2013年4月15日

介護されたくないなら粗食はやめなさい


最近よくNHKなどに出てこられる熊谷 修先生の著書です。

介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者とのことです。


内容的には、戦後の平均寿命の延びた栄養学的な理由を紐解きながら、「コレステロール悪玉説」の否定(高齢者について)、「栄養指標は血清アルブミン」、「50歳以降は肉や卵や油脂を積極的に摂ろう」などと述べています。


これは、裏返すと糖質制限の考え方にも合致すると思えます。

(著者は1900年頃の静岡の農村の食事を例にあげています。エネルギーの9割以上を穀類から摂取している。油脂の摂取はほとんどない。動物性食品も極端に少ない。このような時代は、結核が蔓延し、感染症による死亡率が高く、特に小児の死亡率の高さは深刻なものがあった。)


まだ日本人の平均寿命は40歳代であった。シニアに到達することは、幸運に等しかったのである。  

その原因は、炭水化物エネルギーに依存していて、動物性たんぱく質食品と油脂類の不足からくる体構成と免疫防御機構などの未成熟である。

すなわち「栄養失調」が背景にある。



戦後の平均寿命の延びの理由が、「動物性タンパク質と油脂類の摂取が増えたため」という考えは栄養学的な定説となっていると思いますが、一般的にはそのような理解になってないのはなぜでしょう。

つぎに、筆者らの指針を紹介します。


「老化を遅らせるための食生活指針」

1、欠食は絶対に避ける。

2、動物性タンパク質を十分に摂取する。

3、魚と肉の摂取は1対1程度の割合にする。

4、油脂類の摂取が不足しないように注意する。

5、牛乳を200ml程度飲む。

6、食材の調理方法や保存方法をよく知る。

7、調味料を上手に使い、おいしく食べる。

8、自分で食品を購入して、食事を準備する。

9、会食の機会を積極的につくる。

10、余暇活動を取り入れた運動習慣を身につける。




2、3について・・・タンパク質摂取不足の方が多いようです。特に肉類を摂らないシニアが多いようです。

タンパク質を効率よく体内で利用するには、必須アミノ酸のバランスが整っている動物性タンパク質がベストである。


4について・・・油脂類の摂取も不足しているシニアが多いようです。飽和脂肪酸:単価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の摂取比率が1:1:1が理想と述べています。

我が国のシニア層の魚介類と肉類の摂取バランス比から推定すると、圧倒的に魚介類に偏って食べているため、飽和脂肪酸と単価不飽和脂肪酸の摂取不足が推定される。

ちなみに飽和脂肪酸はバターや肉や牛乳の脂です。単価不飽和脂肪酸はさば、豚肉などの脂です。多価不飽和脂肪酸にはn-3系の青魚などの脂とn-6系のリノール酸(日本人はこれに偏っている)があります。



5について・・・牛乳に含まれるアルファラクトアルブミン、ビタミンB12について述べています。

約1000名の70歳以上のシニアに対する追跡研究で、牛乳を飲む習慣のない人は、毎日飲む人の1.5倍の速度で老化に伴う物忘れがすすむことがわかった。



 全体に、これまでの常識的な栄養学の考えではない本です。しかし、とても説得力のある本でした。



トップへ戻る