久々に中学のテニス部のメンツと飲み会をした。
現状報告も兼ねての集まりで、
大学4年になって忙しくしている謙也さんたちは明日も用事があるという事であまり飲まなかったけれど、
同じ大学4年のくせに翌日俺とデートの予定しか無かったさんは、
久しぶりの皆との再会に喜んで調子こいてガンガン酒を煽ってた。 元から強い方でも無いのにハイペースで飲んでたもんだから、結局潰れてしまったわけで。 謙也さんやユウジさんに笑われながらさんを家まで送り届けたのが今さっきで、 それでさっさと帰ろうと思っていた俺は今、酔っ払ったさんが腕に絡み付いてきたまま身動き取れずに居た。 (めんどくさ) 「いやーやー光なんで帰ってまうんアホー」 「あんたが酒臭い酔っ払いやからですわ」 「帰ってもどうせ予定ないんやろ、明日一緒なんやから泊まってけばええやん」 「抱かへん自信ない」 「えーやらしい」 けらけら笑うさんのほっぺたを抓ると、「いひゃいおー」と蕩けた声を上げる。 変な顔になった彼女の唇に覆いかぶさるといい感じに熱のこもった甘い声。 (これで無意識、無自覚やから性質悪い) その上どうせ起きたらやったらやったでセックスの中身忘れてるとかだから、腹立つ。 (だから帰りたかったのに) 「水持ってきたるから大人しゅうしとってください」 「帰んない?」 「さあ、どうやろ」 皆と会えて嬉しかったのも、酒が入ってよりふわふわしている気持ちになっているのもわかる。 そのせいで余計甘えたい気分になっているんだろう、 いつもよりしつこく絡んでくるさんに半分くらいにやけながら立ち上がった。 正直、もう帰ろうなんて気持ち9割くらい失ってて、 どちらかと言うとこの鈍感を抱いてやろうかやるまいかそっちの方向に思考がシフトしてた。 「バカ」だの「アホ」だのと吐きながら床でごろごろしてるさんを横目で捕えながら、 冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出してグラスに注ぐ。 一口飲むと、自分が思っているより俺も酒が回っていたのか喉を心地よく通っていった。 (ああ、俺もたいがい酔ってるのか) このままあの人を放置していたらどうなるんだろうと、グラスを持ったまま部屋に帰らずにいると、 最初こそ「ひかるー」「ひかるー」と俺の名前を呼んでいたけれどしばらくして静かになる。 寝てしまったのだろうかと思うと今度は嗚咽。 (うわ、)と思って部屋に戻るとさんが膝を抱えて泣いていた。 「何で泣くねん」 「う、やって、昔みたいに、ッ、わいわい出来て楽しかったんやもん、ひとりになったら余計寂しく、てっ」 「わからんでも無いですけど」 やっぱり中学で部活やってた頃が一番楽しくて、 最高の先輩たちやったと思うし、今でも一番居心地のいい場所だと思う。 久しぶりにその心地よさを感じて、 その後の余韻のせいで一人で居る事が寂しいという気持ちは、何となくわかる (さんは先輩らと同じ学年で、俺よりもそれを感じてるはずやし)。 わかるからこそ、何となくむかついた。 「俺より先輩らと居った方が楽しいっちゅう事ですかそれ」 「えーなんでそうなるん」 「いつも俺が帰る言うてもそんなにぐずぐずせんやろ、さん」 甘えたい気持ちの根底に、皆がいなくなった喪失感を埋めようとしてる気持ちがあるなんて許せない (さっきまでにやにやしとった俺がアホみたいやんか)。 大きな目をくりっとさせて俺を見てきたさんが、あまりにポカーンて顔をしてたので不覚にも笑いを堪えられなかった。 自分からシリアスに持っていったくせしてこれだ。 (あーあ)(アホらし) 「光なんでいま笑ったん」 「さんが不細工やったから」 「ひどい」 (あんたには何言うたって無駄やな) (所詮俺があんたを好きなんは変えられへん事実なわけや) 要は、俺がこの人を捕まえとけばいいだけの話。 「結婚します?」 「えーいきなり何ー?」 「一緒に住んで四六時中一緒に居ったら流石に寂しいとか言われへんやろ。ていうか言うたら殴る」 「暴力いややー」 「まあ、どうせ寝て起きたらあんたは忘れてるでしょうけど、俺結構本気やから」 さんの左手を恋人繋ぎですくい取って指のサイズを自分の指で測るように動かす。 その行動の意味なんてカケラもわかっていないだろうさんはやはりぽかんとしていて、 まあこの人はそういうところが可愛えんやろうなとキスをした。 |