「何聞いてるん?」
「んん?ごめん、何かいった?」

覗き込むように話かけてきた部屋主の白石くんは、私の言葉に不機嫌そうな顔をした。
そういう顔をしたいのは私なんだけど、と思ったが口には出さなかった。 白石くんは私が部屋に来た後も、「もうちょっとで終わるから待っとって」とか何とかって 机に向かって論文のようなものを書き続けた。 邪魔するのもどうかと思って適当にベットに仰向けになって、 財前くんがCDに焼いてくれた曲をiPodにいれたまま聞いていなかった事を思い出して それを聞いていた。
結構大きな音で聞いていた私は白石くんの言葉を聞き逃してしまったのだ。

「せやから、何聞いとんのかなって」

白石くんがベットに腰掛けると、ギシ、とスプリングがないた。
その音をきいた私は、思わず 起き上がってイヤホンを外した(このまま寝そべってると、ろくな事にならない気がする)。

「ああ、財前くんのね、おすすめの曲。こないだねー、部室で財前くんが きいてるのちらっと聞かせてもらったらすっごく良かったの。そしたら焼いてくれて」
「へえ。財前が聞くん洋楽やろ?、わからんのとちゃう?」
「うわあ、失礼な!っていってもまあ、 英語はよくわかんないんだけど。でも逆に何も考えずに聞けるから気持ちいいよ」
「ふうん」
「白石くんも聞く?」

片方貸したげるよ、とイヤホンを片方差し出すと白石くんはそれを突っぱねて、 伸ばしたままだった私の足に向かってごろんと横になった。

「聞かん。のばか」
「ええー、なんでー、っていうか、くすぐったいよ」

短パンからのぞく足に、白石くんのさらさらの髪の毛が触れてむずむずする。 前にもこういう事があって、その時自分がくすぐったがりだと知った。

「ふん、なんか財前クンおすすめの、財前クンが大好きな洋楽でも聞いてればええんや」
「何それ、拗ねてるの?」
「知らん」
「っふは、」
「何笑ってんねん」
「だから、くすぐったいんだってば、ふふ」

足をもぞもぞさせながら、白石くんの頭を持ち上げようとしたら 白石くんが太ももに指を這わせてきた。
思わずびくっと身体が強張って、反応してしまったことに恥ずかしくなる。

「どないしてん、
「どうもしてないよ!だからくすぐったいんだってば、」
「なあ、くすぐったがりやって感じやすいらしいで」

ついにベットに全身を乗り上げた白石くんは、むくりと起き上がって私をゆっくり押し倒した。
それから私が握り締めていたiPodを取り上げてベットサイドに置いて、笑った。

「何か白石くん今日おかしい。脈略ないし、子供っぽい」
「別に。はこんな俺は嫌?」
「んーん。ちょっとかわいい」
はもっとかわええ」
「真顔で言わないでよ」
「ほんまの事やもん」
「それより、聞く?」

頭のわきに落ちていたイヤホンを拾い上げて白石くんに差し出すと、 やっぱり露骨に綺麗な顔を歪ませて、「の声が聞きたいのや」と また太ももに指を這わせた。


もうええやろ、そんな事