日曜日、ユウくんとお笑いグッズ探しに行く事になった。 待ち合わせの公園に行って、ネタを考えながらぶらんこに腰掛けてギイギイと小さくこいでいたら 「あー、小春くんやあ何してんの〜」という声が聞こえた。
顔を上げるまでもなく誰かはわかったが、一応確認するために見上げるとやはりクラスメイトのちゃんだった。

「ユウくん待ちよ〜今日はデートなの」
「へえ、女の子を待たすなんて最低やなあユウジくん」
「そうね。男は黙って前日から待っとったらええのよね」
「ちょお、それは重いわ」

笑いながらちゃんは隣のブランコに腰掛けた。

ちゃんは?」
「私はコンビニ。家でごろごろしてたらどうしてもプリン食べたくなってね」
「買いに行く程食べたかってんか」
「どうせ暇やったし」
「旬の女の子が休日にごろごろ暇を持て余すなんて不健全やわあ」
「健全の間違いやろ〜」
「青春の仕方間違っとるから不健全であってるわ」
「そう?」
「おい」

ふと、ドスの効いた低い声が背後から聞こえてきた。
(これも、振り向くまでもなく誰かはわかったが、念のために振り返るとやはりユウくんだった)
あからさまに不機嫌な顔をしてちゃんを睨んでいる。 が、彼女はさしてその不遜な態度も気にせずに「おお、おはよう」なんてユウくんに向かって挨拶した。
毎度の事だがこの態度を崩さないユウくんも凄いと思う。
(あんた、嫉妬の方向がおかしいねん)

「何でお前が小春と仲良うブランコこいでん」
「たまたま会うただけやで〜かいらしい子が一人でブランコこいどったからヘイ彼女〜て言うて」

(そんであんたも、煽る方向が間違ってんねん)
ユウくんはさっきから一度もこっちを見ない。じっとちゃんを睨みつけて、 ふと彼女の正面に回りこんだと思ったら前からブランコに乗り込んだ。
鎖がじゃらじゃらと悲鳴を上げて、彼女も「うわあ」と悲鳴を上げた。
小学校低学年とかがやっていたら、ほほえましい光景なんじゃないだろうか。 ブランコに座る女の子を両足ではさんで立ち乗りする男の子。
いや、無いな。逆ならまだアリやったかもしれんけど。

「ユウくん何してんねん」
「俺かて小春とブランコ楽しみたいわ」
「乗りたいんなら小春くんのとこ行けばええやんか」
「アホ、華奢な小春にこんなことできるかい」
「私ならええんかい!」
「ほら、はよこげや」
「どういう状況やねん、これ!小春くんたすけて、この人変態や!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人の顔は、こっちが見ていて恥ずかしくなるくらい真っ赤で。
何でこの二人これでくっつかへんのやろかとため息をつく (ていうかユウくんも、そないなるなら最初からやるなや)。
基本的なところではユウくんは凄く器用なのに、本気になってしまうとえらく不器用。

「はあ、やってられんわあ。ユウくんアタシ今日用事あったん思い出したわ」
「何!?浮気か!!誰とじゃ!!!」
「ひゃーーー、ちょっとユウジくん、ガタガタさせんといて!怖い!!」
ちゃんはおいしいプリンが食べたいらしいで。ほなな」
「ちょっ、小春ぅーーーー!待っ、」
「痛い、痛い、ユウジくん、シャツのボタンに髪の毛ひっかかっとる!」

ブランコから飛び降りて追いかけてこようとするユウくんに、 「おらぁ一氏、女の子ほっぽって追っかけてきよったら承知せんど!」 と怒鳴り散らしてやろうと思っていたのだけれど、 空気を読んだちゃんの髪の毛が丁度ユウくんのボタンに引っかかってくれてよかったわ。
(お互い、素直やないのは心だけみたいやなあ)

公園から帰ったフリをしてそうっと草木の陰から二人の様子を伺うと、 ガッチガチに固まった二人の姿がそこにあった。 ヘタに動けないユウくんと、怖くて手が離せないために引っかかった髪の毛をいじれないちゃん。
(恋愛初心者か!)とそのむずむず具合に盛大な突っ込みをいれてやりたい(いや、実際そうだろうけど)。

「あー、アホらしい」

見ているこっちの頭がおかしくなってしまいそうだとその場を去った。
(でもきっとこの後二人はどこかにプリンを食べに行くのだろうと思う)


頼りにならんねんお前
(しっかりせえ!一氏!)


無理やり二人乗りするユウジが書きたかった!
小春視点だとユウジはとてももどかしい。
ピンの話にしようと思ったんですけど一緒に行ったろか〜の3人を意識して書いた話でした。