2013年4月10日

ヒューマン・ニュートリション第10版 脂肪摂取について


現在の栄養学上の最大の論争は「高炭水化物ダイエット」と「低炭水化物ダイエット(高脂肪食)」のせめぎあいといえるでしょう。

言い換えると「脂肪悪玉説」と「炭水化物悪玉説」の争いです。



状況として、これまでは「脂肪悪玉説」が常識でしたが、この10年来「炭水化物悪玉説」が出現し大きな波紋を広げています。

またこの問題が一向に解決されずに患者を惑わせる事態となっています。



ヒューマンニュートリションでは「脂肪悪玉説」の記述がなされています。

(この本は2000年の出版です。)



P812  高脂肪の食事は大腸がんのリスクを高める。

脂肪の全摂取量を摂取エネルギーの33%までに下げ、ω3脂肪酸の摂取をふやすという心血管疾患のリスクを低下させるための勧告は大腸がん発生率の減少にもなると期待される。

成人では脂肪は乳がんに対して直接的な影響をもたないようであるが、低脂肪食はエネルギー含量が低いので肥満の回避に役立つ。

 肉類、とくに赤身肉と加工肉の消費は大腸がん、乳がんおよび前立腺のリスク増加と相関する。したがって、これらの食品の摂取量を増やすべきではない。



補足説明#1 高脂肪食と大腸がんの関連を否定する論文も近年でています。
(米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において)



「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」



補足説明#2 近年「肥満に対する体重減少には炭水化物制限が最も効果がある」と言われている。

2008年のニューイングランド・ジャーナル、イスラエルの研究報告 NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229−241

「低炭水化物食(糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」



補足説明#3 日本人では飽和脂肪酸の摂取量が増えたほうが血管病が減ったという大規模臨床試験の結果があります。

日本における大規模疫学調査(JACC study)




補足説明#4 日本人の赤身肉の消費量はイギリス人よりかなり少ない。






バーンスタイン医師の意見を対論として記載します。(糖尿病の解決より)



覚えておいて欲しいが、インスリンは脂肪生成、脂肪蓄積ホルモンである。 (デザートに食べた)糖の多くは脂肪に変えられ蓄積されるのである。

大衆的なメディアはわれわれにいろいろ信じさせようとするが、脂肪は悪ではない。

血糖値をコントロールしなかった多くの糖尿病患者の高脂質プロフィールは、彼らが食べる脂肪とは何の関係もない。

大部分の糖尿病患者はごく少量の脂肪を摂るー脂肪を怖がるように慣らされているからだ。

高脂質プロフィールはダイエットの過剰な脂肪ではなくて、高血糖のせいである。

事実、大部分の非糖尿病患者において、脂肪摂取は脂質プロフィールとほとんど関係がない。




実際、糖質制限中の方の血清脂質プロフィールは(糖尿病の有無にかかわらず)、例外なく改善しています。


また、「脂肪悪玉説」に基づいて食事介入した久山町では、肥満と糖尿病が増加してしまった事実があります。


さらにアメリカ人の肥満率と脂肪摂取量の関連(下図参照)をみても炭水化物悪玉説が正しいと思います。





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