2013年6月2日 100歳まで長生きできるコレステロール革命
100歳まで長生きできるコレステロール革命
大櫛先生講演動画
うーん、タイトルがいかがわしいですね。出版社につけられたタイトルでしょうか?
大変まじめな内容なのでもう少しおとなしいタイトルがよいと思いました。
以前よりコレステロール仮説に異論を唱えておられる大櫛先生の本です。日本脂質栄養学界の先生で、一昨年も大論争だったことをご記憶の方も多いかと思います。
一昨年は「因果の逆転を理解していない」といった議論が、同じところをぐるぐる回り続けていました。
一方で近年、LDLコレステロールのサイズや酸化LDL、中性脂肪値との関連、アポリポタンパクBなど、より精密な情報が得られるようになってきているのは、これまでも紹介してきたとおりです。(現状の私のスタンスは糖質制限です。)
今回の本の特徴は、糖質制限の考えが全面的に取り入れられていることでしょう。
また欧米でコレステロール仮説の見直しが進んでいることが紹介されています。
一度アメリカのガイドラインで治療が必要か計算してみては?(これもすでに古そうですが)
冠動脈疾患10年リスク評価ツール
上記使い方、女性、高齢者についてのスクリーニング上の注意
JALS急性心筋梗塞 リスクシート(日本人用)
ちなみに、日本人の心筋梗塞のリスクはアメリカ人の3分の1と考えられるので、出てきた数字を1/3にすることになります。
(現在、冠動脈疾患、それ以外のアテローム動脈硬化症(末梢血管障害、腹部大動脈瘤、症候性頸動脈疾患)や糖尿病のない人が対象です。)
アメリカのLDLコレステロールの基準値は、薬物治療開始ラインが190mg/dlで、生活習慣の改善目標値が160mg/dlです。つまり、160mg/dlまでは生活習慣の見直しも不要だということになります。(補足:リスクファクターがない場合)
2004年8月1日、米国の新聞ワシントンポストに世界で最も権威のある医学雑誌であるニューイングランドジャーナルオブメディスンの名誉委員長のKassirer JP氏が、2面ぶち抜きの記事を書き、医学会と製薬企業との不正な経済的結びつき(利益相反)を内部告発しました。これ以降、利益相反の強い人は、公的な委員には就任できなくなりましたし、医学論文の投稿時や研究補助金の申請時には製薬企業との経済的な関係を公表することが義務付けられるようになりました。
するとどうでしょうか、2006年以降に発表された無作為化試験では、従来スタチンが必要と思われていた糖尿病患者、家族性高脂血症、大動脈狭窄症、慢性心不全、心不全患者、血液透析患者、心筋梗塞患者でもスタチンが不要とされる結果になっているのです。米国コレステロール治療ガイドラインは2004年にマイナーな変更が行われて以降は、発表されることはなくなりました。米国では、内科医師会が1996年、2004年、2007年と繰り返し声明を発表して、コレステロール値を測定する必要があるのは、若い人で家族性高脂血症の疑いのある人のみとして、検査そのものを制限していました(ACP Ann Intern Med 1996;124:515-517) 2010年、利益相反の総本山であった米国心臓病学会(AHA)でも「心血管系疾患のない人たちの血圧やコレステロール検査は5年に一回でよい」としました(ACCF/AHA Circulation 2010;122:e584-e636)。英国から発信されている信頼性の高い診療指針であるCOCHRANEは2011年に、日本のように健康診査を受けてコレステロール値が高いというだけの人にはスタチンの処方は不要と結論しました(COCHRANE Statins for the primary prevention of cardiovascular disease 2011)。
興味のある方は、まえだ循環器内科の先生が詳しく解説をされています。
こちらは、日本人用で、中性脂肪値も入力するようになっています。
正直にいうと、臨床医にとってこのテーマはとても難しい問題です。続きはまた。