医療者と社会のずれ

 2006年に妻が産科に入院してから、今日に至るまで、同じ総合病院で、産科、小児科、精神科の医師、臨床心理士の皆様にお世話になっています。
 同じ病院の人たちでも、患者側からみた場合、感覚の差を感じました。大きく感覚の差を感じたのは産科でした。
何となく、患者側に立ち入らないことを風潮とするような感じがしました。
 

 私なりに考えたのですが、精神科の医師の場合、患者との会話なくして治療はつとまりません。また、普段の生活に関することも聞き取り、理解しないとならないため、患者との感覚が近いのかもしれません。
 小児科の場合、患者の両親との信頼関係なくしては医療が成り立たないため、患者両親と多くの対話が不可欠です。そのため、私たちは小児科医師およびスタッフ(NICUで)に大きな感覚の差は持ちませんでした。
 臨床心理の先生は、私たちと全く同じか、それ以上で、先生は本当に病院関係者?と思うくらいで、勇気をいただきました。

 産科の場合、出産を控えた人に深く立ち入ったことを聞かない習慣が慢性化し、患者側が見えにくくなってしまっているのか?そのような感があります。

 これらの診療科が集まった病院組織となると、それぞれの科において、患者とのメンタル的な触れ合いにについて、意見交換されているとはとうてい思えず、それぞれの科が独立した医療機関のようになっているのではないかと感じます。
 従って、病院としては、患者側の要望が、医療訴訟などに発展する可能性が少しでもある限り、リスク回避を大前提とした保守的な対応をとり、患者と向き合えなくなっているのではないかと感じました。
 しかしこのような組織の問題は、どこにでもあることだと思います。個々での前向きな姿勢も組織で打ち消される
 今に始まった問題ではありませんがなかなか改善も進まない問題と思います。

 これは全くの主観的な意見かもしれませんが、総合病院の医師、医療スタッフは、大学などの専門教育課程の後、医療現場で病院と家との往復のみの生活を送らざるを得ない環境なのではないでしょうか?
 そのため、医療関係者以外での人間関係の構築になれていない、一般社会との接点がない人が多いのではないでしょうか?そのため、患者側の感覚に鈍感になっている?この考えは飛躍でしょうか?

 たとえば、町会の役員をされている総合病院の勤務医は実在するのでしょうか?社会との接点を持てない現実があるように思えてなりません。

 私たちは、医療組織が向き合ってくれないことで、子供を亡くしたことの苦しみ以外にも大きな苦しみを体験しました。
 医療機関が、患者側を向かないということは、患者側からすれば大変な凶器です。このことに個々の医療者は気がついても組織としては目をつぶる。これが現実のようです。
 患者もあきらめず、人と人との関係で、これはおかしなことであることを主張し、空気を変えていく必要があります。

 現在、メディエーターという患者と医療者の対立を仲介をする資格者(医師・看護師)の育成が進んでいます。傾向としては好ましい方向です。しかし、ちょっとした人としての基本的な心遣いで、医療現場は変えていけるのではないかと思います。

 今回、私達は、助産師さんとの面談がかない、大きな節目を迎えることができました。

 患者側からの立場で、患者と医療者との対立について、どうしていけばいいか意見を発信できればと考えています。

ホーム