するのは同じパターンが多い。 同じパターンに気をつけろ
(5)1000例ルール・・・臨床研修は症例数が多いところで
(6)医者が一番できないのは頭を下げること・・・救急医は人の顔をみるとまずあやまる(笑い)
(7)まずは患者さんの話をきく「・・・ですよね」
(8)訴訟は3年後にやってくる
(9)救急医は武闘派が多いと思われている。人やものに当たるような人。
(10)ドクターは怒ってはいけない。(切れていない振りでよい)
(11)医者は100点満点を期待される職業。 しかし、それは無理なので患者と敵対してはいけない。
(12)割り箸事件は裁判に10年かかった。ドクターの人生はくるっただろう。
(13)皮下気腫の胸部レントゲンを「眼科医」が読めず。・・・結局緊張性気胸で急死して訴訟。
(14)裁判官は医療を知らないので、適切な判断は全く期待できない。
(15)カルテに書かれた言葉のみが大きな意味を持たざるを得ない。
(カルテに記載しないと裁判で負ける。○○の病気は否定できるなどと。
(16)何かおかしいと思ったら、探す、説明する、書く。(思考過程を記録に残すこと)
(17)To err is human・・・to forgive is devin
(18)頻度が少ない医療機関ほど優秀でなければならない。
(数の多いERほど見落としが少なくなる)
2.アメリカは病んでいる・・・経済の原理で回っている
(1)虫垂炎の手術に380万円
(2)手術3000万円で値引きして1300万円になる。
(3)MRI検査をうけると50万円かかる
(4)救急搬送されて2日入院したら120万円
(5)レントゲン一枚とられて風邪の診断・・・10万円
(6)AIUの海外旅行保険 1000万円まで すぐに超えるので注意
(7)交通事故で630万円
(8)バイク事故で4日入院1300万円
(9)アレルギーが出て受診。45分間の診療。H1ブロッカー、H2ブロッカー、ステロイドで600万円かかった。
(10)出産後赤ん坊がNICUに入院2週間。 650万円。税金の控除があって518万円。
(11)カナダで出産 1.5万円。基本ただ。
3.心筋梗塞について
(1)心筋梗塞は98%しか診断できない
(2)林先生もお母様をかなり疑ったものの診断できなかったとのこと。
(3)胃切除後の患者 冷汗があり、ダンピング症候群による低血糖と間違われた。
結局心筋梗塞であった。・・・よくある失敗パターン
(4)狭心症や心筋梗塞の既往のあるひとが最も危険人物
(5)見逃しパターンは(女性、高齢者、DM)
女性に心筋梗塞が少ないという思い込みが失敗をもたらす。
高齢者・・85歳以上の心筋梗塞の最も多い症状は息切れ。・・・心電図の閾値を低く!!
DMは痛みがない。
(6)胃が痛い心筋梗塞は、救急室では全くめずらしくない。
(7)下壁梗塞は心か部へくる
(8)心筋梗塞の見逃しの賠償金は6000万円
(9)冷や汗+30cmの法則・・・心臓の周り30cmで冷や汗があったら心電図を!!!
のど(歯痛もある)、両肩(右肩多い)、背中(肩甲骨の内側)、胃
(10)冷や汗のLR(陽性尤度比)4.6で高い
(11)放散痛のLR(陽性尤度比)7.1と高い。右肩のほうが多い。
(12)痛みのない心筋梗塞は22−35%で少なくない。 (糖尿病でなくても)
(12)指で示せる範囲のせまい胸痛・・・心筋梗塞ある。2%!?
(13)とりあえず心電図を!!!(ナースが判断でどんどんとっている)
(14)心電図は前と後でみる。(以前のものと後のもの。)(8時間後のフォローアップが基本)
最低3-4時間して再検する。
(15)ミラーイメージがあればAMI(下壁は70%、前壁は30%出現)
(16)AVLのST低下は早く出る。(その後からU、V、AVFが上昇する)
(17)ラピチェックでは否定はできない。
(18)エコーの感度は93%と高い。特異度は低い。
(19)受診者が少ないERは見逃しやすい。
(20)カナダではひたすら患者がモニターベッドで経過観察されていた。
(21)嘔気嘔吐、息切れ、倦怠感、放散痛はとりあえずEKGを。NERD:Nausea,Exertional CP,
radiation pain, diaphre
4.心電図
(1)スガルボッサ型 V6で脚ブロックのときは Tは陰転するはずだが、逆になっていたら虚血。
ペースメーカーリズムでもこれで読める
(2)新規完全左脚ブロックはもはやあわてない。(例外は心不全、AVブロック)
(3)AVRのST上昇・・・左主冠動脈狭窄 S5STE
(4)diffuse STD+AVR STE
(5)下壁の心筋梗塞・・・V4R V5RのST上昇をさがせ 右室梗塞をさがせ!!
ともかくすぐにアスピリンを 解離の合併の頻度は低い。
5.解離性大動脈瘤
(1)脳梗塞は痛くない。
(2)裂けるような痛み
(3)痛みの移動 (陽性尤度比 7.6)
(4)肩甲骨の下側かつ中あたりが痛い。
(5)すぐにエコーで解離と心タンポナーデを確認する。・・・時間はかけすぎないこと
(6)@痛みの移動(がつんときて、いっときして痛みが引く)
Aレントゲン上 上縦隔の拡大・・・あまりあてにならず
B血圧の左右差・・・30%に LR5.7 20以上
(7)失神で発症する(解離、心タンポナーデ)がある。
心タンポナーデで血圧下がりうる。
(8)Quality of pain・・・・ sharp
radiation pain・・・・・あり
severity at onset ・・・・ひどい
(9)解離とSAHはけろっとして受診することがある。
D-DIMERは 400以上
500以上なら感度高い 特異度56% 感度97%
(10)malperfusion syndrom・・・・いろんなところにいろんな変な症状
(11)血圧の左右差20以上は通常でも20%もあり
(12)新規の心不全は解離を疑うこと
(13)疑わなければ見つけられない・・Michel Debarkey 90歳をすぎて解離の手術 8000万円かかった。
思い込みは間違いの元
6、肺梗塞
(1)S1Q3T3よりもスペシウム光線
(2)V1-V3およびVのinverted T・・・これは役に立つ!!
(3)Ddimer は除外のためのけんさ
(4)病歴・・・ピルの内服、車でねた。片足が腫れた。 SPO2 90%だった。
32歳女性。労作時息切れ。
(5)PERCABCS d-dimerをせずに鑑別する方法
PE rule out
入院中のCOPDの人でよくならない人・・・PEの合併25%
入院したら弾性ストッキングを 歩かなくなるので
(6)常に思考過程をカルテへ書くこと
7.ハイリスク疾患
大動脈解離
くも膜下出血
ねていた・・・・頭部外傷
老人の失神・・・・心血管性失神の除外を
(2)お腹の病気はとにかく、虫垂炎と外妊をマークする。
虫垂炎は17時間するとはっきりしてくる。 マーキングを
(3)血液で妊娠反応はしっかり出る。
(4)子供には腸重積という病気
(5)乱暴に言えば、心筋梗塞とくも膜下出血を見落とさないことが一番大事。
(6)頭 くも膜下出血、髄膜炎
胸 心筋梗塞、 肺梗塞、大動脈解離
腹 外妊 虫垂炎、心筋梗塞、AAA, 腸重積
創や異物(骨折) レントゲンとってないとだめ
その他、 敗血症・・・・熱で判断しないこと、脈や呼吸数大事。 低体温になることあり。
癌
心内膜炎
8.エコー
(1)肋骨骨折のエコー・・・だれでもわかる。後ろ側も丁寧にみる。
部位の特定は抑えるのではなく、とんとんたたく。
痛いところにマジックでしるしをつけて、エコーでみる。
(2)肺エコーの設定・・・アーチファクトが出やすい設定がよい。
A-LINE 横線 しましま 空気 気胸 呼吸の移動でみる。
B-LINE 水 縦しま 全部にあったら、肺水腫 一部にあったら胸水あるいは 肺炎
年寄りは誤嚥性肺炎・・・後ろ側、右の一部にでる。
(3)心筋のたこおどり・・・・Vf 心電図上はフラットになっていることがある。
(4)Rush exam
pump heart タンポナーデ 右室の拡大
tanc IVC UVD FAST
pipe AAA DVT Aorta ileus(アイリウス)
(5)FAST(focused assesment sith sonography for trauma)
心のう・・・モリソン(胸くう、脊柱もみる)、肝上部(200cc)・・・脾臓(400cc)・・・膀胱周囲(600cc)
押したり、引いたりしてみる
(6)凝血塊は白く見える
(7)ボリュームは下大静脈でみる。・・けんじょう突起から右へ倒す 中間は役に立たず。
ぺったんこか、ぱんぱんか。 呼吸での変動が大きいか小さいか。
(8)CVPはもはや役に立たないのでやらない。
(9)バイタルが安定したら、パンスキャン
(10)気胸はエコーでスライディングサインがあれば、正常。 普通はスライディングする。
息を吸ったりはいたり。 エコーは、肋骨をみながら縦にあてる。
(11)GU穿孔は フリーエアーをエコーで見つける
(12)胸骨骨折もエコーで見える
どやわらかいもの ・・いいほうの鼻に注射器でピュッと吹く。
(3)硬くて隙間があるとき、 クリップを細工してひっぱる。
(4)鼻の異物はトライしてよい。
(5)鉄は磁石でとる。
(6)ボタン電池ややばいので耳鼻科へ
(7)かならず反対側もみること
(8)キシロカインスプレーの使用
(9)耳に虫・・・キシロカインをいれてとめる。
耳の異物をなめてはいけない。 耳は深追いせずに耳鼻科へ
10.その他
(1)磁石の誤飲は 2つだと、腸管をはさんで壊死させる。1個なら大丈夫。
(2)ボタン電池・・レントゲン上 ダブルデンシティとなる。よくみると分かる
(3)ボタン電池飲み込んだら、2時間以内にとること。
(4)食道にとどまるとまずい。 胃に落ちれば多少胃炎になるがほっといてよい。
食道をすぎればあわてない。幽門さえすぎればよい。
(5)透視下で、バルーンをふくらませてとるやり方がある。
(6)12mm以下、12歳以下はほっとけばよい。
6歳以下、15mm以上 2日動かず。
11.肘内障
(1)子供は手首をもってくる。
(2)上腕骨かじょう骨折を疑って、よく触診すること。必要ならレントゲン
(3)アイーンで回内がよい。
(4)1-2歳はゆっくりでもはいる。 3−4さいはスナップでぱちんと入れる。
(5)失敗しまくったらはれて入らなくなる。
12.顎骨脱臼
(1)口を大きく開けると入らず。
(2)自分の指にガーゼを巻く。軽くかませる。
(3)その状態で、@手前を上に A手前を上にひきながら B奥は下へやる
13.擦過傷
(1)キシロカインゼリーで15分で無痛にする。
(2)歯ブラシでしっかりブラッシングを
(3)局所麻酔はあっためると良いらしい。
(4)1ccを30秒かけて、なるべく細い針で、創縁の内側にさす。
14.つりばり
(1)はりを糸をまいてひっぱる。
(2)おさえつけて ぱんとひっぱる 動画あり
15.指の麻酔
1. (1)一箇所だけさすやり方 ・・掌側から2−3cc あるいは3−4cc
2. ぎゅーっと皮をひっぱって注射
そのあとよくもんで15分
16、指の無血野のつくりかた
駆血帯を指先からまいていく。 根元をのこして、指先ははずす。
17.内科医でもできる 肩関節脱臼の治療・・・とても痛い。
(1)肩はアホでも注射ははいる。 開いているので。0.5% 20cc関節内注射
(2)手を下へひっぱりながら、肩甲骨の下端を内側に回す。
3分もあれば入る。
(3)FARES メソッド ぷらぷら法。 手の平を上にぷらぷらしながらひっぱる。
(4)結局はいかに力をぬいて肩甲骨を回すか。