子供を亡くして感じたこと

NICUから娘をつれて家に帰る時に、NICU看護師の副師長さんから「これからご夫婦で大変な困難に向かっていかなければなりませんが・・・」という言葉がありました。そのときは早く娘を連れて家に帰りたいという気持ちしかありませんでしたので聞き流していましたが、数日が経過して意味がわかってきました。娘を亡くして「悲しい」という言葉は適さず、「恐怖」「痛み」「苦しみ」が人生最大で襲ってきました。子供を亡くすということとは、他人はどうなのだろうか?と思っていくつかの本を読んでみました。

「逆縁」・・・・親より先に亡くなってしまう縁(えにし)から。

「断腸の思い」・・武人に子供を奪われた母猿の腸がずたずたに切れていたという中国の故事 から。

今まで聞いたことはあるものの、よく意味を知らないでいました。しかしこれが現実に私達にやってきたのでした。

「断腸の思い」は政治家が軽々しく使う言葉ではないことがわかりました。

若林(2000)の中でアメリカの研究者の調査で、人生における危機的出来事の上位5つのうち、第1位が子供の死であると紹介しています。それだけとんでもない事態であり、「悲しい」のみの表現にはとても収まらないものです。

医療者へのお願い

私達の経験から、子供を亡くした両親に対して、精神的なフォローができる体制を整えて欲しいと痛感しました。
 私達の場合、娘が入院中から臨床心理士の先生を紹介してくださっていたり、退院後は精神科医を紹介してくださいました。

子供を亡くした場合、精神的なダメージが巨大であるいうことをきちんと両親に理解させ、両親ともにカウンセリングを受けさせるくらいのシステムがいいように思えました。自分たちは悲しいだけだと理解していても、本当は精神病といえる領域に入ってしまっていて本人たちが気がついていない場合が多いのではないでしょうか、適切な治療で心の立て直しが早く開始される場合もあると思います。

具体的には、精神科医やカウンセラーへの連絡方法などを両親に手渡し、受診を勧めておいて欲しいと思います。

夫婦での違い

子供を亡くして、夫婦での受け止め方が違ってきます。それぞれ立場の違いや、生活スタイルが異なる中で、心の立て直しを始めなければなりません。お互いに死の危険があるほど辛い状況ですので、会話をなるべく多くしてお互いの心境を理解し合ってください。お互いに気を遣ってそっとしておこうというのは、好ましくないと思いました。今どんな心境なのか?これからどうしていくのか?夫婦で意思の疎通をはかっていくことが大切であると痛感しました。

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