「なあ、前から思っとったんやけど」 「うん〜?」 トイレから帰ってくると、俺のベットですっかり寝る体勢に入っていたがうっすらと目を開けて俺の声にそらで返事をした。 一応床に別に敷いておいた客用の敷布団を踏ん付けてベットに腰掛ける。 「自分、何で俺の部屋で寝る時の向きいっつもこうなん?」 「あ〜そういえばそうかなあ」 「俺的に、逆向きが望ましいんやけど」 そういってのそのそと自分は壁際に移動して横になり、こてんと無抵抗のを自分に向かって転がした。 重たそうな瞼をゆっくりと開いたその目が俺を捕らえて幸せそうに笑う。 が、しばらくしてやはりころんとそっぽを向いた。 「やっぱり無理、なんか落ち着かない」 「何でやねん」 最近になってこの違和感を感じるようになったのだけれど、 なぜか俺の部屋で一緒に寝ようとするとはいつも俺に背中を向けている。 後ろから抱きしめるのもいいけれど、たまに凄く向き合って眠りたいなと思う時もあるわけで。 その違和感に今まで気付かなかったのは、の部屋に泊まりに行く時はこういった事が無いからだ。 「私、たぶん壁の方向いて眠れない人なのかも」 「壁…ああ…んー?でも自分の部屋では壁向いて寝とるやろ」 「……あれー、そうかも?」 「なんでだろう」と言いながら、少し目が覚めたのか(それとも自分でも気になりだしたのか) 自分のしっくりする体勢を探すようにこてん、こてんとは寝返りを打った。 俺はその様子を見ながら、そういえば自分だっていつも壁に背を向けて寝ている事に気付く。 (なんだ、と同じじゃないか) そう思ったら、がどうもしっくりこないと言うその感じがわかってしまって、 それでも模索している彼女がむしょうに愛おしくなって笑いながらその背中を抱き寄せた。 「すまん、もうええわ」 「ええ、でも私はなんか引っかかる」 「確かになあ。俺の部屋やからアカンのかな?」 「あー、そうかな?」 「ちょお、それ若干ショックやで」 「でもほら、自分の部屋じゃないところって何か、いつでも逃げられるように広い方向いて寝たいっていう心理?」 「なるほどなあ…て、でも俺はの部屋から逃げ出したいとか思わへんで。 むしろ住み着いて部屋中ののにおい吸い込んでやりたいわ」 ぐっと抱きしめて首筋に顔を埋め、思い切り彼女のにおいを吸い込むとはじたばたと手足を動かしながら 「変態ぽい」と笑った。 「ていうか、白石くんはいつも壁に背の人だったんだね」 「そうやな。無意識やったけど」 「何か、不思議だねえこういうの。脳なのかな?体なのかな?しっくりポジション探ってるの」 「ん〜不思議やなあ。せやけどあれやな。俺の当面の目標が定まった」 「えっ、今の話の流れで何が決まったの?」 会話をしている時は向き合っていたいのか、完全に目が覚めてしまったが俺の腕の拘束から抜け出してこちらに向かって体を横たえた。 わくわくと目を輝かせて、俺に興味を持ってくれる彼女に心がくすぐったくなる。 片手で彼女の髪を梳きながら、「俺の部屋も自分の部屋やって思ってもらえるくらい一緒におる事」 と微笑むと「それは私の心臓がもたないかも」とは悪戯に笑った。 |