「なあ、そろそろ俺グレるで」
「んー、やってこの本明日返却日やもん」
「また借りればええやろが」
「今いいとこやねんか」

せっかく日曜に人の部屋で自宅デートしてるっちゅうに、 恋人ときたら自分より本に夢中になっている。 (久々やから思いっきりイチャついたろう)そう思っていたのに あろう事かぶっとい本を鞄から出して読み始める事1時間。
最初のうちはまあのんびりすんのもええかなと、自分も雑誌を読みながら 何気ない会話をしていたのだけれど。 会話よりも本の中身に夢中になっていったは、 段々返事が適当になっていってそれが俺を苛立たせた。

無理やり取り上げてもええけど、多分めっちゃ怒るし拗ねるし 帰るとか言い出し兼ねんからそれは却下。
どうにかしてうまいことこっちに気を向けさせられんか考えた結果、 俺はある事を思いついた。

「なあ、しようや」
「んんーあとで、」

(いつもなら真っ赤になるとこやのに、やっぱこいつ会話の中身聞いてへん)

「後でならええんやな。わかったわ。俺今のセリフしっかり覚えたで」
「んー」

「なにー」
「ァ、ゆー、じ、もっと、ん」
「っ!!!」

耳元で囁くように声マネをすると、流石にこれには反応せざるを得なかったのか バチンという凄い音をたてては本を閉じて後ずさった。 置いてけぼりになった本をすっと取り上げた俺は、ニヤリと笑って部屋の隅のを見やった。

「ちょっと、何なん変な声出さんとって」
「変な声て、自分の声やんか」
「ユウジ、きもい!めっちゃきもい、ばか!」
「真っ赤な顔で言っても怖ないで」
「こっちくんな!」
「ぎゅ、てして、ッふ」
「あああああ」

は顔を真っ赤にして自分の耳を塞ぎ、さらに自分の声を反響させて 俺の声をきかんようにと必死になっていた。
(ああ、これやあ。今日こういう姿見たかってんな)
の両手を掴んで耳から剥がして、また耳元で声マネをしてやった。 正直、自分がこんなんやられたら相手を張り倒したいくらいきもいと思うけど、 俺がにやるんは全然アリや。
こいつ反応ほんまかわええもん。

「ちょお、ほんま止めて!変態!ユウジきもい、ほんまきもい!」
「お前が悪い。俺の事ほったらかしにしたからや」
「せやかて、こんなんえげつない。ていうか、私そんなんちゃうもん、」
「へえ。俺の声マネにケチつけんのか。ならほんまもん聞いて確かめてみるわ」
「いややー!何でそうなるん、」
「さっき後でならしてもええ言うとったの自分やで」
「言うてない!」
「どっちが嘘ついてるか勝負やな」
「やから、せえへん、てっ、」

ふんばって突っぱねてくるをずるずるとベットまで引き摺りこんで、 唇に自分のそれを啄ばむように重ねてやった。
(ほら、もう『もっと』って顔しとる)



ほんなら勝負してみーひん?