蔵ノ介くんと一緒にいる時は、何でか肌を露出してる時間の方が多い気がする。 遊ばれてんのやろうか、身体目当てなんやろうかとたまに思う。 目が覚めると、蔵ノ介くんが隣に居なかった。素っ裸の私は一人で布団を被っていた。 昔はこんなんじゃなかった気がする、目が覚めて一番に目に入るのは彼の笑った顔だった気がする。 布団でずりずりと上半身を隠しながら体を起こし、(なんでこうなったんだっけ) とぼんやり考えると上半身に何も着てない蔵ノ介くんが部屋に帰ってきて、 じっと見てたら「ん〜、なに?」と甘えるようにベットに上がってきた。 啄ばむようなキスをされる、段々押し倒される格好になって、私は彼の肩をぐいっと押し返す。 「どないしてん、機嫌悪いな」と蔵ノ介くんは私の髪を梳いた。 「ねえ、今日私が着てた服、どんなか覚えとる?」 突然の質問に蔵ノ介くんは一瞬固まって、それから少し首を捻って床に散らばってた私の服を見つけた。 「ワンピース」 「カンニングや」 「ええ、不可抗力や。見んでもわかっとったし」 「なら、おとといは?」 一昨日も、夜に連絡が来て私はこっそり家を抜け出してここに来た。 蔵ノ介くんはまた少し首を捻って、「オレンジのTシャツと短パンやった」と言った。 (あってる) 「ついでに下着はピンクのレースやった」 「ええ、余計なとこまで覚えてなくてええわ」 (それもあってた) 何だか急にそんな事を質問した自分が恥ずかしくなって布団にもぐる。 布団の上から「〜、〜」と蔵ノ介くんが甘い声で私を呼ぶ。 「なあ、最近のお気に入りのシャーペンはごろっとした苺のチャームがついとるヤツで、 学校の自販機で最近よく飲むんはミルクティー、 授業中ぼーっとしながらよくやっとる事は左手で髪の毛をいじる事。 そやなあ、あと最近不安になっとるやろ。なんや最近会うてもエッチばっかりや… もしかして蔵ノ介ってば私の身体目当てなんやろうか! そんなん嫌や、私は蔵ノ介の心が欲しい!愛しとんねん!」 「ちょっと!」 「あはは、顔真っ赤や」 ガバッと布団から顔を出すと蔵ノ介くんは私を指差して笑った。 (ぜんぶ、あってる) あいすぎて若干気持ち悪い(とは言わないけど)。 いや、やっぱ言う。 「なんや、気持ち悪い!蔵ノ介くん気持ち悪い!」 「ちょお、二度も言わんとってよ傷つくわあ」 「いや、何や、ようわからんけど何そのデータ、どういう事」 「どういうも何も、好きやから四六時中見てるだけやんか。は俺の事見てくれてへんの?」 「………格好ええからあんまり見れへん」 「ええー、もっと見てや。俺見られると興奮するわ」 「やっぱり気持ち悪い!」 頬を両手で引っ張って、変な顔にさせると蔵ノ介くんも私の頬に手を伸ばした。 ただ、そっと触れてやさしく撫でただけだったけど。 「すまん、不安がってんのわかっとったんやけどな」 「蔵ノ介くんが気持ち悪いくらい見てくれてるのわかったからもうええわ」 「うん、そう。いっつも見てて、いっつも一緒に居る気分になってもうてて、 やから会うともっとディープにくっつきたいなあて思ってまうねん」 「なんだかなあ」 「ところでそういうチャンは、俺の今日の上に着てた服を覚えてくれとんのかなあ!」 わざとらしいその声に私はぎくりとした。 正直、あんまり覚えてない(だから、格好いいからあんまり見れないの!)。 ベットの下に多分散乱してるだろうと思ってそっちに視線を送ると大きな手に視界を遮られた。 「カンニングはアカンで」 「み、見んでもわかるもん」 「ほな、はよ当ててや」 「………蔵ノ介くんは、何着ても似合うからええわ」 「うわあ、苦しいなあ。でもええわ。そういう事やろ?」 「うん、ごめん」 「わかればよし」 ドサッと蔵ノ介くんが覆いかぶさってきて、重力にしたがってベットに倒れこんだ。 何がおかしいのかキスをしながら蔵ノ介くんはくすくす笑った。私もつられてクスクス笑った。 まあ、こういうのも悪くない。 あ、悪くないし愛されてるんやと思ったら、 蔵ノ介くんがベットの上でいっぱいいっぱい『愛しとる』って名前呼んでくれたん思い出した。 (げんきんやなあ) 多分そのうち、今日着ていた彼の服も思い出すだろう。 (次々に思い出す) |