嫌な女だと思う、自覚はちゃんとある。 無いのは、自信だ。 「一緒に帰ろな」って言ってくれた白石くんを待ってて、そろそろ外に出てようかなと昇降口に向かうと、偶然ある現場に遭遇した。 二人組みの女の子が、私の目的地周辺(3年2組のロッカー周辺だ)でこそこそしている。 (ああ、) 何となく、検討がついて私はそのロッカーの反対側に回ってその二人組みが去っていくのを待っていた。 ひそひそと聞こえてくる声は甘く小さな期待と不安に満ちている。 それはまるでかつての自分のようで(私は少し苛ついた)。 人気の無くなったのを確認して、先ほどまで女の子たちがざわめいていたロッカーの前に立つ。 少しのためらいもなく、目指すロッカーはたった一つ。 【白石】と書かれたマグネットが貼り付けてあるそこを開ける。 やはり、彼の登下校用の靴の上にそっと置かれていたのはラブレターだった。 掌にのせてみると、十数グラムほどしかない。 どれほど想いを加えたものだって、重さ的にはそれほどしか感じられない。 (あーあ、可哀想) 私なんかに、見つからなければこんなちっぽけで安っぽい重さでも彼に届いたかもしれないのに。 私は一人嘲笑って、その手紙を半分に引き裂いた。 「」 透き通るその声は私の大好きな彼の声で、いつからそこに居たのか彼の顔には微笑みすら湛えられていた。 「何しとん」 「なんでも、ロッカーの整理」 「ふうん」 白石くんは私の手の中で真っ二つになった無残な塊をすっと横取りして、 「もっと徹底的にやらんと、アカンで」と言ってそれを縦にもう一回引き裂いて、 重ねてもう一回、またもう一回とビリビリにして。 それからにこりと笑って、「」と私の名前を呼んだ。 「ほんま、かいらしな」 バラバラとその手で散り散りになったただの紙切れを、私は白石くんから受け取った。 (私が彼宛のラブレターを破ったりしなくても) (彼がその現場に遭遇していなかったとしても) きっと白石くんはこうする。 きっと、そうする。 (私を、嫌な女の子にさせないために、きっとそうする) ぎゅう、と抱きしめられたその腕の中で私は涙を堪えていた。 これ以上、かわいくない女の子にはなりたくなかった。 |