2013年4月18日
「治療に活かす!栄養療法はじめの一歩」
研修医向けに書かれた栄養療法の本ですが、一般書としても、栄養を考える上で役にたつと思いました。
1、栄養状態の評価としては血清アルブミンを第一に挙げているが、炎症や肝機能、ネフローゼ症候群(蛋白尿のひどい病態)、甲状腺機能亢進症などを除外して考える。(血清アルブミンは半減期が21日と長く、短期的な評価には向かない)
2、総リンパ球数が栄養状態の評価に使える。(リンパ球数2000以下は栄養障害と考えられる。 ちなみにこの検査は一般の血液検査に含まれています。)
3、食欲低下に関与する可能性のある薬剤(ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、抗うつ薬、解熱鎮痛薬、ビタミンD製剤、鉄剤、H2ブロッカー、ほとんどの抗菌薬)をあげている。
4、末梢静脈ルートより1000キロカロリー以上のエネルギーを投与することができる。
5、糖質だけの輸液でも十分なエネルギーを投与できるが、十分な栄養は供給ではない。
糖質だけの栄養では、筋肉が崩壊してしまう。
6、「第3章9、脂肪アレルギーを克服しよう」の中で、日本の脂肪製剤の状況について述べています。
脂肪乳剤の投与に抵抗を示す人は多い。栄養療法の普及により日本における脂肪乳剤の位置づけは徐々に変わりつつあるが、それでも、静脈栄養としての脂肪はまだまだ迫害されているといっていい。
これは、日本の中心静脈栄養がブドウ糖に偏ったアメリカ方式を導入してきた経緯があるためと考えられます。
7、微量元素欠乏症(特に亜鉛とセレンは比較的欠乏しやすい)
8、小腸のエネルギー源は、グルタミン50-60%、ケトン体15-20%、糖5-7%。
大腸のエネルギー源は、短鎖脂肪酸(いわゆるケトン体)とのことです。
私は、上記について全く知識がありませんでした。
上記を考慮したGFO(グルタミン、植物繊維、オリゴ糖を含む)という成分療法があるそうです。
腸管は消化吸収のみではなく、強力な生体免疫機能の役割を担っている。特に腸管関連リンパ組織(gut associated lymphoid tissue: GALT)を有していることに大きな意義がある。GALTは、全身のリンパ系組織の約60%をしめるリンパ球や抗体から構成される人体最大の免疫臓器である。ここは何度強調してもよい点だ。腸管に十分な栄養がいきわたらなければ、人間の免疫機能の60%が十分に機能しないことになるのだ。
GFO療法は、腸管へ十分な栄養素(グルタミン、短鎖脂肪酸)を供給することで腸管の状態を保ち、腸管の免疫機能を十分に発揮させるための栄養療法といえる。
少し、専門的な話が多くなりました。