2013年5月12日 書評「ヒトはなぜ太るのか?そしてどうすればいいか《その2 糖質制限と悪玉コレステロール


これまでも、糖質制限の項で「糖質制限で高脂血症が改善する《説明をしましたが、同様のことが説明されています。

また、飽和脂肪酸の良い影響についてもコメントされていました。


すべてのLDL粒子が同等に有害、または粥状動脈硬化症を引き起こすわけではなさそうなことである。「粥状硬化症《とは、専門家が使用する用語で、粥状動脈硬化をおこすものまたは悪化させるものを意味する。血中に存在するLDLには、大きくて軽いものや、小さくて密度が高いものがあり、これらの間には段階がある。小さくて密度の高いLDL粒子は粥状動脈硬化を引きおこしやすいように見え、敬遠したいものである。このLDL粒子は動脈の壁に入り込みプラークを形成する。大きくて軽いLDL粒子は無害であるように見える。

 炭水化物の多い食事は、HDLを減らして中性脂肪を増やすだけではなく、LDLを小さく、密度を高くするため、これは重要なことである。これらの3つの効果はすべて、心臓病の危険性を増加させる。脂肪を多く含む食事を食べて炭水化物を避けるとその逆が起こる。 HDLは増加、中性脂肪は減少し、血流中のLDLは大きく、ふわふわになる。これらの変化は、それぞれに、または全体として、心臓発作の危険性を減らす。そのため、1970年ころの科学では悪いことと思われていたこと(LDLコレステロールに対する飽和脂肪酸の影響)は、2010年ごろの科学では再びよいこと(LDL粒子そのものに対する飽和脂肪の影響)となる。



2013年3月18日

 糖質制限で高脂血症が改善すると考えられる理由について


少しマニアックな内容で申し訳ないですが、興味のある方のためにまとめてみました。


まず、糖質制限したときに起こることですが

(1)高中性脂肪血症が改善する (しっかり糖質制限すると70mg/dl程度までは下がる方が多いようです。ちなみに江部先生は40-50mg/dlくらいらしい)

(2)HDLコレステロール(いわゆる善玉)が増加する

(3)LDLコレステロール(いわゆる悪玉)は増加したり減少したり上変だったりする。



次に近年いわれるようになってきた事実として


(1)LDLコレステロールの中でも小型の粒子が動脈硬化の原因となっている

(2)中性脂肪が高い人は小型のLDLコレステロールが増加している。

逆に中性脂肪が低い人は小型のLDLコレステロールが少ない。

 (すなわち中性脂肪値とLDLコレステロールのサイズに逆相関が認められる)



参考資料

LDL particle number and risk of future cardiovascular disease in the Framingham Offspring Study—Implications for LDL management , December Volume 1, Issue 62007, Pages 58Journal of Clinical Lipidology3–592

Methods

Concentrations of LDL-C and non–HDL-C were measured chemically and LDL-P and VLDL-P were measured by nuclear magnetic resonance in 3066 middle-aged white participants (53% women) without CVD in the Framingham Offspring cohort. The main outcome measure was incidence of first CVD event.

Results

At baseline, the cholesterol content per LDL particle was negatively associated with triglycerides and positively associated with LDL-C. On follow-up (median 14.8 years), 265 men and 266 women experienced a CVD event. In multivariable models adjusting for nonlipid CVD risk factors, LDL-P was related more strongly to future CVD in both genders than LDL-C or non–HDL-C. Subjects with a low level of LDL-P (<25th percentile) had a lower CVD event rate (59 events per 1000 person-years) than those with an equivalently low level of LDL-C or non–HDL-C (81 and 74 events per 1000 person-years, respectively).





Figure 1

中性脂肪の値とLDLの粒子サイズ(棒グラフの高さ)が逆相関している。

(LDL-C/LDL-particle numberで計算している)





Figure 2

Low LDL-P(すなわち小型化していないグループ)は心血管疾患が少ない



 

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