第208回日本小児科学会千葉地方会・千葉県小児科医会例会・第40回合同集会 (2017年9月10日 千葉市文化センター)で発表しました。
「2016/17シーズンでの当院のインフルエンザ小児例における諸検討」
いのまた こどもクリニック 猪股 弘明
その一部から、インフルエンザ・ワクチンの効果など、について報告します。
【対象】2016/17シーズン(2016年12月1日 ~ 2017年4月26日)に当院で経験した、迅速診断検査で陽性のインフルエンザA203例、インフルエンザB39例、迅速検査陰性の208例を対象にしました。
【テーマ】発熱してから迅速診断検査を行うまでの時間について。
【疑問】「熱が出てから12時間以内には検査はしません」等と言う医師が居るようです。私は「熱が出てから6時間以内には、検査をしても陽性にならないことがあります。ウイルスが多いと出ることもありますが。」と言ってますが、どうなのか調べてみました。
【結果】発熱後6時間以内に検査した79例中、検査が陽性になったのは48例(61%)もありました。陰性だった31例には「熱が続くなら再診して再検します」と言いましたが、再診したのは15例でその内検査が陽性になったのは、たった3例(4%)でした。陽性になるのは少し症状が重い子でした。
【結論】熱が出てから時間が経っていないと、検査をしても陽性にならないことが4%ありまが、60%は陽性になります。とくに症状が重い子は陽性になります。
【テーマ】インフルエンザワクチンの効果
【疑問】効果については、色々な事が言われています。医者でも、効果60%とか30%とか、全くなし、とか言ってます。親御さんも「どうせ罹っちゃう」と言う人が多いです。2つの方法で効果を調べました。
【結果1】インフルエンザAに罹った子どもの重症感(親と私が評価して点数にした)を比べてみました。ワクチン接種例は1.22±1.23点(93人)対ワクチン非接種例 1.64±1.10点(74人)で統計学的には有意水準<0.1%と差がありました。
【結論1】ワクチンを打ったこどもはインフルエンザに罹っても圧倒的に症状が軽かった。
【結果2】海外では10年以上前から使われているTest Negative Case Control Design.TNCC)(診断陰性例コントロール試験)という統計方法で、ワクチンによってインフルエンザの罹らない効果を調べました。
2016/17シーズンでは、A型B型合わせて60%のワクチン効果あり。A型だけでは50%でとくに1~5歳で効果が認められました。B型は人数が少なかったので効果ありとは出ませんでした。
学会では発表しませんでしたが、2016/15シーズンは、A型105例、B型139例とB型が多かったせいで、ワクチン効果はA型で40%、B型で38%ありました。とくに0~5歳では、A型で69%、B型で50%ありました。
【結論2】インフルエンザワクチンの発症予防効果は、シーズン・型・年齢によって違いますが、40~70%も効果があります。わかりやすく言いますと、効果60%ということは、ワクチン接種しなかった人の100人中50人がインフルエンザに罹ったとするとワクチンを接種した人は100人中30人しか罹らない、ということです。他のワクチンよりも効果は少ないのですが、効果はあるので、積極的に打って上げましょう。しかし、もっと効果があるワクチンが開発されて欲しいです。